第10話 座学
電気節約の為に照明が消えた薄暗いフローリングの床を居間に向かい歩く、おっさん先生は忙しい事を言い訳に掃除をしないので、フローリングの床は、主に彼と僕が通行時に靴下で掃除をすることになる。
故に、僕らが歩いた箇所のみ埃が無い....床の端はゴミらしきモノは無いのだが、こってりと埃が堆積している……通路の奥に、すりガラスが嵌められた引戸が有りその奥に居間がある……おっさん先生が待っている筈だ……
居間から、小さな音でpost-ROCKが聴こえてくる、引戸を開けると小さなled照明灯を机の上に置きソファーに腰を下ろしたおっさん先生がこっちを見た。
「ふぁ……おはよう」彼は欠伸を噛み殺し小さく挨拶をした。
「おはよう、眠そうだね……Godspeed You! Black Emperorだな……」僕は言うと、「……朝の音はこいつが良い……じわじわくるだろ……」足でリズムをとりながら、彼はソファ脇に置いた2つの箱の内大きい箱から服らしきモノを取り出し僕に放り投げた。
僕はソイツを片手で掴み取ると、ズシッとした予想外の重さにもう片方の手を添えて支えた。
それは深い緑色の、ジャケットとロングパンツだった……「ゴツいね……」僕の第一声はこれだった……「お前の成長も考えて少し大きめだが着れる筈だ、後、プロテクタは整備性も考えてジャケットの外側に付ける様にしている、その為見た目がゴテゴテしているが我慢しろ……その着古した服はこれからの季節だと厳しい、そいつに着替えて行けよ」おっさん先生は一気に言うと、テーブルに置いたコーヒーを飲み始めた……もう何もいう気が無さそうだった……僕は仕方無く、今着ている上下の服を脱ぐと、その厳つい服に袖を通した……『鎧だ』心の中で呟く……
プロテクタ箇所
ジャケット ■肩~首 ■肘~前腕 ■背中 ■胸部
ロングパンツ ■臀部 ■太股 ■膝 ■脛
「ライダースジャケットってこんなに一杯プロテクタ付くの??」僕はおっさん先生に質問した。
「脛椎や前腕、脛は私は追加したものだ、本来はバイク転倒時に、関節部や内臓、脊椎を守るものだが、『ヤツら』からの襲撃も考えて、致命傷になる箇所にもプロテクタを追加している、後、上下とも材質は基本ケブラーだよ……ベンチレーションは脇の下にチャックがあるから、汗をかきすぎないように気温に応じて開閉しろよ……」おっさん先生が一通り説明すると、「後は自分で確認してみろ……」と付け足した。
いつものおっさん先生の『教え方』だった。
事前説明は敢えて少なく、使用者が使ってみて疑問に感じた点を質問し、それにおっさん先生が答えるというスタイルだった……前の小型PCの際も同様だった……基本的な使用方法も早々に「ポイッ」と手渡され、「使っていて解らない点が有れば聞いてくれ」と言われた。
その際「もっと教えてよ!」と僕は食い下がった覚えがある、複雑な電子機器なんだから幾らなんでも説明不足だと半ば抗議の気持ちもあって、おっさん先生に詰め寄った。
対しておっさん先生は言う「使う前に教えられた事は忘れるものだよ……自身の経験から出た疑問点は忘れないよ……時間が掛かっても良いから、色々触って確認しろ……」彼は頑固だった。
結果、僕は小型PCをtry&errorを繰り返し操作を習得した……上記の経緯もあり、今回も『いつもの事だ……』と僕は諦観して服の各所を確認し始める……
先ず、左手前腕の内側に2つのレールが取り付けられている事に気が付いた、そのレールの間の幅を見てピンときた。小型PCをその2つのレールに当ててスライドさせる……綺麗に収まる……おっさん先生を見ると首をかしげてニヤリと笑う……
『まだ何かあるのか??』
僕は前腕を再度見る……usbケーブルが出ていた……
小型PCに接続する……充電が開始される……
「ジャケットの腹横に小型バッテリーを内蔵している、充電も可能だ、常にバイクから充電しておけよ」おっさん先生が言う……
『充電も可能だ』も……ってなんだ。
僕は着用したジャケットをジロジロ観察する……右手前腕内側に小さなボタンを2つ見つけた。
1つを押してみる……暫くすると……背中が仄かに暖かくなって来た……「電熱ヒーターを埋め込んである、腹側と背中側に2箇所な、寒さに我慢できない時は利用しろ……」おっさん先生はニヤリと笑い、僕の右手を指差す「ボタンの横にインジケータがあるだろう、バッテリー残量だよ、これは大事なことだが、バッテリー切れに気を付けろよ」「当たり前じゃん!そんな事!今までもずっとそうしてきたよ」僕はこの鎧みたいな外装と便利な装備に嬉しくなって、サムズアップして笑顔で返した。おっさん先生は楽観的な僕を諌める様に静かに言う……「新しい玩具を手に入れた子供みたいだな、こんなのは、私の若い頃にはローテクだったんだよ、だが今の環境下ではこの位しか出来ん……」彼は自重気味に言った「昔はこんなもんじゃ無かったの??」僕が尋ねると、「まぁ、近距離無線通信で、音声認識出来たら良いんだが……色々な……私の若い頃は、キーボードっていうUI(ユーザーインターフェイス)自体が古典的だったのさ……情報は声で検索し常時ネットに接続された情報端末が、ネットから答えを探し、端末から音声で答えが帰ってくる、手の作業は要らないんだよ……」「夢物語だね……」僕にはSF小説の様に感じた……「経った30年程だよ……今や科学文明は20世紀末まで逆行した、これからも逆行は加速度的に進むだろう……朝から朝食の為に火起こしをする生活になるかもしれん……」おっさん先生は両肩をすくめて呟いた。
そして急に神妙な顔で「長くなるが聞いてほしい」と言った。
「今回のパンデミックはそのネットのお陰で起きたとも思えるし、また、被害が抑えられたとも考えられる、どちらにせよ、ネットで世界中が繋がった事は20世紀末の一大事件だったわけだ……そして21世紀はAI『人工知能』が一時代を築いた……」彼は続ける、そして市内の小学校に置いてあった手頃な黒板を机の上に置きチョークで文字を書くと同時に喋り始めた……
「私の専門外だから完全には説明しきれんが基本的な知識として知っておいてほしい、パンデミック以前、世界は地球規模でのネット環境の普及とAIの高度化により生活が劇的に変わったんだ、そして情報端末の小型化も一端を担っている、端的に言えば……」と言いつつ黒板に文字を書いていく……
①情報の拡散スピード より早く 説明済み
②情報の地域格差是正 より多くに 説明済み
③情報の取得及び機器操作の簡素化 より簡単に
④情報の蓄積によるAIの高度化 より賢く
書き終わると、「①と②はこの調査を始める間にも言ったな……」僕は頷くと、おっさん先生は、「復習だ」と言いつつ①を指差し話始めた……
「①は、全世界に網羅されたネット環境により享受される最大の利点だ、地球の反対側の事件もネットを介して直ぐに全世界に流れる……良いことも、悪いこともな……」
次いで②を差し
「これも、ネットが全世界に網羅された結果なのだが、ジャングルでも離島でも情報端末を持てば、いつでも、どこでも、誰でも、情報を手に入れられる、最新情報は都市部だけのものでは無くなったのだ……」
今度は③を差し、「ここからは新しい勉強だよ」と言いなら、話を続ける……
「これは、①②より大きな変革だと私は感じている……それは第1に情報端末の小型化、所謂ウェアラブル化と第2にAIの高度化が持たらした結果だが、小型化された情報端末を常時身に着ける事が普通になり、20世紀以前のPCといわれるキーボード付きの大袈裟な端末を持つ必要が無くなった……そして、先程言ったように、UIはキーボードからタッチパネル及びAIの高度化により、音声会話での端末及びネット利用が一般的になったんだ……これによって、人類は、全世界規模の『仮に今は"情報bank"と呼んでおく』検索システムに常時接続する様になったんだ……そして、操作方法もキーボードなど押さなくとも端末に話せばよいそれで良い、後は高度な言語認識力を持ったAIが内容を汲み取って使用者の指示に答えてくれる、それ以前はPCの前に座って操作する主体性を持った作業だったんだが、携帯できる小型端末により『ながら作業』になったんだ……歩きながら検索出来る……料理を作りながらTVのチャンネルを変える……エアコンの温度を上げる……車に行き先を指示して後は到着するまで仕事をこなす……こういったAIによる音声認識による検索と作業補助、自動操作によって、人々はAIに作業を代替わりさせていく事になったんだ……」
最後に④を差しながら、
「上の①②③がある程度全世界に普及した頃、つまり21世紀前半、情報bankは人類にとって書籍や雑誌、ラジオ、TV より上位に位置した……『TVを観る』『本を読む』等の情報収集は意味を成さなくなったんだ……ネット以外の情報発信は発信した段階で既に陳腐化している……殆どの情報はそれまでにネットに流出しているからだ……そして老若男女選択の余地無くネットの坩堝に飲み込まれて行き、いつも携帯する情報端末でのAIによる検索と作業補助や自動操作を享受していた、これによって、全人類の情報は全てネットに集まる事になっていくんだ、情報Bankには日夜.全世界からあらゆる情報が人々により検索され、AIは様々な情報を蓄積し、その中から回答を探しだし、そして、更なる良い回答を見つけるべく、また全人類から来る情報を整理.蓄積するというサイクルが出来たんだ……これによりAIは急速に賢くなった、技術的特異点に到達しそうな位に……」
「技術的特異点???」よく解らない言葉だ……
「すまんな、わからんよな……簡単に言えば
AIにおける非常に大きな転換点なのさ、例えば、パンデミック以前AIは、人間によって設計されていたんだ……」
「……ん……当たり前??だよね……」人間以外に誰が設計するんだ。
「そう思うよな……」彼は、ぼそりと言い……
「特異点以降はAIがAIを設計する事に成ったんだ」と言った。
「……ん??」一瞬意味が解らなかった。
「人類から日々膨大な情報を与えられ続け、それを整理、蓄積し、また人類から質問を受け、その膨大な情報から最適解を探す循環の中で、AIは人間の知能を上回ったんだよ……人間がAIを設計するより、AI自身に次世代のAIを設計させた方が短時間で良いものが出来る様に成ったんだ……まぁ……演算や合理的判断に関してだが……人間以上に成ったんだ……そうなれば、AIの作成をAIに任せた方が費用対効果の面で良いよな……」
「なんか……怖いね……」昔この部屋で母さん、おっさん先生と僕で観た、未来から来た殺人ロボットの映画を思い出す……あれは、プレス機で圧殺されるまで、骨格だけになっても襲い掛かってきた……アイツが来たのは、コンピューターが全人類を不要として抹殺する未来で、唯一抵抗するレジスタンスのリーダーが誕生する前に、過去に戻ってリーダーの母親を殺害する話だった……三人で手に汗握って鑑賞した……殴っても、撃っても、焼いても、追い掛けてくる殺人ロボットの不死身さにドキドキしながら、まるで自分が追い掛けられている気分になり、母さんに抱き付きながら観た……とても面白かった……けど、現実に、コンピューターが反乱を起こすなんて悪夢でしかない「……人間が不要になったの……」僕は映画を思い出して言った。
「……んん???どうしてだ……なにか勘違いしていないか???」おっさん先生は眉を八の字にして困惑の表情を浮かべている……
「だってAIが賢くなって人間は不要になったんでしょ……AIは自分たちで全部出来るように成ったから、人間を殺してしまえって、ウイルスを撒いたんだ……」僕はこのパンデミックの原因を突き止めた気分になり大きな声で持論を展開した。
「……う~ん……映画の見すぎだな……私が観せた映画の趣味が偏っていたからかな」彼は頭をボリボリ掻いて、「そんな、夢物語じゃない」とハッキリ言った。
「えっ……違うの」僕は自分だけが盛り上がって事に気が付いて一寸恥ずかしくなった。
「AIは何でも出来る様には成らないし、人類に牙を剥いたりもしない……AIは人類の便利なツールだよ……AIに正義、悪、道徳なんていう、合理的判断では解らない概念を優先順位を付けて判断する事が出来たら、確かにトウマの言う様な事も在るかもしれんが、それは、情報の蓄積だけでは出来ない事なんだよ……AIには知能は有っても、知性は無いのさ……だから人工"知能"なんだ……」彼は言うと、「まぁ、これは余談だよ」おっさん先生はヒラヒラ手を振って次の話に進む。
「そんな感じで、④の話に戻るんだが、AIは加速度的に進化しネット共に人類に欠かせない道具になるわけだ……AIに様々な作業を肩代わりさせながら、人類は更にネットの中で産業や文化を育成して行くんだ……現実に在る全ての店、文化は同様にネットにも存在する事になった……ネットで人類の生活の全てが賄える……移動する手間も無い、売り付けに来る店員も居ない、全世界の商品がネットに有る、検索すれば直ぐに適した商品をAIが提示してくれる、病気も大抵のモノならAIに症状を言い、病気に即したサンプルを情報端末経由でネット病院に送れば、調剤した薬がドローンで運ばれてくる、もうそれは便利な新しい世界がネットとAIを活用する事で出来たんだ」彼は昔を思い出す様に言う。
「家から出なくて楽で良いね」僕が少し苦笑して言う。
「まぁ、生物として正しい事では無いかもしれんが、AIとネット、これによって距離や言語や宗教を越えて繋がり合う人達が生まれる、そういう人達は自身をグローバリズム(地球主義)だと信じているか否かは分からんが、結果として、そういった人達により、ネット上に誕生したシステムがある」おっさん先生深呼吸して続ける。
「結論から言えばネット上に国家が誕生したんだ……当初は共同体程度のモノだった……これを起案した人物達は実に慎重に事を進めた……あの時代、既に、政府、通貨、あらゆる機関はネット上に創る事が出来た……或いは既に在った……そしてその頃、現実世界では格差が拡がっていた……地球規模での南北格差、国民同士の貧富の格差、宗教上の格差、様々な格差が在った……それに不満を持つ人達は、新しいネット共同体に自身の理想を重ね参加した……参加者は共同体に会費を定期的に入金する、共同体は会費を管理し、それをネット上の店舗運営や業務拡大に利用し利益を得る、最終的に参加者は、共同体が獲得した利益の一部から配当金を得る……そしてこの循環は、地球上の全人類が参加可能という事が重要だった……国.言語.宗教.何にも囚われない、ただ情報端末だけあれば参加できるんだ」おっさん先生は一気に言うと理解しているかを確認する様には僕を見た。
「……なんか、難しいけど、株式会社???」僕は半信半疑で答えた....
「まぁ、そんなもんだ、当初はな……」彼は言い、「だが、そこに当初の起案者により、統治権を有する団体が創られる……団体とは基本的には政治団体だな……これにより国境が無い地球規模の……そして世界中に国民が散らばるネット国家が出来上がる、まぁ途中色々な紆余曲折は在ったし、リアル国家からの妨害も在ったわけだが、結果としてネット国家は出来上がり、多くの国民を抱えることに成ったんだ……」彼は懐かしそうに言った。
そして彼の表情に近代史を語るだけではない……理想と夢を……その眼に観た気がする。
「そのネット国家がパンデミックを起こしたの??」今までの話から、推理して僕は言った。
「どうなんだろうな?う~ん、現在の情報網では特定までには至って無いんだよ……ただネット国民は全地球上に拡がっていた……パンデミックもほぼ全世界に降り注いだ……大事な国民を『ヤツら』にしてしまえば、ネット国家の収入源も途絶え国家存亡の危機だ……そんな自国にメリットの無い事をするのだろうか???」おっさん先生は、自問する様に言う。
「……嗚呼、そりゃそうだね」僕は自分の浅はかさを後悔した。
「いや、お前の発想が間違っているとも限らん……今はなんとも言えん……様々な可能性を考えて行けば今は良いと思うよ」と彼は言うと……
「今まで、長々話したのは、これから大都市圏へ向かえば、様々な技術の遺産を目にするだろう、しかしそれを記録に残し、私の元まで持ち帰るかは、お前の選択なんだ……お前の基準が間違っていれば、大事な情報も記録に残さず帰って来るだろう……だから、説明したんだ……だからと言って全てを教えるだけの時間的余裕は無い……だから、最低限の説明をした……まぁ、お宝探しの地図みたいなもんだ……なにが俺達を救う手だてになるかもしれん……私の今の話を聞いて少しでも気に止まったモノがあるなら記録にして持ち帰ってくれ」おっさん先生は一息ついて、「さあ、行くが良い」と最後に言った。
「あぁ、分かったよ、役に立つ情報を持ち帰れる様に頑張る!」僕は言い、そして忘れていた事を思い出した「....あのね、門番のヨシタカから言われたんだけど、Y市に行く前にI 市庁舎に寄ってもいい……」「?何をしに行くんだ??」当然の質問だ……「あぁ、ごめん、I 市庁舎の屋上に変な『ヤツら』が居るみたいなんだ……ヨシタカの話だと、意識が有るみたいな動きらしい、それを確認ししたいんだ」僕は補足する。
「??意識ってなぁ~そんな?勘違いじゃ無いのか??」おっさん先生は一寸信じれないみたいだ。「僕もそのまま鵜呑みにしている訳じゃないよ」
「……屋上に居た事が引っ掛かるな」彼はボソッと言う。
「そうだろ……どうやって屋上まで上がったのさ....」僕自身の疑問もソコにあった。
「屋上まで施錠はしてないけど、『ヤツら』になった状態で、複数在るドアを開けて屋上にた辿り着けるかな??」僕の疑問に「……『ヤツら』に成ってしまったんなら先ず無理だな……そういった思考が出来ない筈だ……彼等には食欲しか残されていない……何らかの理由で感染の進行が遅れている??……もしトウマの様に抗体を持つ人物なら……まぁ、そりゃないか」おっさん先生は自己完結した後に、『ハッ』とした表情を浮かべ「おい!そりゃ、ただ助けを求めてる人間じゃないのか!!」と言い、僕は「....えっ!!!あっ、そうか、自分を見つけて欲しいから屋上まで上がってたんだ……I市の人達に見つけて欲しくて」ヨシタカの話からの先入観だった。
『ヤツら』だと考え込んでいた……僕は全然ダメじゃないか、結局ヨシタカの話を鵜呑みにしていた……その時、廊下をバタバタ走る音が聞こえてきた……「せんせーーー!!」話をしていたヨシタカの声だ……気付いた時には、引き戸を開けて、バンッと顔を出した……「大変だよ!!」と言い「門前に、何か居るんだ」と付け加えた。
「何か??って何だよ、次いでにヨシタカ、庁舎の屋上の件だが……」おっさん先生は眉を片方釣り上げて、ヨシタカに詰問する。
「そんなの後で良いよ、取り敢えず門前の何かを調べてよ!毛布でぐるぐる巻きになってるんだよ……気落ち悪くて見れないから……」ヨシタカは言い、こちらに助け船を出して欲しそうな視線を向けてくる……「分かったよ……僕が見てくるその後で庁舎に行くよ」僕は、おっさん先生に「じゃあ、行ってくる、成果を期待して」と言うと、おっさん先生は「もし、門前の物体の件が長引くなら、私の元まで戻ってこい、病院は臨時休業して後は私が対応する」と言った。 僕はヨシタカに「案内して」と言い、露骨に嫌そうな顔をする彼の肩を掴んだ。
バッテリーと燃料が勿体無いけど、仕方無くヨシタカをタンデムして(本当は、おっさん先生みたいに女の子とタンデムしたい)バイクを走らせた。
やはり整備された町中は走り易い、2分程度で門まで着いた。
門の外で毛布で作った簀巻きが横たわっている……簀巻きは全長2m程度で直径は僕が両手で輪っかを作った位で収まりそうだ……嫌な予感だが、簀巻きの微妙なS字カーブが、人体が入っている様に想像させる……簀巻きは微動だにしない『ヤツら』だと最悪なイメージを僕の脳が勝手に妄想する。
ヨシタカから警棒代わりの棒切れを引ったくり、棒の先で毛布を軽く突いた……簀巻きが「ビクッ」と動いた……「ウヒャ」思わず、変な声が出た……その後、簀巻きは尺取り虫の様な動きをしたかと思うと、「フゴッ!!」と言葉とは形容しがたい音を毛布越しに発した……同時に簀巻きの端から、汚れた髪の毛が出てくる……恐怖を全身に感じる。
「『ヤツら』だ!!」僕は、思わず毛布に向かって、警棒を振り下ろした!!
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