第4話 タイムトラベルは可能か

SF小説やSF映画の定番であるタイムトラベルは本当に可能なのであろうか。多くの物理学者は、いわゆる浦島太郎現象を用いた未来へのタイムトラベルは比較的容易に実現可能としている。その原理は極めて簡単。アインシュタインの相対性理論によれば、光速に近いスピードで飛ぶ宇宙船の中では時間の進み方が遅くなる。そのような宇宙船に乗って3日間ほど宇宙旅行をして地球に帰ってくれば、地球では100年がたっていたということになる。まさに浦島太郎のお話そのものである。実際、飛行機に乗ってロンドンまで旅行した時、乗客の時計は1兆分の1秒くらい遅れるということは、原子時計による計測で証明されている。

ただし、これで本当にタイムトラベルしたことになるのだろうか。映画に出てくるタイムトラベルとは、本当に未来へ行って年老いた自分自身に出会うとか、自分の子や孫に会うというストーリーが描かれる。浦島太郎にはこれはできない。なぜなら、自身は宇宙船に乗って旅行しており、地球に残った別の自分が誰かと結婚して…という類の話ではないからである。浦島太郎現象は、本当のタイムスリップではなく、単に時間の進み具合の差を体験しているだけにすぎない。

本当のタイムトラベルを体験するためには並行宇宙(多世界)の存在が必要となる。これは、今われわれが住む世界とは別のタイムラインで進む世界が多数存在していて、そこには別の自分が住んでいるという考え方である。この解釈を真剣に考えている物理学者もいるが筆者は懐疑的である。

また、過去へのタイムトラベルは不可能と考えられている。例えば戦国時代に行って織田信長に会うとか、氷河期に行ってマンモスを見るとかいうのは無理だというのである。ただ、その時代に出口となるタイムマシンが既に存在していれば過去へのタイムトラベルは可能とする物理学者もいる。仮に、今日タイムマシンが開発されれば、未来から今日まで戻ってくることは可能というわけだ。

ただ、筆者は過去へのタイムトラベルにはさらに懐疑的である。もしそれが可能なら、超未来の超高度な文明時代からの旅行者が既に我々の世界に来ているはずだからである。これに対しては、そうした未来人がたまたま我々の世界にタイムトラベルしていないだけであって可能性は否定できないとする反論があろう。筆者もそれは否定しない。ただ、過去へのタイムトラベルが、遠い未来においてさえ日常的ではないのは間違いない。

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