君に恋は難しい

乾辰巳

第1話-1 僕

恋愛がわからない。それが君が僕に返した言葉だった。

それが何を意味し、それが最悪の事態を招くとは僕には想像もつかなかった。


僕は君に恋をした。はじめて逢った日。ひとめぼれと言われるものである。

そのとき確かに僕と君は言葉を交わした。でも、それ以来話さない日々が続いた。

話さないというよりも話せないというのが正しいのだろう。内容がなければ話が続かない。それを恐れて話しかけもしなかったのだ。しかし、先に手を差しのべてくれたのは君だった。

ある日君は僕のところに駆け寄ってきて話しかけてくれた。その日からメールをするようにもなった。それ以来君とばかりメールをしていた。誰よりも君を優先していた。君を甘やかしていたのかもしれない。でも、やはり普通の内容では話が続かないのは変わりなかった。

しかし、ある種の助けというものがあった。それは「僕の好きな人」というものである。それはガセネタなのだが君はそれを信じ込みずっとその事を話続けていた。僕はそれを否定しなかった。なぜなら君と話続けることのできる「ネタ」というものができたからである。「君を騙していた。」といっても間違えではない。しかし本当のことを打ち明けてしまえば振り出しに戻るのは確かなのである。僕はどっちが正しいのがわからなくなってしまい「騙し続ける」方を選んでしまった。

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君に恋は難しい 乾辰巳 @hosini

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