第29話

「おかえりなさいませ!」


 いつも落ち着き払っているエイが玄関先まで飛び出してきた。双子を見て、目を丸くする。「あら? どちらがどちら?」


 透子が明のカツラをひょいっと取った。明は不満そうに口を尖らせる。


「なんだよ、もうちょっとエイで遊ぼうと思ったのに」

「心配していたのに何ですかその言いぐさは。――うまく行ったんですの?」

「うん。エイ、ありがとう」

「それならようございました。今夜はお疲れでしょう。さ、お休みくださいませ」

「ありがと、ほーんと疲れた」


 二人で手を繋いだまま明の寝室へ向かった。同じ部屋で寝ることにいつもは渋い顔をするエイも、双子の姿が消えてから、嬉しそうに呟いた。「――仲直りしてくれて、よかったわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る