【小説】『地球外少年少女』を読みました。本格的な冒険ジュブナイルSF

2022年10月24日






 今年の一月ごろに期間限定で劇場公開されたアニメ映画『地球外少年少女』。ネット配信ではNetflix独占配信されています。


 が、実は恥ずかしながら作品の存在を知ったのは夏ごろ。当然劇場公開期間は過ぎており、Netflixも会員登録していないので見れない。いやホント、惜しい作品を逃がしたと落胆しました……。


 とはいえ映画ノベライズが出ているとのことで、とりあえずノベライズだけでも読んでおくことに。……なんかここ一年か二年くらい、タイミングを逃した劇場公開作品をノベライズだけ読むのがパターン化しているような気がします。前にも似たような感じでノベライズだけ読んだかも。









  書籍情報



  著者:カミツキレイニー

  原著:磯 光雄


 『地球外少年少女: ~地球外からの使者~ (前編)』

 『地球外少年少女: ~はじまりの物語~ (後編) 』


  小学館 ガガガ文庫より出版


  刊行日:2022/7/20


  あらすじ(Amazonより転載)

『電脳コイル」』から15年。当時誰もが想像しえなかった「ARがある暮らし」を予見した、監督・磯光雄。彼が次に見通すビジョンはーー「AIがある宇宙での暮らし」だった。舞台は、インターネットも、コンビニもある「2045年の宇宙」。日本の商業ステーション「あんしん」で、少年少女たちは大きな災害に見舞われる。大人とはぐれ、ネットや酸素供給が途絶した「あんしん」から、自力での脱出を目指す子供たち。ときに仲間の、ときにAIの力を借り、生きるための行動を採る彼らは、史上最高知能AIが語った恐るべき予言の「真意」にたどり着く。絶体絶命の状況下で、子どもたちは何に触れ、何に悩み、何を選択するのかーー。『電脳コイル』の磯光雄監督、15年ぶりのオリジナルアニメ『地球外少年少女』を、『魔女と猟犬』のカミツキレイニーが、前後編構成で完全ノベライズ!









 名作と名高い『電脳コイル』の監督の最新作。舞台は衛星軌道上の宇宙ステーションで、高度AIの暮らしが当たり前になっている時代設定の作品。宇宙ステーションに彗星衝突による事故で少年少女たちがてんやわんやする話といった感じですかね。


 メインの登場人物たちの年齢が十四歳となっており、普通のジュブナイルものとしては設定年齢が低めでもあるかと。そのためか、まあいい具合に中二病を拗らせたクソガキどもでして、読んでいて「コイツ腹立つなー」とか「この子痛々しいぞ……」といった感想を抱きました。まあ等身大の少年少女っぽさがあって作品としてはいいのですが、おそらくこんな感じの子供がリアルにいたらぶん殴りたくなるくらいのクソガキ感でしたね。フィクションでよかった。


 そんな等身大のジュブナイルとして、各々の動機なども実に子供らしさがあり、前編において彗星衝突によって機能停止した宇宙ステーション内での避難行動とかも、ある種の冒険小説として読み解くことができるかと。実際の内容としては宇宙ステーションでの避難なのですけど、印象としては廃墟探索とか秘密基地作りみたいな、そんな子供の冒険を感じられる描写となっている。まあ彼ら彼女らからしたら切羽詰まった状況なのですけど、読み手としてはまさに冒険作品みたいなドキドキワクワク感が感じられたといったところでしょうか。




 そんな前編を経て続く後編では、黒幕の正体が明らかになったり、宇宙ステーションが最期を迎えたりと、クライマックスとして大いに盛り上がる展開となっている。


 とくに後編では、前編でも感じられたジュブナイル感を維持しつつも、SF作品としてより深くテーマ性を掘り下げていっており、ジュブナイル作品といいつつも本格的なSF作品としての読み応えが抜群になっているところとかは、いちSFファンとして純粋に楽しめましたね。宇宙が舞台だからSFというだけではなく、AIの在り方から子供たちの成長など、まさにジュブナイルSFと呼ぶにふさわしい作品でした。



 まあ劇場アニメのノベライズということもあって、全体の構成とかもそうですし、各シーンの演出の仕方とかもどちらかというと映像向きであるので、文字媒体である小説には微妙に合わないシーンとかありましたけどね。読みながら「映像映えするだろうなー」と思いました。もちろんノベライズもいいのですけど、できれば本来の劇場アニメ作品として見たかったですね。






 そうそう、個人的に気になった点として、この作品、黒幕の描き方が雑では?


 なんといいますか、まさに絵に描いたような悪役といえばいいのですかね? それこそ子供向けテレビアニメとかの悪役みたいな感じ。黒幕のバックボーンが薄っぺらく言動のすべてが稚拙でして、悪役らしい惹きつけられるカリスマ性が皆無なので、正直黒幕との対峙シーンは読んでいて萎えた。ジュブナイルものとしてもSFとしても素晴らしい作品ですけど、エンタメ作品としての物語はなんだかなーって感じ。ラストは盛り上がって結末もいい落としどころなだけあって、ホント黒幕のシーンだけもっと読み応えあれば傑作になったのですけどね。この部分だけ個人的に残念だなと感じました。







 そんな感じで、ノベライズ版の『地球外少年少女』の感想でした。




 いやーアニメ見たいけど、Netflix独占だしな……。普通にアマプラとかでも配信してくれたら迷わずアニメ見るのですけどね。でも見たいな……。Netflix、ちょっと検討してみますか……。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る