【アニメ】『BEATLESS』反省会。ストーリーは面白いけど……とりあえず一から作り直そうか

2018年9月30日 公開





 テレビアニメ『BEATLESS』が放送終了してから3か月。完結編にあたる残り4話が27日28日と放送されました。



 テレビアニメ『BEATLESS』公式ページ

 http://beatless-anime.jp/



 あらすじ(Wikipediaから抜粋)


 22世紀初頭、社会のほとんどをhIEと呼ばれる人型ロボットに任せた世界。21世紀中ごろに超高度AIと呼ばれる汎用人工知能が完成し、人類知能を凌駕、人類は自らより遥かに高度な知性を持つ道具とともに生きていた。100年あまりで急激に進行した少子高齢化により労働力は大幅に減少したが、その穴をhIEが埋めることで社会は高度に自動化され、生活は21世紀初頭よりも豊かになっていた。

 そんな中、hIEの行動管理クラウドのプラットフォーム企業「ミームフレーム社」の研究所から5体のレイシア級hIEが逃亡する。「モノ」が「ヒト」を超える知性を得たとき、「ヒト」が「モノ」を使うのか、「モノ」が「ヒト」を使うのか。「ヒト」と「モノ」のボーイ・ミーツ・ガールが今始まる。




 原作は長谷敏司のSF小説。イラスト担当はredjuiceです。もともとは月刊ニュータイプで一年くらい連載していた小説で、2012年に単行本化、そして2018年にアニメ放送にあわせて角川文庫より文庫化されました。で、文庫版は上下巻合わせて1000ページオーバーの超大作。ボ、ボリュームがありすぎる傑作SF作品です!



 ここで作者である長谷敏司氏のご紹介を簡単に。


 2001年『戦略拠点32098 楽園』で第6回スニーカー大賞金賞を受賞。ライトノベルの代表作に『円環少女サークリットガール』があります。

 また、2009年には早川書房から、人工知能を題材にしたハードSF『あなたのための物語』を発表。この『あなたのための物語』は第30回SF大賞最終候補作となりました(ちなみにこの年のSF大賞を受賞したのは、伊藤計劃の『ハーモニー』)。ですが2015年には晴れて『My Humanity』で第35回SF大賞受賞しました。

 そんなライトノベル作家からSF作家へと転身しましたが、2016年からは小学館ガガガ文庫より、競技化したロボット兵器によるアクションラノベ作品『ストライクフォール』のシリーズが始まり、ライトノベルとSFの両方でご活躍されている小説家さんです。


 2018年1月から2クールの予定でテレビアニメ化しました『BEATLESS』は、平凡な男子高校生の主人公が美少女(型のアンドロイド)と出会うところから物語が始まるという、所謂なろう小説が台頭する以前のラノベのテンプレート的な冒頭ですが、しかし物語は、人間より優れた知的存在がいることで極端に自動化した社会という世界観のもと、人と物の関係性を問いかけるという、かなり深いテーマを突き詰めたゴリゴリなSF作品です。いわばライトノベル的なキャッチーさと哲学的な本格SFを融合させた、ハイブリットなボーイミーツガールSF作品と言えるでしょう。



 私もですね、『BEATLESS』がテレビアニメ化すると知ったとき、思わず「マジで!?」と興奮しました。で監督が、ガンダム00や楽園追放の水島精二! SFが得意なアニメ監督さんなので、アニメ『BEATLESS』への期待がうなぎ登り!!


 ではー、アニメ制作はどこなのかというと、


 デ ィ オ メ デ ィ ア


( ^ω^)…………、

( #゚Д゚)はぁ?(怒)。


 私はですね、制作がディオメディアだと知った途端、眉をひそめましたよ。期待感が急降下した感じです。


 だってディオメディアって、こう言っちゃあれだけど、作画レベルが低いところですよ。クソアニメ請負屋ですよ! こんなの、低クオリティでのアニメ化確約じゃないですか!! これでどう期待しろと!?



 ……いや、まだだ。PV見るまでは何とも言えない。原作のイラスト担当はredjuiceだぞ。redjuice氏といえばオリジナルアニメ『ギルティクラウン』や、劇場アニメ化した伊藤計劃の『屍者の帝国』や『ハーモニー』のキャラクターデザインをした方だぞ(『虐殺器官』はredjuiceのデザイン完全無視だったので除外)。これはもしかしてredjuiceのキャラクターデザインを生かすために、ギルティクラウンクラスの作画になるかもしれない!


 そう密かに期待してPVを見ました。そしてガッカリしました。


 だって、どう見ても、なんだもん!

(TVアニメ「BEATLESS」PV第一弾 https://www.youtube.com/watch?v=jPq1Hrh5ZnU)


 redjuiceイラスト特有の近未来感のある美麗なオーラが微塵もない!

(期待していたのはこういうの http://beatless-anime.jp/gallery/)


 ち、ちくしょう……。




 でもですね、そうは言いつつも、なんだかんだで毎週楽しみに見てました。まあそもそも、私自身アニメは作画よりもストーリー重視で見ているので、多少作画が崩れたとしても話に集中できないレベルでなければ大丈夫というスタンス。案の定ディオメディア制作で、カットの使いまわしや引きのシーンで顔が間抜けになっている等の怪しい作画がチラホラしていましたが、まあ頑張っている方かなと思っていました。


 というか、そういった作画の荒が気にならないほどに、ストーリーがめちゃくちゃ面白い! 同時期、2018年冬アニメには『宇宙よりも遠い場所』や『ゆるキャン△』、『citrusシトラス』などの良作が溢れ、冬アニメは豊作だとアニメファンの間では話題になっていましたが、そういった豊作の中でも引けを取らない面白さが『BEATLESS』にもありました。これで作画がよければ神アニメになっていました。



 ですが……恐れていた事態が。そう、唐突の総集編です。


 よくテレビアニメの総集編は、制作が間に合ってなく放送を一話落としてしまうときに用いられるものでして、所謂「万策尽きた」というものです。あ、「万策尽きた」というスラングを詳しく知りたい方はアニメ『SHIROBAKO』を見てください。



 テレビアニメ『BEATLESS』も、その総集編が放送されました。


 いや、でも、一応ストーリーが一区切りついたタイミングでの総集編だから、本当の意味で振り返るための、最初からスケジュールにあった総集編かもしれない……。それに2クールあるから、1週くらい休んでもいいじゃないか。



 そう思っていたのですが、結果として、2クールの間に、


 総集編4回、特別番組1回の、5


( ゚Д゚)ゴルァ!! やっぱ万策尽きてんじゃねぇか!!



 まあ特別番組はちょうど12話のあと、本来なら1クール目と2クール目の境目に放送されたので、これは本当に最初からスケジュールにあったものでしょう。しかしそうなると他4回の総集編はリアルに万策尽きた結果ということになってしまいます。


 そのため、テレビアニメ『BEATLESS』は全24話のうち20話までしか放送できず、残りの4話を3か月後である9月下旬の今にようやく放送することができたのです。ちょうど総集編さえなければ予定通りに最終回を迎えられました。




 いやー、『BEATLESS』の最終回を見ましたけど、文句なしの超大作アニメでした。まあ濃厚な設定盛沢山の原作のため、どうしても難解な台詞ばかりになっていますが、私としては作画ヌルヌルのアクションよりは台詞が多いアニメの方が好きな傾向があるので、この大量の台詞を純粋に楽しむことができました。


 でもですね、だからといって作画がどうでもいいわけではないです。相変わらずの不安定な作画で、3か月あったのにこれかよ、って気持ちでアニメを視聴していました。



 コレ、作画さえよければ、制作がディオメディアでなければ、今年トップクラスの神アニメになってましたよ。それこそ、作画だけよかった『ギルティクラウン』と、ストーリーだけよかった『BEATLESS』を組み合わせたいくらいです。



 ただ今回のテレビアニメ『BEATLESS』のスケジュール崩壊も、アニメ業界としては今にはじまったことではないんですよね。もう以前から危ない作品は本当に危なかったですし。こうした慢性化したスケジュール崩壊って、もうアニメ市場の限界に近づいているという証拠でもあるんですよ。


 大体、今のアニメは本数が多すぎる。来クールのアニメはまだ調べてないですが、例の如く数十本の新作が放送されるでしょう。以前は3話切りや1話切りなど、一応視聴してみるといったことができました。またそうやって期待ゼロの状態から見始めて意外な掘り出し物を見つけることもできて、満足にアニメを楽しむことができていました。ですが昨今の毎クール数十本の新作を放送するようになり、ゼロ話切りが当たり前になってきてしまっているのです。


 ですから、例えアニメファン同士の会話であったとしても、見ることができている作品が違うために話が噛み合わないという事態が発生しているのです。


 こうした状態は、いわば視聴者の取り合いが発生しているために起こるもの。つまりアニメ市場では、需要に対して供給過多になっているのです。そうした利権だけを求めて粗悪な作品を量産して、限りある視聴者を奪い合った結果視聴者は分散してしまい、それによって収益も分散してアニメ界全体が低下するという悪循環が発生しているのです。


 それにアニメ作品の供給過多はアニメ制作会社にも悪影響です。スケジュール崩壊するのも、その制作会社にあった能力以上のことを求めてしまっているからです。時間や資金がなければ、どこであろうともクオリティの低いものしか生まれません。


 つまりは今の状態のままですと、アニメはどんどん衰退していき、市場も業界も縮小していかざるを得なくなってしまいます。


 そんなアニメ界の負のスパイラルの犠牲を受けたのが、まさに『BEATLESS』という作品でしょう。こんな傑作の原作を、雑にアニメ化しないでほしい。もっと時間をかけて真面目に(制作現場は真面目だと思いますが)アニメを作ってもらいたいです。ただ納期に追われて妥協していくよりは、クオリティを重視して余裕を持って制作してもらいたい。もちろん今のアニメ業界では難しいことでしょう。


 それにアニメ業界が抱えている問題は山積みであり、かつ複雑です。しかしまずは業界全体での制作本数を減らすことから始めませんか? 原作枯渇とか言われていますが、枯渇なら枯渇でいいじゃないですか。質の高い本当に面白い原作に一本集中してクオリティの高いアニメを作りましょうよ。そうした方が、とりあえず制作現場も余裕が出ますし、何より視聴者も満足に作品を楽しめますから。毎クールこんなにアニメいりません!




 テレビアニメ『BEATLESS』は、本当はこう言いたくないのですが、アニメ業界の闇が招いた残念な作品と言えるでしょう。いち視聴者であった私としても、とても残念な気持ちでいっぱいです。


 ですから、今後アニメ業界が再編され、よりよい作品を生み出せる環境が整いましたら、『BEATLESS』のアニメリメイクしませんか? いやホント、『BEATLESS』の映像作品をこれでおしまいにしてしまうのはあまりにももったいない。今度は是非ともディオメディア以外の制作会社で、『ギルティクラウン』レベルの作画を期待します。



 そんな淡い期待をしつつ、アニメ『BEATLESS』の感想の皮を被った業界批判でした。







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18年11月20日公開

【小説】『BEATLESS』文庫版をやっと読み終えた……。そこのアナタ! ハッキングされてませんか?

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886711486/episodes/1177354054887561027




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