第2話

第2話

「――まったく! 夜出歩いてはいけないと申しているでしょう!」


 離れの子供部屋に帰ると、女中頭のエイが仁王立ちで待ち構えていた。

双子は顔を見合わせ、少女の方が肩をすくめて言った。


「ごめんよ、エイ。でもコソ泥掴まえられたのだから結果的にはよかっただろ?」

「だろって……。あっ、また! 入れ替わってございますね!」


 途端に二重の笑い声。


「エイってしっかりしてるのに、たまにおっちょこちょいだよね」


それぞれが頭に手をやった。少女はカツラを脱ぎ捨てる。少年は寝間着の襟に隠していた長い髪を出す。少女は少年になり、少年は少女になった。


「今夜はなんでまた? 夜会があるのは知っていたでしょう」

「その夜会がうるさくて寝付けなかったんだよ」


 少年がカツラをくるくる回しながら、ね? と少女の方に同意を求める。少女はコクンと頷いた。


「ほんとに、もう……。明(あきら)様、中等部に進学なされたのだからそろそろヤンチャもお控えください。また旦那様に叱られますよ」

「後で謝っておくよ。それにしても面白かったなぁ、まさか女を人質にしたつもりが実は男だったなんて思いもしないだろうな、投げ飛ばされて目を白黒させていたよ」

「いきなり手が離れたからびっくりしたわ」

 

 思い出し笑いをしている双子に、「さ、早くお部屋に。もう明け方でございます」と、エイが急かしているとドアが開き、一人の女中が入ってきた。


「旦那様がお呼びでございます」

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