第8話 事後


※事後です






―――――――!



(ん…?)



――――――――の!



(あ…しんだんだ…)



――――は――なの!



(こえがする…)



「シリアスは嫌いなの!!」


「うぅ…」


「早く起きなさいよ!このバカ!」


「しり…」


「おしり!?何言ってんのバカ!」


「シリアスぅぅ…」


「起きろ!!」


バキッ←顔面を殴られる音

カハッ←吐血する僕


「そうよ!この感じよ!」


「殴ったね!」


「うっさいバカッ!」


バキッ←顔面を再び殴られる音

グフッ←モビルスーツでは無いです


「2度もぶった…!親父にもぶたれたことないのに!」




………




……あれっ?


スベッた?というかツッコミが来ない。

起き上がってメアの顔を見た僕は言葉を失った。いや僕は失えない呪いをかけられているので少し違うが。


「うぇっふ」


と、声が出た。

メアは目を赤く腫らし、元々白い顔は更に白くなり、髪もボサボサだった。端的に言ってしまえば一晩中泣いたような状態だった。


「一晩中、どころじゃ、ない、わよ…!」


メアは嗚咽混じりに、僕の思考を読みながら続ける。どうやら僕は意識を長い間失っていたらしい。


「五日、も、ずっと…。ずっと…!」


「そんなに!?僕は何をしていたんだ?」


「ゆ、夢の、世界で…」


「そっか、寝てたのか…」


道理で身体中がバキバキなわけだ。ずっと寝たきりだった訳だし。めちゃくちゃお腹がすいているのも納得がいった。


「違うわよ!そんな生優しくないわ!」


「うわっ、びっくりした」


急に泣きやみ、大声で抗議するメア。

その目には光彩が戻っている気がした。


「夢の世界で暴れ回ってたんだからぁ!」




――――フリーズ




――――フリーズドライ




――――アサヒスーパードライ




「未成年の飲酒ダメ!絶対!」


「え、よく分かんないんだけど」


「法律で決まってるでしょ!?」


「いや、そっちじゃないから」


「知ってるわよ!」


そう言うメアは何故かとても嬉しそうだ。

語気は強いが、顔は笑っている。


「あんたは夢の世界でたくさん傷つけて回ってたんだから」


「うそ、全然覚えてないや」


「出来れば殺っている!貴様に言われるまでもなくな!」


「ネタ拾ってくれてありがとう」


「ホントに、あんたは多くの女の子を傷つけて回ってたんだから」


「思ってたんと違う」


女の子だって?そんな非道な事をしていたのか?記憶がないと言ってもそんな無責任な事が許される筈もない。あ、夢か。


「あんた、会う女の子全員を、その、ね?す、好きになっていって…。私なんかアウトオブ眼中で…。なんで私だけダメなのよ!」


「分かってるじゃん夢の僕」


「本当に分かってる!?あんた、あの世界じゃ勇者であり、王子様なんだからね!」


「ひどい夢だな」


「最悪よね!悪夢よね!あんただけの夢だったらよかったのに…!」


どういうことだ?


「は?僕の夢だろ?」


「違うわよ!私の故郷、正確にはよ」


「ウェイト ア ミニッツ」


待て待て待て、整理しろ。

状況を分析して、じっくりと冷静に考えてみよう。


《死んだけど女の子襲って生き返った》

イケるっ!


「あれ!? やたらと単純!?」


「そのネタは多方面から怒られる上にマニアック過ぎるので却下よ」


「チッ」


「ねぇ!今舌打ちしたよね!?」


「という事は僕はメアにとって王子様、つまり上の立場の人だよね?」


「話をすり替えんな!舌打ちしたよね!?」


「あ、王子様に向かって何その態度」


「は!?私にマウント取ろうとしてるの!?」


「いやー?別に、王子様に楯突いていいのかなぁーって思っただけだよ」



ガチャ←マイマザー登場


「今日晩飯抜きね」


バタン←マイマザー退場



「……」


「私に楯突いていいの?」


「申し訳ございませんでした」


「ふふっ、分かればいいのよ。分かれば」


メアを敵にする=全人類を敵に回すと同義なのだ。魔法少女的な不思議パワーで洗脳し操るヤバイ奴という事を忘れていた。てか五日間寝ていた僕の晩御飯抜きは実質死刑扱いだろ。


「で、女の子を傷つけたとはえっと、具体的な事しちゃったりしてますか僕」


「んー。どうだろうねー」


ニヤニヤして答えるメア。

コイツわざとしらばっくれてるな。


まぁ、笑ってるという事はそんなに大変なことになってはいないのだろう。


つまりは



※事後じゃないです


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