第24話 眠れぬ夜
ようやく念願が叶うと、クリストファーはベッドの中で口をほころばせた。
明日に備えて早く寝なければいけないのだが、ちっとも眠気が来ない。
ついに『勇者召喚』が出来る。
魔法陣はもう用意されている。あとは、明日の朝、トムに召喚を指示するだけだ。
だから、明日のためにもう寝なければならない。それは分かっている。それでも、興奮しすぎているのか寝付けないのだ。
ここに来るまでには大変だった。
元々、勇者召喚というのは国王である父が仕切っているものだ。王太子でもないただの王子のクリストファーが口を出せるものではない。
最初は召喚に少しだけでも関われる立場である兄に頼んで、父に話を通してもらおうと思った。だが、兄はのらりくらりとかわすだけでちっともお願いを聞いてくれない。挙句の果てに『頼めるのなら自分で頼めばいいだろう』と言われた。
どうやら兄は勇者召喚にはあまり積極的ではないようだ。
もしかしたら召喚は兄の代で止まってしまうかもしれない。そう心配してしまうほど消極的だ。
重臣達に促されて少しはやるかもしれないが、頻度は減るだろう。
それは良くないことだとクリストファーは思っている。だから兄の言う通り、父に交渉した。ついでに、勇者召喚にいい顔をしていないらしい母と兄を魔王領に送るように仕向けた。
魔王領に行って、魔王や魔族達の悪意に触れれば、二人とも分かってくれるはずだ。
クリストファーは、魔族が悪いことを企んでいるとは思っていない。この争いを始めたのは間違いなくヴィシュ王国のはずだ。
ただ、やってしまったものは元には戻せないのだ。魔族達の怒りも収まらないに違いない。だったら、続けるしかない。
それに、魔王領はかなり良い土地のようだ。そんな所に魔族が住んでいるのはクリストファーも許せない。あそこは自分達が支配するべきだ。
ただ、父のやり方には賛成が出来ない。とりあえず適当に勇者を召喚して終わりというのは無責任だ。最後まで面倒は見た方がいい。それを怠ったからたくさんの勇者が殺されたし、何人もの勇者に逃げられたのだ。
そう父に訴えてみた。最初は、自分のやり方に文句があるのかと怒っていた父だったが、必死に説得して、一回だけ試してみる事になったのだ。
この大事なチャンスを無駄にするつもりはない。だからきちんと準備を万端にして挑もうと思っている。
なのに眠れないのだ。
とりあえず、侍女に頼んで眠るのに良いお茶でも淹れてもらうべきだろう。そうして明日の大イベントに備えるのだ。
そう思いながらクリストファーは呼び鈴を鳴らした。
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