第21話

第21話

藤木が去った後、透子はしばらくそのまま立ち尽くしていた。雨に濡れている感覚はなかった。藤木に握られた手を、反対の手でそっと包み込む。ゆっくりと鼻の先に持っていき、匂いを嗅いだ。


 涙が、溢れた。

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