第19話 北上……そして……
……コンビナートの正門に着く……
門に掛かった鍵を解錠し、相変わらずの重い門を動かす。
バイクが通れるだけの隙間を開けてバイクを門外に出す。
そして身体全体を使って閉門する。
施錠を確認して、バイクに跨がり、工場を出る。
昨日は分かりにくかったが、工場付近の道路はツギハギ的に、舗装が修繕されていた。
こんもりとアスファルトが盛られて……あまり上手な施工とはいえない。
僕には思い当たるフシがある……
サクマさんの言葉……
原油から精製できる製品……
たしかアスファルトもあった筈だ……
これは、この工場の人達が練習がてら行った修繕工事だろう。
昨日は薄暗くて分からなかったが、朝日に照らされた今は、新しいアスファルトが敷かれているのが分かる。
バイクのサスペンションで衝撃を丸められた適度な凹凸を尻に感じながら、僕は国道23号を少し北上し直ぐに左折する。
先程のサクマさんとの会話から、僕は一旦ある程度内陸に向かった後、G県に向かうルートを取った。
先ずは、内陸に行きたい……
海岸線の道は、河川が下流になる為幅が広い、ついては橋も大型のモノが多い……当然内陸に行けば行くほど上流になり河川の幅も狭まる。
橋を渡らない訳にはいかないが……NスパーランドやPメッセNを通るI湾岸自動車道に敷設されている大型の斜張橋・桁橋を通過する事は無い。
G県を通り、迂回してA県に入る事の利点の一つだ。
僕は走りながら、もう一度迂回ルートの利点を考える……
1、安全性(大型の橋を渡らないで済む)
2、迂回ルートの方が行程を変更する際に、順路変更が容易(元・高速道路を使用すれば、前方の高速が進行不可となった場合、容易なルートの変更は難しい、方向転換して高速の降り口まで戻るしかない……)
良く良く考えれば、1の理由よりも2の方が探索には効果的で有る事が解る。
また、高速道路は基本道路両側は遮蔽されており、周囲を観る事は出来ない……探索にはおいてこれは望ましい事ではなかった。
Y市内は比較的走り易く、順調に距離を稼げる。
このメイン道路は結構な距離を修繕してあった……工場から離れる程に、施工が上手になっているのが自分の尻で解る。
しかし快適な道路状況も暫くしたら、元の凸凹道に戻った。
サクマさんたちの道路補修はここ迄のようだ……
道路には所々雑草が伸び育ち……
舗装にひび割れが目立つ……これを修繕できるのも、アスファルトだ……だけど、今はその人員が居ない。
材料は有っても使う人材が居ない。
1号線をするするを北上しているとKw市に入り
道路はグラベルとターマックの混在でスタンディングで走破する事が多くなる。
もう、河川に行き当たる事が地図から解る……E弁川だ……N島を形成する、K曽川とE斐川の手前に位置する川だ……
前者の2河川より小型、川幅も下流で100m程度だが中流では大部分で中洲が形成され、それほどの川幅は無かった。
……『まぁ、大丈夫……』と自分に言い聞かせて橋を渡る……100mちょいの橋を、10秒程度で通過する……それほど飛ばしていない、オリンピックの100m走者程度だ。
……橋を通過後、交差点を左折して後は道なりに北上する……片側二車線の道は快適で……所々クラックが有ったが、二車線あるお陰で避けて通過出来る。
午前中でkw東ICを通過し、地図上では右側にE斐川を見ながら、G県に向かう。
そして僕は次第に先程までの橋の恐怖心よりも、A県に向かう迄にこれ程遠回りをしている事を疎ましく考え出した……
まだ行程は半分以上残っている……
右側の河川を渡れば、直ぐにA県に入れる……
そう思うとむずむずと右側に並ぶ名も知らぬ橋が気になってくる。
……市街地を抜け、元々は田畑だったらしい荒地の中を走ると、野球場が右手に見える……
そこから少し走り、左側に広い駐車場を見つける、昔は店舗があったのだろうか???今はあばら家と倒壊したバラックにしか見えない。
その駐車場の真ん中にバイクを停める。
……小型PCのMAPを広域に変更し橋の状況を見る……
もう少し北上した場所に、E斐川・N良川・K曽川が交わる箇所に、河川を渡す橋が三つ架かっている……渡ればA県A西市に入れる、そこからk部郡K江町~東MH自動車道の付近を走って行けばN古屋市の中心に行ける。
……決めた……この橋を渡る……遠回りは止める……
バイクの出発させる為右手親指でセルボタンを押す……ストトト……と迫力に欠ける排気音が鳴る。
先程までエンジンが動いていたのだから、アイドリングは造作もなく安定する。
さて先ずは、右折する交差点までこのまま北上……約10km程度か……
相変わらずの快適なツーリングは、『ヤツら』も出てこず退屈な位だ。
庁舎で遭った様な『ヤツら』を見ることもない……
あのKURO.E の白衣を着たあの『ヤツら』は何だったのだろう……アレ以外、あの様な変異を起こした『ヤツら』に会う事が無い……まぁ、あんな『ヤツら』が増えたら困るんだが……あれは突然変異なのか……
そんな事を考えて15分も走れば、右折の交差点まで着いた右に曲がり……橋に向かう。
■川と陸との配置図はこんな感じ
E斐川 N良川 K曽川
陸 川川 陸道陸 川川 陸道陸 川川 陸
陸 川川 陸道陸 川川 陸道陸 川川 陸
僕道橋橋橋道道道橋橋橋橋道道道橋橋橋橋道A県
陸 川川 陸道陸 川川 陸道陸 川川 陸
陸 川川 陸道陸 川川 陸道陸 川川 陸
……パッと見、橋は劣化していない様に見え、破損している箇所も見受けられなかった。
橋はこれを含んで3橋架かっているが、同様の劣化具合なら渡るのには問題なさそうだ。
素人目でなんの確証も無い訳だが……
緩やかな上り坂をバイクで走る....
橋には、破損していたり橋脇に停止したままの車両を除き、走るのに邪魔な物体は無かった……幸いその車両も橋を完全に塞ぐ程、密集している場所も無く僕は巡航速度のままE斐川に架かる橋を渡りきる事が出来た……
厳密に言えばここはG県k津市……E斐川・N良川に挟まれた陸地……
道路は……
南、つまり下流に向かう道と、北、G県に市街地に向かう道がある、そしてどちらにも行かず真っ直ぐに走れば……
残りの2橋を渡ってA県に入るのだ……
僕は、残りの2橋を渡るため真っ直ぐ進む……この調子なら、昼までにA県に入れる……
2つ目の橋を走る……N良川に架かる橋……先程の橋と同じ位の橋……
問題無……拍子抜けする程、安楽に渡り、2つ目の陸地に着く……今度はN良川とK曽川に挟まれた土地だ……先程と同じく下流と上流に道路が延びている。
僕は又真っ直ぐ進み、小さい陸地を直ぐに走りきる。
今度はK曽川に架けられた橋を走る……何も起こらないまま、A県に入れそうで僕は嬉しくなる。
大幅な時間短縮だ……
A県でも滞在時間が増える事になり、探索の時間も増える……僕は『いい判断をした』と自分を誉めたくなる。
そんな事を考えて、橋は陸に近付いた為に下り坂になった。
……
……
僕は急ブレーキ!を掛ける……
……
……思わずロックさせてしまい、気付いて、ブレーキレバーを緩める!
それでもリアタイヤが少し、右側に流れた……
車体が道に対して斜めに停まる……
「ABSが無いんだから、ブレーキは慎重に……」おっさん先生の忠告を思い出す……
……
……
なんだ……なんだ?……
……
……
橋の終わり、A県に入る道路……そこに『ヤツら』が……1、2、3、4……8体……久々の大所帯……
……
……一斉に振り向く……遠目からでも解る……僕を認識した。
じっと……彼等は僕を凝視している……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます