6 四十川の進化
炎のダメージを負う四十川と鮎原。
一方さしてダメージのない朝霧は、余裕そうにぬかるみの中をゆっくりと、四十川たちに近づいていく。
「邪魔なアガルトは戦えぬようだし、放っておこう。さあて残るはキミたちだね」
2人とも密接しそばで構えている四十川と鮎原に対して、朝霧は両手で四角形を作り、「レーベン!」と唱えた。
するとやはり、四十川と鮎原は、朝霧の作り出す見えない空間に閉じ込められてしまった。
「うわ! あの時見たこの技か!」
四十川は必死に内部から空間を殴り蹴るが、それはビクともしない。
「クソーどうなってやがんだ! セコい技使いやがって許さん!」
四十川は悪態をつきながら空間を殴り続けるが、なしのつぶてだ。
一方鮎原は何かを察したように、印を結びとっさに九字を唱えた。
「 臨・兵・闘・者・皆・陣・烈……」
「そうはさせるか! ファイエル!」
朝霧の作り出した見えない空間の中に、小さな爆発が起こった。
空間の中の酸素を爆発させたのだ。
一瞬の熱さとともに、2人を酸欠が襲った。
いくらアマトとはいえ、酸素がなければどうしようもないのだ。
「ガハッ…… ヒー、ヒー! く、くそったりゃぁ……」
「……在・前!」
このことを予期し、空間内が酸欠になる前に大きく息を吸い込み印を崩さなかった鮎原は、苦しい息の中で九字の残りを唱えた。
「ぐ! 何!」
幻覚が朝霧を襲う。
――彼が見ている幻覚。
それはかつて、彼が全く歯が立たなかったアマト。
当時彼は「ファイエル」の技しか発現していなかったが、そんな問題ではなく、彼はそのアマトに完膚なきまでに叩きのめされた。
彼は相手の姿すらほとんど確認できぬまま倒されてしまった。
その相手の姿。かすかに覚えているのは、全身を覆う紅いボディと、黒く包まれたマスク。そしてその後ろから、まるでポニーテールのように伸びる髪のようなもの。
それが誰かに似ているような気がしながらも、
幻覚に襲われた朝霧は空間技を解いてしまった。
「よくやったぞマナ! さて……。気は進まないが、このアマトをブチのめすとするかい!」
「そうだよ。悪いアマトは倒さなきゃならない……。行くよ、マコちゃん!」
「おう!」
四十川と鮎原は朝霧に果敢に立ち向かっていく。
最も四十川は、同じ正義の味方であるはずのアマトと戦うことに少々気が引けて が。
「オラあ!」
四十川は必死に蹴りにパンチを繰り出すが、湿地故のぬかるみと、先ほど食らった酸欠で力が入らない。
「ハハハ。なんだいそれは?」
「マコちゃん! 援護するよ! 臨・兵・闘……」
「そうはさせるか! ファイエル!」
朝霧は鮎原の周りの草木に火をつける。熱と煙で鮎原はせき込んでしまう。
「あアツ! ゲ、ゲホゲホっ」
「はは! これで妙な技も使えまい!」
2対1ながらも、圧倒的に不利な鮎原と四十川。
しかしそのとき、アイアンサットが特殊車両で到着した。
「……? あそこで戦っているのは……?」
「阿南隊長! あれはアマトです! 我々は通報通り、アガルトを叩くべきです!」
夏風に髪をなびかせながら、女性隊員の朝比奈が言う。
「そ、そうだね……。二人ともヘルメットを装着! アガルトは…… ! いた!」
四十川達の闘いから数百㍍。アンドレアと赤城の2人のアガルトは、炎のダメージからか湿地の中で動かずにいる。
「四十川さんたちがやってくれたのか……? しかし彼女たちは今戦っている! なぜアマト同士戦っているかはわからないけど……。僕たちはアガルトを叩こう!」
そう言うとヘルメットと装備を身に着け、銀色のアイアンサットは湿地の中をアガルト目指して走っていった。
一方、朝霧の攻撃により負傷したアガルト二人。
ダメージはそれほど深刻ではないが、憎きアマト同士が戦っている以上、回復を待ちながら2人はそれを見守っていた。
「アマト同士戦うとは……。まあ、話には聞いたことはありますが、この目で見るには初めてですよ」
アンドレアは言いながら不敵に笑う。
「やはりアマトはおろかな存在。お互いに潰し合い、憎み合う。アマトこそ本当の人類の敵……」
赤城はそう言うが、アンドレアは複雑な表情で闘いを見守る。そして決意したように、体を起こした。
「さて……加勢しますか」
「加勢!? 何を言っているんです?」
「勿論彼女たち2人です。我々も一緒に戦えば、あの妙な技を使うアマトも倒せるのでは?」
「な、何を言っているのですかアンドレア様! 敵であるアマトに加勢するなど…… あってはならない!」
「しかし、敵の敵は味方とも言います。あの朝霧とか言うアマトは、どう考えても許される存在ではない。……気に食わないのですよ。そのようなアマトなら、協力して倒してみたくはありませんか?」
「……な、なにをバカな! 私は反対です! あの女アマト2人だって、どうせろくでもないアマトに違いないんだ!」
「フ、そうですか……。……しょうがない。では私一人で行ってきますよ。貴方は自由にするといい」
「そんな! アンドレア様!」
そんなことを2人のアガルトが話しているとき――
彼らは背後から銃撃を受けた。
「グうう! な、なんだ!」
「この銃弾…… 鉛の拳銃弾……。アイアンサットとか言うやつですか!?」
2体のアガルトが横を向くと、
アイアンサット3人が短機関銃で2人のアガルトを銃撃している。
「アガルト……! アマトたちの! 四十川さんたちの邪魔をさせはしない!」
アンドレアの気も知らず、アイアンサットはアガルトのみ狙いを定める。
「邪魔をしないでください! 私は今から、あの四十川とかいう女たちに加勢に行くのですから!」
「……え!」
それを聞いて隊長の阿南は手を止めた。
「どういうことだ! 四十川さんたちを助けるっていうのか!?」
「結果的にはそうなります。あの、彼女たちが戦っているアマト。まともではありません。そうだ、貴方も私と一緒に戦いますか?」
アンドレアはクックっと笑う。
「四十川さんに加勢……、よ、よし!」
そう阿南が言ったところで、2人の隊員は当然止めに入る。
「ちょちょちょっと!! バカ言わないでくださいよ隊長!」
「そうです! 知らないわけではないでしょう! 我々はアマトに対する攻撃許可は出ていません!」
「そんなこと言っても! あのアマトはきっと倒さなきゃいけない! それに、攻撃がダメなら攻撃はせず援護だけすればいい。というわけで、朝比奈くん、相田くん、君たちはこの2体のアガルトを頼むよ!」
「ああっ! 隊長!」
2人の制止も聞かず、隊長の阿南はアマト3人の方へ駆けていった。
「ふん!」
「ぐへっ!」
妙な技だけでなく、素の強さまで2人を凌駕する朝霧。
最初は相手がアマトだからと戸惑っていた四十川だが、途中からはそうも言っておられず、思いっきり本気を出していた。
「そらそらあ! あたしのスピードについてこられるかなぁ!?」
四十川は3人の中で唯一優っているスピードで朝霧を翻弄しようとする。
だが四十川が横に回り込み殴ろうとしたとき、容易に腕をつかまれ、そしてぬかるみに叩きつけられた。
「ぐべ!」
「フン! 弱いくせに馬鹿みたいに立ち向かってきて……。キミはアマトとしても、そして頭も弱いのかな?」
「フン! クソ野郎が! いまだマナ!」
「うん! いくよ! 臨・兵・闘……」
鮎原は以前、朝霧に幻術を見せたあの技を発動しようとした。
しかしそれはかなわない。
「バカだねえ! そんな発動バレバレの技、なんとでも対処しようがあるよ」
朝霧は両手で小さな四角を作り、鮎原の顔に対してだけ、見えない空間「レーベン」を作った。
鮎原はまともに息をすることも出来ず、言葉すら発せられなくその場に倒れる。
「マナぁ! くそ! オラァ!」
四十川はレーベンの技に集中している朝霧に起き上がりざま思い切り蹴りを放った。
技に集中していたせいか、朝霧はそれをまともに喰らい、鮎原の顔を覆っていた見えない空間もその瞬間に解ける。
「グッ……。2人がかりだと流石に面倒だなあ……」
そのとき、銀色に輝くアイアンサット隊長、阿南が三人の下に走ってきた。
それをみた朝霧はフフフと笑う。
「おや? 警察の対アマト部隊、アイアンサットのおでましかい? 2人足りないようだけど、まあいいか。この状況で僕に加勢してくれるなんて嬉しいじゃないか……!」
だが阿南は足を止め、持っていた銀に輝く刀で真っすぐ朝霧を狙い定める。
「何を言っている! 僕が戦うのは貴様、悪のアマトだ!」
その瞬間アマト3人は面食らった。
特に砂霧は怪訝な、驚いた調子で阿南に反論する。
「な、何を言っているんだキミは! 警察だろうが軍だろうが、アマトを攻撃する権限はない! それは犯罪なんだぞ! 法で禁止されているんだ! わかっているのか!」
「わかっているとも……。しかし、だからなんだ!」
「何を言っている……。仮に警察だろうが軍だろうが、一般人だろうがアガルトを攻撃、あまつさえ殺害するのは法で認められている! そんなキミたち警察がなぜ! アガルトでなく、アマトであるボクと戦おうとする!」
「わからないのか! 貴様は明らかに“悪”だからだ! 僕たち…… いや、僕は、悪を絶対許さない!」
――2人が会話している中、四十川が鮎原に尋ねる。
「えっアガルトってそんな、国民の、人類の敵みたいになってんのか!?」
「そうだよ。そしてアマトはまた別で……。警察や軍がアマトを攻撃することは法で禁止されてるし、一般人だって正当防衛じゃなきゃあアマトを殺したりしたら、この国では犯罪だよ。……まあそんな事例、過去に一度もないけど」
「は、はえ~」
「でもアマト同士の闘いは別でね。基本的にはアマトとアマトが戦おうと、法的には何の問題もないんだよ。もちろんどちらかが死んじゃってもね」
「……へえ~。なんだかなあ……。変な世界に来ちまったもんだ……」
――四十川が何とも言えない気持ちでいると、
銀色に輝くアイアンサット隊長と朝霧の会話は続いていた。
「愚かだねえ……。ほかの2人が来ていないところを見ると、おそらくキミは命令違反を犯している。というか法令違反だろう?」
「……まだギリギリって感じかな。――四十川さん! 鮎原さん!」
「……え!」
急に呼ばれ2人はビックリする。
「お二人の中で銃、特にサブマシンガンに慣れている方はいますか?」
「……いやーあたしは銃すら撃ったことねよ」
「……わたしはできるよ。今までいろいろ旅していたから、それくらい!」
「では鮎原さんにはサブマシンガンを、四十川さんにはこの刀を!」
そういうとその2つを、今言った2人阿南には投げつけた。
「おとっと! こ、これで戦えってか!? 刀とかよくわからんが、んまあ銃よりましだな!」
「おお、警察のサブマシンガンだよ! 一度ぶっ放してみたかったんだよね! 弾もまだまだ残ってる! いっちょやろうかな!」
阿南は持っていた武器をアマト2人に託し、自身は丸腰となる。
当然朝霧は怪訝な雰囲気で尋ねる。
「どういうことだい……? 大切な武器を、あんなちゃらんぽらん共に預けてしまって。自分は戦わないのかな?」
「……そうだ。恥ずかしい話、僕一人でキミなんかにかないっこない。それよりあの“正義”のアマトに武器をゆだねて、僕は憧れのアマトの闘いをこの目でしかと見て、できれば研究させてもらうよ」
「……なーにが“正義”だ。それにアマトなどに憧がれるなんて。アマトとしての苦労を知らない、愚か者の人間の発言だねえ」
「苦労――」
「――おっと話しはそこまでだ!」
人間とアマトの会話に、真っ朱な体の四十川が割って入った。
そして躊躇なく刀で斬りつける。
が、素人の斬撃など、朝霧には通用しない。
「ふふふ。こんなもの片手で十分だね」
朝霧は斬りかかったった四十川の斬撃を難なく避け、その刀の峰をなんなく掴むと、その刀を四十川から奪いとってしまった。
「あっコラぁ! ドロボー!」
「フン、元々キミのではないだろ? というわけで、存分にこれは使わせてもらうよ」
「――刀は銃にかなわないよ! くらえ!」
鮎原は朝霧向けてサブマシンガンをフルオートでぶっぱなした。
1秒間に何発も放たれる鉛玉。しかし朝霧はそれをよけもせず、時折奪った刀で受け止めたりしていた。
「ウソ! ぜ、全然効いていて無くない?」
刀の峰で受け止めた弾以外は、すべて朝霧に当たっている。
だが彼はそれをもろともしない。
「ハハハ。鉄なんかより断然柔らかい鉛の弾なんて、ボクの身体には効かないよ。……それにしてもこの刀はすごい。いくら鉛の拳銃弾とはいえ、すべて峰ではじいてしまった。……ちょうど武器とかほしかったんだよなあ。これ、貰っていいかな?」
「いいわけねえだろクソボケ!」
四十川は殴り掛かるが、朝霧の持つその刀で出っ張った胸を思い切り斬られてしまう。
「がはっ!」
四十川は斬られた胸の部分から、あまりにも紅い血を流す。
幸い、変身して少し縮んでいるでいるとはいえ、それでも大きな胸のおかげで心臓には斬撃は届かなかった。最もアマトの心臓なんて普通の位置にあるんか? 四十川は痛みの中疑問に思った。
「さあて、次はキミの武器でも奪うとするかな?」
朝霧は鮎原にじりじりと近寄る。もちろん彼女は鉛弾を乱射するが、そんな物は朝霧には効きはしない。刀で一閃、朝霧は鮎原の持っているサブマシンガンをその手から弾き飛ばし、それを拾うと鮎原向けて乱射した。
「きゃああ!」
鮎原は鉛玉の乱射を受ける。朝霧と違い、これは相当効いているようだ。
「ははは、こんな銃撃でそんなにダメージを食らうとはね。……あれ?」
その時、唐突に弾が出なくなった。弾切れである。
「……サブマシンガンってのも意外に役に立たないな。こんなものいらないや。持ち主に返すよ。はい」
朝霧は軽々と50㍍ほど、遠くで見ている阿南の方へサブマシンを投げた。
戦いを見て呆然としている阿南のすぐそば、ぬかるみへとそれは落下し、激しい音とともに泥の中に埋まってしまった。
「そ、そんな……。ぼ、僕は二人を助けるどころか、余計なことをしてしまったのか……」
途方に暮れ絶望する阿南。
その彼の視線の先、四十川は朝霧が奪った刀で無残にも何度も斬りつけられていた。
「ぎゃああ!」
「フン! アマトのくせに血なんか流して情けないねえ!」
四十川は朱いアマトの身体から、濃い紅い血を流しつづける。
そして四十川にとどめをさすかのように、その刀が胸に突き付けられたとき、
鮎原は大きな声で九字を唱えた。
「マコちゃんも巻き込んじゃうかもしれないけど……しょうがない! 急いでいくよ! 臨・兵・闘……」
しかしそのとき、朝霧は四十川に突き付けられていた刀を素早く持ち変えると、思い切り鮎原の方にそれを投げた。
そしてみごと、それは鮎原の右足を貫いた。
「きゃ、きゃああああああああああああ!」
痛みのあまり、その場に倒れる鮎原。
朝霧は傷だらけでほとんど動けない四十川を無視し、ゆっくりと鮎原に近づいていく。
「スゴイねえ。まさかアマトの身体までつらぬく刀とは。いったいどんな素材でできているんだろ? それともボクの投擲力がすごいのかな?」
言いながら朝霧は鮎原の下へ寄ると、悲痛なうめきをあげる彼女の足からそれを思い切り引き抜いた。
アマトも生物。刀を引き抜かれた足からは、人間のものより濃い血が噴き出る。
「きゃ、ぎゃあああ!!!」
「ハハハ。痛そうだねえ。キミは足をやられた。もうまともに動けまい。……さて、次は真っ朱で胸のデカいキミの番だ。折角いただいたこの刀。キミにも存分に使わせてもらおう」
――横で見ている、阿南は絶望した。
自分が余計なことをしたせいで、アマト二人は今、危機に瀕している。
だからといって、丸腰でただの人間に毛が生えた程度の自分に何もできるはずがない。
阿南は恐怖し、自分でもどうしようもなく、後ずさりしていた。
そしてああ義理は踵を返し、その阿南に、ゆっくりと迫っていった。
「アイアンサット隊長の阿南くんだっけ? 素敵な武器ををありがとう。さあ、キミもこの刀で突いてあげようか? その銀色のスーツも、ただの強化素材だろう? どこまで耐えれるか、やってみようか?」
朝霧は阿南に対し突きの姿勢をとった。恐怖で後ずさりする阿南。阿南は死を覚悟した。
……いや、できなかった。怖かった。何もできなかった。しかし刃は阿南向けて真っすぐ突き立てられる……
「あ、あああ……、や、やめてくれ……」
「ハハ、命乞いかい? まあそれが普通だね。でもボクにとって命乞いは心地いいのさ。恐怖に怯える顔、仕草…… どれもそそるねえ……」
「あ、あああああああああああ!」
阿南が恐怖に絶叫したとき、クックと笑いながら朝霧は刀をぶらりと下ろした。そして高笑いする。
「ハーッハッハ! ウソに決まってるじゃないか! 警察だろうとアイアンサットだろうと、殺したり傷付けたりしたらしれは重罪だ。そんなことするわけないだろう?」
「あ、あああ……」
阿南は安堵した。本当に安堵した。自分は死ぬことはない。これ以上ない安堵。
しかし同時に、正義の味方を志した自分が情けなく、あまりにも情けなく怯えてしまったことに絶望も覚えた。そしてそこで、四十川が間に割って入った。
「……おいテメエ、さっきから屑みたいなことばかりしやがって……」
「なんだキミ、まだ動けたのか。でも傷だらけで血だらけじゃないか。そんなキミに何ができるっていうんだい?」
「……わからねえ」
四十川は天を拝んだ。
「あたしはアマトになったばかりだし、自分に何ができるか、どこまでできるかまだ分からねえ……。でも……」
「でも?」
「でもてめえは許さねえ! それだけははっきりわかる! マナを傷つけ、アイアンサットまで愚弄して……」
その時、四十川の左手の甲の黒い石が紅く光った。
「絶対に許さねえええええええええ!」
四十川は天高くそう叫んだ。すると朱いオーラが彼女を包んだ。
突然のことで面食らう朝霧。
「な、なんだ!? 何が起こって…… え!?」
――朱いオーラが消えた瞬間、四十川は、彼女はその姿を変えていた。
先ほどまでの全身朱い身体には、黒いラインがいくつも走り、そして人間のままだったその顔は、完全に人のものでなくなっていた。
黒い仮面のような顔に、四十川特有の斜めにキッと決まった前髪、そして仮面の後ろからはやはり四十川特有のポニーテール。
……しかし、アマトである故それは、髪の毛とは言えぬほどがっしりし、吹きすさぶ風になびくこともなかった。
「……な、なんだ! 姿を変えた!?」
「……す、すごい! 四十川さん!」
――朝霧と阿南が驚く中、四十川は自分の身体を見つめる。体中に走る縦の黒ライン。そして触ってわかる、人のものではないその顔。
そして左手の甲を見ると、心なしか黒い石が大きくなっているような気がした。
「ナハハ……」
四十川は全身人でなくなった見で自分を笑う。
「ハーッハッハ! こりゃどう見てもパワーアップ! ぜってーそうだ! よく見りゃ全身の傷も消えてんじゃん! こいつぁいけるぜ!」
「うぐ……、で、でも姿が変わっただけだ! だからと言ってボクに敵うはずがない!」
「どーかな! やってみなきゃわかんねえ! ……いくぞ糞野郎! 新生アルダマンがテメーの相手だ!」
姿を変え、四十川は本当にパワーアップしたのか?!
戦いは第2ラウンドに突入する!
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