第66話 last case 決着編 4
「ひゃっはーーーー! 騎兵隊の到着だーーーーー!!」
忍者戦闘に巻き込まれ、美紀のダイヤモンドスプラッシュ(仮)の流れ弾を受け名実ともにボロボロの幽霊タクシーとなった車を駆る義明は、泣き笑いの表情を浮かべテンションマックスのまま農道を突っ走り、後方より敵陣へと強襲する。
「新手だと? ふっ、たかが自動車1台の加勢が何になる?」
だが、小隊長ダニエル・カーズは慌てない。先ほどの上空からのステルス雷撃には多少ダメージを受けたものの、今度の援軍は間抜けにも雄たけびをあげながらの突撃と言う幼稚極まるモノ。
彼は、2班10名に迎撃を命じ、目の前のカッパファームの攻略にケリを付けるべく、詰めの作業を思案する。
「それにしても、例の男が来たと言う事は、奴は失敗したのか」
ダニエルは、車のルーフに乗っていた黒スーツにザビエルの失敗を思いほくそ笑む。黒スーツこと倫太郎を注視しろと言うのはザビエル自身が言い出した事だ。自分から言い出したくせに足止めすら碌にできない、そんな男に価値は無い、彼は組織の人間でもないくせに妙に帝王の覚えの良いザビエルに抱いていた溜飲を下げる思いだった。
「近づかせるな! ファイヤー!!」
倫太郎たちの対応を任せられた小隊から、遠距離魔術と銃撃の同時攻撃が行われ、幾条もの火線がタクシーへ向かう。
――だが!
「なっ!? すり抜けただと!?」
撃ち込まれた夥しい数の攻撃は、タクシーの姿を水面に映る月の様に揺らめかせただけだった。
「ふっ、河童忍術
朧に揺らめく倫太郎は、ルーフの上に仁王立ちしながらそう呟く。河童忍者は水術に長じる、河童忍術
だが、こんな手品もそう長くは続かない。
「っ! 熱源感知だ! その他の走査術式も使い、しっかりと狙いを定めろ! あの車を完全破壊せよ!」
「テメェらふざけんな! そんなバラエティ豊かな攻撃食らって保険会社にどう説明つけりゃいいってんだ!」
もはや大破寸前のタクシーの中で、義明は涙目になりつつもアクセルを緩めずにそう叫ぶ。
「そんなもん知るか! 情け無用、ファイヤー!」
義明の叫びも虚しく、再照準を終えた全力攻撃がタクシーに飛び――
ドン!!!
――タクシーはねずみ花火の様に爆破炎上した。
「よし、やったか?」
残骸と成り果てた、タクシーを目に小隊長はそう呟く。タクシーは見るも無残な姿となり炎と黒煙を上げながら沈黙。暫く後に、その残骸より半透明の女性がルーフの残骸より抜け出て来た。
「ふえーん。怖かったですー」
「ん? なんだ? アレは?」
その姿に小隊長は訝しむ。見たところゴーストの女性のようだが、あのような者は居なかったはずだ……。それに実弾攻撃はともかく魔術攻撃も混じっていたのだ。それを食らって全くの損傷なしとは……。
「あの幽霊女は、囮の運転手だ」
「なっ!?」
気が付くと、緑の影が真横にいた。
「ぶっ飛べ、河童忍術、
高圧流水を接射で叩き込まれた、小隊長は体をくの字としながらブーメランのように回転しながら吹っ飛んでいく。
「隊長!」
「貴様いつの間に!」
「馬鹿な! タクシーと共に破壊したはず!」
慌てて残りの隊員達が倫太郎を取り囲むも、倫太郎の手には既に水の鞭が振りかぶられていた。
「河童忍術、
河童大回転!
倫太郎は独楽の様に回りながら水鞭を使い、残りの隊員もまとめて吹き飛ばしたのだ。
「くっそー、全損って言葉じゃ収まり切れねぇぞ」
ブツブツと文句を言いながら遠くで隠れる義明の所に。フラフラとよろめきながら美紀が帰ってくる。
「た、只今もどりました、義明さーん」
「おう、運転お疲れ様だ、美紀」
「はっ、はいー。何とか大役を務める事ができましたー」
「にしても、すげえ攻撃だったけど何とかなるもんだな」
義明は、美紀の胸元に、鎧のようにつけられた焼け焦げた護符の数々を見ながらそう感想を漏らした。
「ええ、私も流石にヤバイかなと思ったんですが、この身代わりの護符たちが頑張ってくれたみたいで」
美紀に付けられた護符は、1回限り攻撃を代わりに受けてくれると言う護符の数々だ。倫太郎は手持ちのそれを全て美紀に装着させた上で、
義明のスマートフォン越しのがなり声もそうだ。全てはタクシーに注目を浴びさせ、それを壊させることを目標とさせる心理戦術だったのだ。
敵は魔術と科学の目を使いタクシーを探査した。だがしかし、
ちなみに、勿論タクシーのルーフにて仁王立ちしていた、倫太郎も唯の囮である。その辺に転がっていた案山子に、
ともかく、こうして倫太郎の刃は敵陣後方に突き刺さったのだった。
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