【映画】『アルモニ』を見ました。これは青春アニメとして屈指の傑作ではなかろうか!?

2019年9月12日




 Amazonプライム・ビデオアマプラで偶然見つけたアニメ作品でして、気になったので軽い気持ちで視聴したら想像以上の良作でとてもよかったです。というかあまりにも素晴らしい作品だったので、とんでもないものを掘り当ててしまった感が強く、いちアニメファンとして興奮ものでした。タイトルは『アルモニ』です。






 あらすじ(Amazonより転載)

 人は皆、それぞれ自分の世界を持っている。34人の生徒がざわめくこの2年1組の教室の中にだって、沢山の世界がある。吉田や渡辺なんかと一緒に昨晩のアニメについて熱く語れるのが、僕──本城彰男の世界。楽しいし、居心地だっていい。……でも、本当はいつも考えている。教室の向こう側で華やかな友人に囲まれて笑っている、真境名樹里の世界のことを。ある日、僕は彼女の世界に触れることになる。言うほど単純なことではないんだけれど。




 公式ページ:https://www.kadokawa.co.jp/anime/harmonie/








『アルモニ』は「アニメミライ2014」の一作として、他の三作品とセットで公開された作品。「アニメミライ2014」とは「若手アニメーター育成プロジェクト」という文化庁が実施しているアニメ人材育成事業のことです。ちなみにこの「若手アニメーター育成プロジェクト」はころころと名称が変わっており、最初は「PROJECT Aプロジェクト・エー」、次に「アニメミライ」、そして現在では「あにめたまご」という名称になっているそうです(ソースはWikipedia)。



 若手人材育成を目的にしている企画のため、制作スタッフには若い方が多く関わっている作品で、この『アルモニ』も同様です。


 エンディングのクレジットではわざわざ「若手原画」と表記されています。声優も若手が多く、メインヒロインに上田麗奈の他、大地葉や古川慎といった、今では人気声優であるものの2014年当時ではまだまだ新人な声優さんが出演されています。とくに上田麗奈さんは重要! というか上田麗奈出演作品を探しているときに『アルモニ』に辿り着いたわけですけどね。一方、制作陣全員が若手というわけではなく、ベテランも制作に加わっています。監督には『イヴの時間』の吉浦康裕が起用され、また声優陣も当時から人気があった松岡禎丞や沼倉愛美といった方も出演されています。作品の内容が学園もので登場人物が全員高校生なものなので大御所といった声優さんは出演されていませんが、先輩声優としてしっかり演技で作品をリードされている印象を受けました。(敬称略)







 作品は短編映画です。短編のため作品の尺としては30分程度の非常に短い作品。丁度テレビシリーズの一話分の尺です。作品の内容としましては学園青春ものです。


 一見よくあるシチュエーションですが、しかしこの『アルモニ』に関してはその青春の日常風景の描き込みがとてつもないのです。チャイムが鳴った途端に発する喧騒や、一気にバラバラに動き出す動作など、誰しもが体験したことのある普遍的な教室の空気感というものをアニメーションで完全再現しているわけです。もう脱帽ものでして、冒頭から「マジかよ」と呟いてしまうくらい引き込まれる映像となっていました。


 人材育成企画の作品というと、偏見かもしれませんがどうしても学生作品的な仕上がりを想像してしまうのですが、この『アルモニ』のクオリティは学生作品なんてものではなく普通にテレビシリーズのアニメを大きく超える映像となっているのですよ。まあ……昨今は制作現場の悪化による作画崩壊やスケジュール崩壊を引き起こしたク〇アニメを多く見かけますから、テレビシリーズの質のハードルがグッと下がってはいますけどね。でも普通に『アルモニ』はテレビシリーズではなくちゃんと劇場クオリティになっています。




 また物語としても、短編映画というとても短い尺であるにもかかわらず起承転結がしっかりしていて、とてもストーリーを追いやすい綺麗な構成となっています。説明するところは説明して、視聴者に想像してもらいたいところは演出で雰囲気を整えたりと、展開にメリハリがきいているとでも言いましょうか、途中で話に飽きることはなかったです。あと作中でちょっとしたミスリードとかもあり、またオチとしても少年と少女が心を通じ合わせたかのように見えて実はすれ違っている感が、感動の中にコミカルな要素をスパイスとして加えられているような感じがして、それがまたたまらないです。全体的にフワッとしたお話ですけど、そこがまた「もっと続きが見たい」「短編にするにはもったいない」といった欲求が出てきて、物語の後日談を妄想する楽しみが生まれ、これはこれでいいお話だったといった感想が出てきますね。





 これら教室内での空気感やストーリーの開示の仕方など、やはり吉浦監督の『イヴの時間』を彷彿とさせるものがあり、人物たちがいるその空間のナチュラル具合がまた絶妙に表現されていて、実に唯一無二な作品に仕上がっている印象でした。


 これ思うに、人材育成を目的としたプロジェクトであり、実際に若い方に貴重な経験を積ませていますが、同時にベテランな制作陣も今までできなかった新しいことに挑戦するといった実験作品としての側面もあるような気がしましたね。


 何と言いますか……これまでアニメ作品においてあくまで舞台装置でしかなかった教室内をあえて主体として、教室という空間を大真面目に描いたらどんなドラマが生まれるのかを試してみた、といった思惑が見え隠れしているようにも感じられ、その部分がやっぱり他のテレビシリーズや劇場作品の青春物語とは違うニュアンスを含ませる要因になったのではないかと感じました。脚本も原作も監督である吉浦氏によるものなので、ベテランクリエーターが若手を引っ張りつつ自身も冒険している様子が感じられてとても面白かったです。





 本当に、近年に発表された青春アニメとしては間違いなく傑作になるのではと思います。強いて惜しい点をあげるとしたら、短編で尺が短いといったところでしょうか。これは尺が足りてないという意味ではなく、もっと見たいという欲求が出てくるという意味。物語としてはちゃんと短編の尺に収まっています。



 そんな素晴らしい短編アニメーション作品はAmazonプライム・ビデオで400円くらいで視聴することができます。ブルーレイも出ているそうなので、登録してない方でもパッケージで見ることができるかと思います。気になる方は是非どうぞ。




 ……というか、コレ普通にブルーレイ欲しい……買っちゃおうかしら。ああ……出費が……。







 あと吉浦監督作品の『イヴの時間』も傑作アニメですので、こちらもどうぞ。確か『イヴの時間』はAmazonプライム・ビデオで無料で見れたような気がします。










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