第24話 case4 決着編

「っち。おい、明。あの胡散臭い黒人は俺が相手をする。

 お前は姫と雑魚どもの相手だ」


 倫太郎は、そう言い変身をし、ザビエルに突撃をする

 朝もやの立ち上がる公園にて、緑と黒は雄たけびを上げながら激突した。





「ちょっと、姫様。この人たちは誰なんですか!?」

「んー、そうだにゃ。もしかすると、儂が以前いたところの奴らかもしれんにゃ」


 明と姫は、うじゃうじゃと湧いて来た、忍者たちと相対していた。彼らの実力はおおよそは下忍クラス。1対1では明の優勢は動かないが、2対1なら危険、3対1なら決死の覚悟と言った所だ。

 だが、こちらには戦闘力なら上忍クラスの姫が居る……はずだったのだが。


「食らえ! マタタビ吹雪!!」

「うにゃ~~~~~!?!?!?」


 敵、忍者たちもそこは織り込み済み。予め姫相手に仕込んでいた術を一斉に発動。

速攻で、姫は単なるお荷物となり下がった。


「くっ! 貴様ら! 何が目的だ!」

「ははは、そんな事言うはずがなかろう! 殿がその猫又の魅力に溺れた挙句家財金品を強奪された事が広がってしまえばお家断絶だ!」

「えっ! 姫様そんな事してたんですか!?」

「むにゅ~、行きがけの駄賃としてバイト代を頂いただけだにゃ~~」

「きっ! 貴様ら何故そのことを知っている!ええい! こうなっては生かしては置けん!」

「自分たちで漏らしたのにーーーー!!!!」


 こうして、中忍一人、下忍二人からなる小隊とお荷物を抱えた下忍の明と言う、絶望的な戦いが始まった。





「HAHAHA!!!! りんたーろう! この前は諸事情により手を抜きましたが、今回は本気で行きまーす!」


 突けば槍、払えば長刀、切らば剣。ザビエルは手にした錫杖に岩石を纏わせ縦横無尽に振り回す。


「くっ! テメェは別に獣好きって訳でもなかっただろうが! なんでそんなに気合入れてやがる!」


 倫太郎もザビエルの殺気を感じ取り、最初から本気モードで、大蛇切る十柄の剣あまのはばきりを持ち出し応戦する。


「NoNo、違いまーす。あの獣人の子もキュートですが。あの少女の眩しさには敵いませーん!

 火克金、業火絢爛、インフェルノ・ファイヤーバードッ!!」

「なめんな、ロリコン! 俺の水にそんなボヤが効くか!!

 河童忍刀秘奥義、大地侵す大蛇の濁流やまたのおろち


 両者の中央で紅蓮の鳥と、八条の水流がぶつかり合った。





「くくく、お荷物を庇いながらよくもまぁそこまで耐えるものだ」


 明たちの相手を配下の忍びに任せ、高みの見物をしていた中忍は、傷だらけになり、息も絶え絶えな明に向かってそう言った。

 配下の下忍たちに目立ったダメージは無いものの、それでも明の働きは驚異的なものだと言えよう。

 ちなみに、渦中の姫はマタタビに酔ってぐでんぐでんになっているも、明の献身により奇跡的に傷一つなかった。


「だが、そこまでよ。これ以上いたぶるのも忍びだけに忍びない。私自ら止めを刺してやろう」


 そう言い、リーダーである中忍が動く。


「くっ……、此処までか」


 明が、覚悟を決めた時だった。


「天狗忍法、招雷大激振てんにほえる


 囁くような、美麗なソプラノが、公園に、そして上空にしみわたり、轟音と共に天から雷の雨が降り注いだ。


「「「「あばばばばーーーー!!!!」」」」


 明がその声のした方向を見上げると、そこには街灯の上に立つ。豊前翔子の姿があった。


「おーーーーーーーーーほっほっほ!

 得物を前に舌なめずりとは、ド三流のやる事でしてよ!」

「あっ、白だ」

「Noooo、婆には興味あーりませんねー」

「天狗忍法、招雷大激振てんにほえる

 翔子は雷を降らすが。二人の変態はそれを難なくかわす。

 そして、稲妻が巻き起こした砂埃が晴れた後には、ザビエルの姿は何処にも存在しなかった。





「ほーっほっほ! あれだけ大口叩いておいてこの様とはいい格好ですわね、倫太郎君!?」

「くっ……、あの猫の話を鵜呑みにした俺が馬鹿だった」


 肩を落とす倫太郎にここぞとばかりに、上から発言を繰り出す翔子。因みに先ほどの失態は既に忘却の彼方だ。


「それにしても、明!」

「はっ! はい! なんでございましょう翔子様!!」


 倫太郎をいたぶった翔子は、明へ振りむき声を上げる。


「先ほどの立ち回りは見せてもらったわ及第点を上げましょう。

 けれど、無様に魅了されてしまったことで、今回は差し引きゼロ。

 まだまだ精進が足りなくってよ」


 そう言って、翔子は地面にへたり込んでいる明へと手を伸ばした。


「しょっ、翔子様ーー」


 明は、翔子の自愛に満ちた瞳をみると、地獄の様だったこの3日間を思い出し、自然と涙があふれ出す。

 そして、明は、翔子の手を取ると、そのままの勢いで彼女に抱き付いた。


「ところで、どこに行こうと言うのかしら、そこの一人と一匹」


 ぎくりと、こっそりと逃げ出そうとしていた、倫太郎と、姫の足が止まる。


「いっ、いやー。麗しい師弟愛を邪魔するのは、ほら、アレだと思ってな?」

「そっ、そうだにゃ。アレだと思ったんだにゃ?」


 翔子は、びしりと姫に指をさす。


「そこな猫又! 先ずは明に掛けた呪いを解きなさい!」

「はっ! はいにゃ! と言うかその件についてはもうとっくに解いてあるにゃ!」


 静寂が一陣の風となって、公園を駆け抜けた。


「……り・ん・た・ろ・う・君?」

「いっ、いや違うんだ翔子!はらアレだ、この馬鹿猫、いつ気が変わって逃げちまうか、わかったもんじゃないからな。予めとっちめて解呪させておいたんだ」

「そ、そうだにゃ。おかげで儂はあの小汚い事務所に縛られる事となってしまい、その腹いせに、前の家で起こした事を黙っていたとか、そう言うことじゃないにゃ!」

「天狗忍法、招雷超激振てんにたける!!!!!!!」


「「あばばばばばばばばばばーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」


 先ほどよりも数倍強力な雷の雨が降り、抱き合う馬鹿二人は無事退治された。

 こうして町にはひと時の平穏が訪れたのであった。

 だが忘れてはいけない。

 人の心に悪しき気持ちがある限り、第二第三の馬鹿はいずれまた現れるのだと!



Case4:白猫のお願い  完

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