【小説】『リベンジャーズ・ハイ』を読みました。もはや見応えと言ってもいいくらいのSFアクション

2021年11月8日






 SFアクションものが読みたくなって、アクションものならライトノベル系で探した方がいいのかなー、と思っていろいろと物色した結果見つけた作品。タイトルは『リベンジャーズ・ハイ』。


 ガガガ文庫新人賞受賞作で、以前ここで記事にしたことがある『夏へのトンネル、さよならの出口』や『千歳くんはラムネ瓶のなか』と同じ第13回小学館ライトノベル大賞の受賞作。……もしかしたら第13回は粒揃いの当たり回なのかもしれない?








  書籍情報



  著者:呂暇 郁夫


 『リベンジャーズ・ハイ』


  小学館 ガガガ文庫より出版


  刊行日:2019/6/18



  あらすじ(Amazonより転載)

 人体に有害な『砂塵』によって、文明が一度滅びた近未来。異能を操る『砂塵能力者』たちが出現し、力を持っていた。“掃除屋”チューミーは、因縁の復讐相手・スマイリーの行方を探りながら、殺しを請け負っている。あるとき、治安維持組織の『粛清官』に身柄を拘束されてしまったチューミー。だが、意外な提案を受け、一時的に協力関係を結ぶ。バディとしてあてがわれたのは、「優秀だがワケあり」のシルヴィ。出自も性格も正反対の二人は、反発しつつスマイリーを追うが…。第13回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。








 まず世界観がよかったですね。一見するとサイバーパンク的でもあるのですけど(イラストを見ると思いっきりサイバーパンク)、でも設定面で読み解くと別にこれといってサイバーしているわけでもない。むしろ一回文明滅んでいるところをみるとポストアポカリプス的とも言えるが、しかしながら復興後を舞台にしているので純粋にポストアポカリプス(終末世界)というわけでもなさそう。雰囲気はまさにサイバーパンクらしさがある感じ。また作中の技術は既存の科学とは系統が外れているため、素直な科学近未来というわけでもないが、でもSFであることには間違いない。


 ……という感じで、一概に「この作品はこれだ!」というような明確なSFジャンル分けが難しい設定の作品ですが、あえてジャンル分けするのであれば超能力SFということになるのかしら? 


 超能力SFとしてみると、砂塵を使った能力はビジュアル的にも派手で、とくに作中で描かれているアクションシーンとの相性も抜群であり、もはや見応えと言っていいほどに読み応えのある作品だと感じましたね。



 それらをひっくるめて、「近未来都市エモい」という感覚を読みながら思いましたね。個性あるSF感はまさにラノベSFらしさがあって素晴らしいと思います。







 まあ設定上、「人体に有害な『砂塵』」という設定のためその防塵としてフルフェイスマスクが出てくるのですが、そうなると登場人物のほぼ全員がフルフェイスマスクを被っていることになるのですけどね。別にモブキャラや野郎キャラならいいのですけど、でもライトノベル的にみるとせっかくの美少女キャラの顔が隠れてしまって絵的にもったいないなーと思わなくもなかった。


 とはいえ、このフルフェイスマスクも個性的なバリエーションがあって、さながらある種の仮面舞踏会的な奇抜さもあるので、それはそれで楽しかったですけどね。そういったビジュアル的なインパクトもある感じ。それにヒロインも全く素顔を出さないわけではないしね(全体でみると素顔を出しているシーンは少な目ですが)。


 さらにいえば、こういった人物の素性がはっきりしない要素もしっかり活かしていて、とくにラスボスをはじめとする戦闘シーンにおいての敵キャラの素性が隠されていることにより、対峙している相手の不気味さがより演出されることに繋がっているという具合。


 加えて主人公の正体についてもこの素性のギミックが使われていて、まあ主人公の正体については序盤でもうある程度の察しがついてしまい、結局その通りの正体ではあるのですが、しかしながらその中にも意外性があるといったところ。「おー! そうきたか」みたいな感じで作中の設定を活用したひと捻りがあって面白かったですね。



 この砂塵設定からのフルフェイスマスクの設定は面白い見せ方だと思いましたね。







 話においても復讐劇であることはそうなのですが、このストーリーラインが起伏のある構成になっていまして、物語的にも読み応えがある。また前述のアクションシーンであったり設定面での世界観であったりする部分もプラスされ、全体的にみても勢いのある力強い作品であったというのが、読み終わって感じたストレートな感想でした。







 という感じでSFアクションラノベ『リベンジャーズ・ハイ』を読んだわけですが、この作品以外でも同じ回の『夏へのトンネル、さよならの出口』や『千歳くんはラムネ瓶のなか』も輩出した第13回の小学館ライトノベル大賞はやっぱり当たりの年だったのではないかと個人的に改めて思いましたね。まあ自分が青春とSFが好きということもあって好みのストライクゾーンに合致する受賞作が多かったということだけかもしれませんけどね。




 そんなこんなで、『リベンジャーズ・ハイ』の感想。







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