【小説】『revisions 時間SFアンソロジー』を読みました。面白いけど……やっぱりなんか翻訳された小説って苦手だな……
2019年4月19日
先日『revisions 時間SFアンソロジー』を読みました。こちらは今年の1月から3月まで放送されていましたテレビアニメ『revisions リヴィジョンズ』にちなんだアンソロジー企画で、「渋谷一帯が300年後にタイムスリップする」というアニメの内容を踏まえて「時間SF」をテーマに国内外の傑作短編小説を集めた一冊となっております。
あくまでテーマアンソロジー企画であるため、『revisions リヴィジョンズ』のノベライズでも何でもなく、中身としては一切アニメと関係ないものとなっています。よってアニメ『revisions リヴィジョンズ』のことなんか全く知らなくても楽しめますし、逆にアニメを見てSFに興味を抱いた方を取り込もう的な意図も邪推できてしまう、そんな早川書房によるアニメ便乗企画です。
ちなみにこのアニメ便乗企画はこれで3回目で、最初は劇場アニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』から「サイバーパンク」を集めたアンソロジーであり、2回目は17年春アニメの『正解するカド』にちなんだ「ファーストコンタクト」アンソロジーをやっています。
タイトルはそれぞれ『楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選』『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』で、どちらもハヤカワ文庫JAから出版されていますので気になる方は是非。個人的には第二回の「ファーストコンタクト」集が本当に傑作揃いで面白かったです。
そんなこんなで便乗企画3回目なので、今までの流れで本書も手に取りました。収録タイトルは以下の通り。
法月綸太郎『ノックス・マシン』
小林泰三『時空争奪』
津原泰水『五色の舟』
藤井太洋『ノー・パラドクス』
C・L・ムーア『ヴィンテージ・シーズン』
リチャード・R・スミス『退屈の檻』
時間SFといってもその種類は様々あり、たとえば定番のループものであったり改変ものであったりするもの。そのループや改変も人物の受け止め方や活用方法が違えば、当然作品から感じる印象も異なってきます。
ループ状態に囚われるという設定であれば、『エンドレスエイト』(涼宮ハルヒ)はループからの脱出を描いていますし、逆に『All You Need Is Kill』とかはループに囚われていることを利用して経験を積み強くなるといった具合ですかね。改変なら悲劇を回避する『STEINS;GATE』のような王道もありますし、入間人間作品では二組タイムトラベルしていて片方が解決に到達するともう片方は悲劇的な結果となりお互い改変し合ってループに陥っている作品もありました(ネタバレになるため作品名は控えます)。お互い時間を遡る作品で『時砂の王』(著者:小川一水)では宇宙戦争において時間移動合戦になり邪馬台国の時代まで遡ってドンパチやりながらタイムパラドックスについて触れていますし、タイムパラドックスということであれば『リライト』(著者:法条 遥)ではいつの間にかタイムパラドックスが発生していて主人公がそれに巻き込まれるとかありましたね。
このように同じ「時間」を題材にしていても見せ方一つで全く異なる作品になりまして、今回集められた作品はいい具合にばらけており、一冊で幅広いタイプの時間SFを楽しむことができます。SFとしてとくに興味深かったのは『時空争奪』で、「そういう視点から歴史改変を描くのか!」と衝撃を受けました。
収録されている6作品のうち2作品は海外の作品で、しかも古典SFと言っていいくらいに昔の作品です。『退屈の檻』はループに囚われた状況をホラー的に描いてる作品で、『ヴィンテージ・シーズン』は未来人が現代に来て現地人である主人公の視点で奇妙な未来人を描写しています。どちらもとても面白かったです。
面白かったのですが、しかし……非常に読みにくかった!
やっぱりですね、海外小説は読んでいて疲れますね。ええ、自分翻訳された文章が苦手でして、今回のアンソロジーで「ああ、やっぱり苦手だな」と再確認しました。
今回の便乗企画シリーズ第3弾は一応全部読むことができましたが、実を言うと第2弾「ファーストコンタクト」集は苦戦のあまり話の内容が全然入ってこなかったし、さらには第1弾「サイバーパンク」集に至っては途中で挫折した作品もありました。
それ以前でも、有名な海外長編作品を読んでみても……最初はしっかり読んでいるものの次第に流し読みになっていき、結局読み終えても話の大筋を理解しただけで「面白い」よりも「苦痛だった」といった感想が先行する始末。なんて言うんですかね……マラソンみたいな感じで、走っても走ってもただただつらいだけで完走しても苦行が終わったことに安堵するだけ、みたいな。海外小説もあらすじだけをなぞれば面白く感じるのに、実際読んでみると全くもって面白さを感じないといったところですかね。
で、何がそこまでダメなのかといえば、翻訳された日本語があまりにも奇妙であり、読んでいて気持ちが悪いと感じてしまうところにあります。
たとえば、比喩表現が意味不明すぎて結局何が言いたいのかサッパリわからない文章とか、ゴテゴテに装飾されているために何回も読まないと理解できない文章とか、あと逆にシンプル過ぎて説明足らずに陥っている文章などなど……。
元となる外国語の文章を翻訳しているわけですから、元々の文体であったり文法であったりするものに沿って日本語化しているとは思いますが、しかし「もう少しなんとかならなかったのか?」と突っ込みたくなります。
また文章そのものだけではなく、話の流れといいますか、ストーリーの進め方にも違和感を覚え、たとえば語り部の視点があっち行ったりこっち行ったりして忙しなかったり、かと思えばずっと視点を固定していたのに唐突な謎描写が挟まってきたりして、慣れない構成で理解が追いつかず気味が悪いといった具合なのです。
もちろん外国語と日本語とでは文法も何も異なり、さらにはその言語が使われている地域の文化や常識がそもそも違うわけですから、完璧に変換することなど不可能であることは理解しています。言語を違う言語に無理やり置き換えてもできあがる文章に歪みが生じてしまうのも仕方がないでしょう。思うに、言葉が違えば小説の作法も異なるのではないかと。そもそも小説の書き方が違うのではなかろうか。
でも……もっとこう、なんとかならないもんですかね?
というか翻訳者も編集者も、翻訳した文章を読み返してみておかしいと思わないのでしょうか?
海外小説特有の読みにくさは、そもそもの原文がおかしいのか、それとも翻訳者の訳し方がふさわしくないのか、あるいはただ単に自分の読解力の問題なのか……。もうね、そのあたりのことが全然わからないです。
今回の『退屈の檻』も『ヴィンテージ・シーズン』も、作品の概要としてはものすごく面白く、振り返ってみても「やっぱり名作は違うな!」と感じるものがありましたけど、でも実際に読んでいるときは苦痛で、ただただ作業的に文字を追いかけていました。
こういう感覚は……なんでしょうね? 数こなせば翻訳文体に慣れるものですかね。慣れるまでつらいですけど。
とりあえず、作品としてはとても面白かったです。ただ海外小説はもう当分読みたくないと思いました。やっぱ海外小説は苦手だな……。
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