【アニメ】『宝石の国』を紹介。CGアニメにおいての一つの成功例だと思っている

2020年9月12日






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 ニコニコ動画 プレミアム限定動画

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 対象作品には『ダンベル何キロ持てる?』や『ガヴリールドロップアウト』、さらには『みるタイツ』など、割と肩の力を抜いて気楽に楽しめる作品がラインナップされていますが、この対象作品の中で注目したいのが『宝石の国』です。……一つだけ真面目に視聴しなければいけないタイプのアニメ作品です。



 ということで今回はせっかくの機会ですので、2017年の秋アニメとして放送されたテレビアニメ『宝石の国』について。



 ちなみにですが、ニコニコ動画のプレミアム限定動画は今月末、9/30まで視聴できます。











『宝石の国』


・アニメ公式ページ

 http://land-of-the-lustrous.com/


・あらすじ(公式ページ イントロダクションより転載)


これは、成長の物語

宝石たちの中で最年少のフォスフォフィライトは、硬度三半とひときわ脆く、靭性も弱くて戦闘に向かない。また、他の仕事の適性もない。そのくせ口だけは一丁前という、まさに正真正銘の落ちこぼれだった。そんなフォスに、三百歳を目前にしてやっと初めての仕事が与えられる。それは、博物誌編纂という仕事。地味な仕事に不満なフォスだったが、彼はその目で世界を見、様々なことを経験する中で、しだいに大きなうねりに飲み込まれてゆく。そしてついに、彼は望まぬかたちで、欲しかった“強さ”を手にするのだが──。

これは、友情の物語

フォス以上の特異体質をもつのが、シンシャ。ただそこにいるだけで体から毒液を撒き散らしてしまうシンシャは、周りに迷惑を掛けまいと、独り夜に引きこもり心を閉ざしていた。ある日、月人に攫われそうになったところをシンシャに助けられたフォスは、「次は自分が君を救ってみせる」と約束する。博物誌の編纂に奔走しながら、シンシャが明るい世界に出てこられるよう、彼向けの仕事を探そうとするフォス。果たしてフォスの想いはシンシャに届くのか? そして、二人の約束が果たされる日は来るのか──?

これは、戦いの物語

月から飛来する謎の敵“月人”。彼らは宝石たちを装飾品にしようと、特に美しい宝石を好み、一人また一人と宝石を攫っていくが、その正体は不明。しかも攫われた宝石は加工されて武器となり、宝石たちを苦しめる。さらに月人はどんどん改良され、強力になってゆく。次々と現れる月人に、二十八体の宝石たちは勝利することができるのか? 彼らの真の目的とは何なのか? この終わりのない戦いに、終止符は打たれるのか?




・ニコニコチャンネル

 https://ch.nicovideo.jp/land-of-the-lustrous



・ニコニコ動画 宝石の国 第1話「フォスフォフィライト」

 https://www.nicovideo.jp/watch/1507261222









『宝石の国』は月刊アフタヌーン(講談社)で連載中の漫画作品。



 この作品を簡単に、一言で言い表すと、「宝石の擬人化」となり、実在する宝石をモチーフにしたキャラクターが登場します。このあたりの設定も興味深く、実際の宝石の特徴をうまいこと捉えていて、とくに硬度と靭性の関係がそのまま宝石たちの戦闘能力に反映されているのが面白いところ。


 硬度はすなわち鉱物のモース硬度のことであり、このモース硬度は鉱物の傷のつきにくさを表しているもので、二つの鉱物をこすり合わせたときにモース硬度が低い方が傷つきます。逆に捉えるとモース硬度が高ければ高いほど相手を傷つける性質でもあり、『宝石の国』の作中でもダイヤモンドなどの硬度が高いキャラクターほど戦闘向きの設定になっています。


 一見硬度と言うと防御力を連想しますが、むしろ防御力の設定は靭性の方が適応されている具合。靭性とはすなわち割れやすさです(英語で「Toughnessタフネス」)。現実でもダイヤモンドはもっとも硬い鉱物として知られ確かにモース硬度は最高なのですが、実際の靭性は水晶程度であり衝撃で簡単に割れてしまいます。作中のキャラクターである「ダイヤモンド」も、高い攻撃力(硬度)を活かしたアクションシーンがいくつかありますが、しかし毎回砕けてボロボロになっています。


 そのほかキャラクターの性格などに宝石言葉を意識されているそうで、たとえば主人公のフォスフォフィライトの宝石言葉で調べてみると「逆境」や「可能性」といったものが出てきまして、思わずなるほどと納得してしまったほど。


 これらの、実物としての宝石と『宝石の国』に登場する宝石たちの設定を比べてみると、面白いほどよく作り込まれた作品であることに気がつきますし、また作中に登場した宝石について調べていけばいくほど作品の考察も捗ります。宝石をモチーフにしているだけあって奥が深い設定で、本当に秀逸な作品であると感じました。







 そんな素晴らしい原作を映像化したテレビアニメ『宝石の国』は、効果音や演技などで「宝石」らしさをうまいこと演出していますが、一番のポイントとなるのがCGです。テレビアニメ『宝石の国』は3DCGによるアニメーション作品となります。



 自分の記憶の限りですと、テレビシリーズのアニメ作品においてほぼフル3DCGで制作された作品は、2013年に放送された『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』が最初だったような気がします。その翌年には『シドニアの騎士』も放送され、以降3DCGのアニメーション作品が増えた印象がありますね。


 ただCGアニメ作品でよく言われるのが「不気味」や「気持ち悪い」といった感想。確かに3DCGで作られたキャラクターはどこか生気を感じないといいますか、どことなく人形を動かしているだけのような印象を受けます。


 とくに昨今多くのアイドルアニメのダンスシーンをCGに差し替えている作品をよく見かけますが、通常の作画のシーンとの落差が激しすぎて違和感がとんでもないことになる傾向があるかと。もちろん予算や技術力によるクオリティの兼ね合いがあるのは仕方がないですが、3DCGは今もなお発展途上にあると感じています。自分も『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』や『シドニアの騎士』をはじめて見たときは少々違和感を抱いていましたが、放送を重ねるにつれて慣れていきました。しかし人によってはCGに慣れることができず、結果CGアニメに対して拒否反応を持ってしまう方が一定数いらっしゃるのも事実かと思います。


 これはある意味では、ロボットや人工知能の開発の際に立ちはだかる「不気味の谷」と類似しているかと。というかまさにそのもの。「不気味の谷」は人工物が人間に近づけば近づくほど奇妙に感じられる現象のことで、3DCGアニメーションにおいても不気味の谷は存在し、それこそが3DCGアニメ作品に抱く違和感の正体かと。


 一方で、CGキャラクター特有の不気味さや気持ち悪さ、不気味の谷を逆手にとった作品が、2015年に劇場公開された『屍者の帝国』だったと記憶しています。こちらは死体を労働力として再利用する架空19世紀の話なのですけど、生きている人間を作画で描き、多くの屍者をCGで描いています。ゾンビみたいな動きをする屍者をCGにすることで、CG特有の生気のなさ、ひいては不気味さや気持ち悪さを演出として活用しているのです。



 そして『屍者の帝国』と近いアプローチをしたのが、この『宝石の国』でもあります。


『宝石の国』に登場するキャラクターは全員宝石、鉱物です。無機物ですので、いってしまえば生きていないのです。生物ですらありません。よってCGキャラクター特有の生気のなさが、生物ではなくあくまで動く鉱物である宝石たちの様子を描くにあたっての演出として活用できたのです。


 もちろん『宝石の国』のCGのクオリティが素晴らしいというのもあるのですが、3DCGアニメーション作品として題材との相性のよさが大きなポイントになっているのではと考えております。


 おそらく手書き作画で制作された場合、CGよりも生き生きさが出てしまうかと思います。先程自分はCGのキャラクターは人形感があるみたいなことを書きましたが、それがいいのです。その人形感、ひいては不気味の谷こそが『宝石の国』の世界観に合致しているのです。なにせ本人たちは生物ではなく鉱物なのですから。


 そういう観点からアニメ『宝石の国』をみると、この作品はフル3DCGで制作して大正解だったのではと感じていますね。




 正直に言えば現在の3DCGのレベルは非常に高いと思っています。重要なのはそのCGの特性、生気を感じさせないある種の不気味の谷をどのように活用するのか。技術力の向上で不気味の谷を越えるクオリティに仕上げるのか、それとも演出の一部として不気味の谷を活用するのか、という問題になるのではと、いちアニメファンとして感じていることであります。少なくともバ〇ドリみたいな作品をCGで制作してもしょうもないだろと個人的に思っています。







 という具合に、テレビアニメ『宝石の国』がいかに優れた3DCGアニメ作品であるか語ってきました。



 そうそう。肝心のストーリーの方ですけど、連載中の漫画作品が原作ということもあり、アニメのオチは所謂俺たたエンド(俺たちの戦いはこれからだ! エンディング)になっていまして、謎とか伏線とかが放置になっています。


 ですがテレビシリーズの映像作品として全編通して見てみると、意外としっかりテーマを設けており、これはこれで悪くないという印象を受けます。何といいますか、「甘えん坊の末っ子が厳しい現実に揉まれて成長し変化していく」という観点で見ていくと、確かにフォスフォフィライトは物語の主人公としての役目を全うしていますし、何なら主人公が変わっていくためだけに謎や伏線が用意されていて、それらの回収は二の次でいいとすら思えてきます。重要なのは謎解きではなく主人公の変化具合であり、根本はあくまで成長物語であるのです。個人的には一つの映像作品としてこれでいいかと。









 そんなこんなで、今回はテレビアニメ『宝石の国』についてでした。




 ニコニコ動画での見放題は9/30までとなっていますので、プレミアム会員の方でまだご覧になっていない方は是非!


 というか、自分は毎期放送されたアニメの中からとくに気に入った作品を5つ選んでベスト5として発表していますけど、『宝石の国』は17年秋アニメのベストアニメに選出したくらいなので、いやホント、マジ、ガチでオススメ傑作アニメなので是非。






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