第22話
第22話
コツ、と窓を叩く音。
透子は物音を立てないよう、注意を払いながらゆっくりと窓を開けた。
藤木は透子の体を抱きかかえ、地面に降ろす。二人で人目を避けながら外に出る。足音は雨の音で消えているはずだ。
傘を差しながら、手をひかれてただ歩く。
静かだ。
「――どうして」透子が口を開いた。「こんなことまで……してくれるんですか」
藤木はしばらく沈黙していた。
「……貴女のことが……好きだからです」
小さな声だが、確かに聞こえた。
「すみません。こんなことを言うつもりじゃなかった。自分が貴女に釣り合う人間でないのはわかっています。……忘れてください」
「いえ……。忘れません」
透子は俯いたまま言った。藤木は繋いだ手に少し力を込め、意を決したように立ち止まった。
「もし、目が見えるようになったら……また、会ってもらえますか。刑事としてではなく」
はい、と答えた。
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