第2話
電話のコールが2回してから、機械的な音声で、電波の届かない所か電源が切れているか、いずれかだという。
もう少ししてから電話してみよう、と思うが、このまま1人で何をしようか、コーヒーかどこかお酒の飲める所に入ってみようか。
そんなことで迷っていると、また駅のホームにあるただ大きく鳴るだけのスピーカーから、新幹線がまもなく復旧するという、安全確認終わり次第に復旧する、というアナウンスがあり、やっぱり今夜は帰ろう、と思う。
せっかく、いつもと違う何かがあるかも、と予期せぬ未来に期待していたのに、と。明日はいつものように仕事へ行っていつものように家に帰るんだ、と、ほぼ確実な未来を想像する。いや、いつもは想像すらしていない。未来を考えてない自分、というものが急に愚かに感じる。
山手線の東京駅のホームに着いた時、さとみの携帯が突然鳴る。
さとみには、その時の携帯の音がこれまでの未来を突き破るような何かの合図に感じられた。
電話の声は、電源が入っていて電波が届くようになった、らしい、彼の声だ。さとみはなぜか自分の胸がドキドキしているのを感じる。
「うん、ありがとう。新幹線、復旧するって放送があって、それで」
それで、自分はどうしたいのだろう。
帰りたいのだろうか、引き止めて欲しいのだろうか。でも、引き止めてもらうには、相手が引き止めてくれなければならない。お願い、引き止めて。
「ねえ、やっぱり今夜帰るのやめようかと思うんだけど。」
こういとき、すぱっと、言いたいことが言える人はいいなあ、と思う。
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