第3話 人はなぜ遊園地に行きたがる
ジェットコースターにお化け屋敷、遊園地には人を怖がらせる道具が多い。人はなぜわざわざ怖い思いをするために遊園地に行くのか。それには脳内麻薬が関係している。脳内麻薬は、過度な恐怖、苦痛、ストレスなどから生態を防御するために分泌される。エンドルフィン、ドーパミンなど既に20種類くらいの脳内麻薬が発見されているという。
麻薬というと、大麻やマリファナなどの薬物を思い浮かべるが、脳内麻薬は本当の麻薬ではなく、誰の脳内でも常に分泌されている脳内物質のことである。
その働きは、過度な恐怖や苦痛を受けることで、例えば血圧や心拍数が極端に上がって生命が危険にさらされることを回避するために分泌されている。ところが脳内麻薬は、こうした恐怖や苦痛が去ってもしばらく脳内に留まるため、快感だけが残ることになる。これがジェットコースターに乗った後にスッキリする快感を覚える原因である。
しかし、脳内麻薬も麻薬である以上、軽度な依存症を生じる可能性がある。ゆえに人はしばしば遊園地に怖い思いをしに行きたくなる。人々はこれを時として「病みつきになる」という。ただの病みつき程度で終わればいいが、この依存症は普通の麻薬と同様にどんどんエスカレートし、人々はさらなる強い刺激を求めるようになる。よって遊園地では、絶叫マシンなるものが登場する。お化け屋敷もその残酷度を次第に増してゆく。そうしないと遊園地にはリピーターが来なくなるからである。
ただ、怖いのはこの依存症が遊園地内でとどまっていればいいが、その外にあふれ出してきた場合である。スピード狂の患者は、ジェットコースターでは飽き足らず、高速道路で暴走行為を繰り返すようになる。お化け屋敷依存症の人は、さらに残酷なホラービデオを見るようになり、最後は本当の殺人鬼となってしまう。遊びと現実の境目がつかなくなっていくのである。
今、遊園地依存症にかかっている人、これ以上症状が悪化しないよう節度をもって遊園地で遊んでください。
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