第2話 転校生

※転校生です


——県立門川高等学校けんりつかどかわこうとうがっこう


昭和29年に設立された門川グループの高校。今までエスカレーター式だった私立門川学園からも独立した県の認めた公立校ということで有名校であり、進学校である。


僕は門川高校に入学するべく、中学入った当初から記憶を無くす約2年間、猛勉強した。

その甲斐あって記憶を無くしていた1年間という長いブランクも乗り越え、無事に入学することが出来た。


「前置き長い小説は嫌われるわよ」


ええい、うるさい。モノローグくらい好きに語らせてくれ。


『 記憶を無くしていた1年間 』と、軽く言ってはいるが僕にとって無に等しい時間ながらも、僕の人生に影響を与えてくる代物だ。


何があったのか知らないまま、その責任だけ今の僕は背負っている。まるで、冤罪をかけられているような感覚だ。

まずいな。

こんな事話している場合ではないのだよ。

ワトソン君。


「ワトソンくぅー⤴ん⤵」


おっと、気持ち悪い声が出てしまった。

チラリと、ドン引きしているであろう事の元凶となる人物に目を向ける。

いや、゛睨み付けた゛の方が正しい。


「む、なによ。その目は」


「チッ」


「今、舌打ちした!?わ、私だって好きであんたにそんな力与えた訳じゃないの!」


「じゃ、外せよ。こんな力」


「無理よ、あんたが必要なのよ。」


残念ながらね、と言葉を続けながら前を歩くメア。視界の端に特徴的な時計台がカットインしてきた。あと5分も掛からずで学校に着くだろう。


「あー、良くない良くない。どうやって学校に説明すんだよ」


「精神操作でちょちょいのちょいよ」


「ちょちょいのちょいて...

——僕にも掛けてるのかい?」


「秘密よ」


クスッと笑い、見えてきた校門に走っていくメア。不覚にもドキッとしてしまった自分がいる。



●←ドキッとしてしまった自分




○○ ○ ←冷静な自分達

○○ ● ○

○ ○




○○ ○

○○ ○ ○ ←討伐完了

○ ○


「ふぅ、危な」


何とか抑え込んだようだ。

あんな性格破綻者は絶対に駄目だ。

そう、僕にはもうあの子が——


キーンコーンカーンコーン


二限終了のチャイムが鳴った。


状況確認。

メア ——いない

生徒達 ——休み時間

僕 ——責任を負い自主退学に追い込まれる


「もう、おしまいだぁ!!」


~完~


「何勝手に終わらせてんの!まだまだ出てきてないキャラとか、バトルシーンとかやってないじゃない!ていうかラブコメなのに、今のところコメディしかないのよ!?」


「神様、まだメアがいるよ。助けて」


「もう!今は私が神様代理よ!」


ずーるずーる ずーるずーる


地面に仰向けになったまま引きずられる。

視界には美しい青空と舞い散る桜。

摩擦で熱くなってきた背中と共に校舎へ入っていく僕。


お、下駄箱まで来た。

冷たいタイルが気持ちいい。

見えそうで見えないスカートの中を気にしながら、ふと立ち止まったメアに集中する。

何か考えているらしい。短い逡巡のあと、メアは大きく足を踏み出し


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」


こいつ!階段で引きずりやがった!


「早く立ちなさいよ、変態」


「くっ、スカートの中を気にしていたのをばれてしまっていたか!」


「!!ど、どこ見てんの!変態!最低!」


おっと、どうやらバレていなかったらしい。

本音しか言えないので隠せないが、黙っていれば良かった。


バタッ、ドサドサドサッ


「やべっ、見られた!」


立ち上がって見えた先にはあの子が。


よりによってあの子が。


あの子が。


「待って!」


走り出したあの子を追いかける。後ろの妖精も置いてって。だってあの子は僕の、



「...初恋の人だから......っ、」



中庭を抜け、体育館に入るモールに入る所でやっと追いついた。腕を掴んでいた。


「や!はなしてくださいっ!」


「だめだ、離さない」


「っ!」


睨みつけられた。完全に嫌われてしまった。静寂の中、チャイムが響く。三限目が始まったようだが、関係ない。


「聞いてくれ。頼む」


目に涙を溜め、全力で首を横に振る彼女。

が、無視して話を続ける。


「俺も信じられないが、本当の話なんだ。今から話すのは大切の話なんだ。頼む。聞いてくれ」


本音しか言えないのだから。


本音をぶつけるしかないんだ。


「君が、好きだ」


俯いている彼女。

もう、言葉はとまらない。


「あのコスプレみたいな奴は、異世界人なんだ。とんでもないことをして来る。だから何としてでも君を、守りたいんだ。」


「...意味、わかんない」


スッ、と僕の横を抜けて去っていく彼女。

なにをしたかったんだろう。僕は。

初恋の子にあんな事して、あんな勢いで告白して、最低だ。でも、まぁ



「ですよねー!笑」


って声は届いてなかったのは幸いだった。



メアの事を忘れていた。クラスにもどるべきなのだが、彼女とは同じクラスなので戻ったら会ってしまう。そんな葛藤が渦巻く。


とりあえず、足を動かす。クラスに戻らなければ。現実から逃げ出したらそれこそ、メアの思うつぼだろう。これ以上メア犠牲者を増やしてはいけない。そんな思いが足を加速させる。


教室に着いた。中がざわついている。慌ててドアを開けたが遅かった。


「おい、お前。遅刻だぞ。早く座れ。」


黒板の前に金髪美少女が立っている。

うちの制服を来て、カバンまで持って。

ゆっくりと一礼してから口を開く。


「皆さん、初めまして。夢の世界から来ました、夢野ゆめの芽愛メアです。よろしくお願いします」


遅かった。


お前は違う。お前は



※転校生じゃないです

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