第3話 また明日に
※また明日に
「よろしくお願いします」
爽やかな笑顔。シルクのような金髪。美しい音色の声は弾んでいた。その一挙一動にクラスの全員は魅了されていた。
———僕以外は
黒板に書かれた夢野芽愛の字。当て字にしては酷い。なんかこう、もっと
「
ポツリと出した声。静まり返っていた教室には十分響く音量だった。漢字が分からなくて良かったよ、先生。
「ふふっ、読者にはバレてるわよ?」
「あ、お巡りさん。あの人です」
「は?!せっかく注意したのに!」
「......(他人のフリ)」
ああ、やってしまった。本音がどうしても出てしまう。ザワザワ ザワザワ とカイジ並に動揺するクラスメートたち。その目は僕とメアを交互に向けられる。
僕はそんな周りを気にせず、あの人を探す。
「「あ」」
目があった。
そして、
逸らされた。
初恋の人に完全に逸らされました。階段引きずられる所だけだったらまだ弁明出来たのに!oh......ジーザス!
「ジーー、ザスッ!」
「うるさいぞ、席につけ」
「先生!違うんです!あいつが!」
「そうか、お前ら知り合いか。じゃあ夢野、あいつの隣に座ってくれ」
「ジーー、ザスゥ!」
駄目だ、全然取り合ってくれない。僕の方にモデル歩きでメアがやってくる。華麗に僕の足をかかとで潰しながら、ターンをキメて席に着く。超痛い。
「おら、話やめろー」
憎き中年オヤジ担任教師が、声を飛ばす。
「授業始めるぞ、瑛太号令」
きりーつ、と僕の親友の
れーい。で僕は礼をする
とでも思っていたのか?
そんな精神状態ではないんだ。
僕はキョロキョロとキョロちゃんして、ダバダバダーとダバダバしてるんだ。
隣のメアはというと、既に座って古典の準備をしている。いつの間にそんな物を手に入れたんだ?
ん?
再びキョロちゃんすると、立っているのは僕だけだった。恥ずい。
慌てて座って、現代文を出して疑問を投げつけた。豪速球170kmでな。
「メア、その準備の良さはなんだ」
「学生だもん。当たり前でしょ?」
「古典を忘れた俺は学生じゃないのか」
「ええ、ゴミね」
まだ何も知らないクラスメートにこの素性をバラしてやると決意。ふざけんな
「つーか、転校生なんて...。何をしたんだよ」
「精神操作でちょっとね」
「っ!メア!!おまえ...!!」
「おい!ジーザス野郎!うるさいぞ!」
ジーザス野郎とは僕の事か。中年オヤジ教師に叱られた。良いネーミングセンスしてんじゃんか。
「...これ以上、いや、必要以上にすんなよな」
「...分かったわよ。善処するわ」
これ以上メア犠牲者を増やしてたまるものか。しかしながら、中年オヤ... 松下(本名)に叱られてしまったので、もうメアとは話せない。
———それならば
初恋の人の話をしよう。
名前は
僕の初恋の人だ。
中学時代は勉強ばっかりだったし、記憶もないし、好きな人なんていなかった。
門川高校の合格発表の時、嬉しさのあまり号泣している僕を見て、ハンカチを渡してくれたのが彼女だった。彼女からは、落ちて泣いているように見えたらしい。
知り合って(出会っての方が正しい)ひと月も経たずに告ってしまったのは完全に失態だ。
余談だか、瑛太とは中学からの親友で、姫乃さんと仲の良い
キーンコーンカーンコーン
「っと、チャイムか。会田号令!」
きりーつ、で慌てて席を立つ。
れーい。で礼をする。4限が終わった。
「あ、さっき言ってた会田君達はしっかり出てきてラブコメするから安心してね♡」
誰に言ってんだろうとたまに思うが、深く考えようとすると頭の奥から
゛お前はメタ発言するな゛
って声が聞こえてくるのでやめておく。
「ちなみにぃ...
もう帰れるわよね!(満面の笑み)」
「いや、帰れねぇから」
「えー、チャイム鳴ったじゃない」
あからさまにガッカリするメア
そう、まだ学校は始まったばかりだ。
だから、
※また明日にじゃないです
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