嘘をつきたくない女と真実を知りたくない男

@kawano-aki

第1話

「私の友達なんて、17、8歳で子供作った人もいるし。そんなの普通だよ。まあ、都会じゃあ考えられないと思うけど。」

さとみは、カウンターから見える海のような東京湾の端っこを見ながら薄くなってしまったウイスキーのロックの最後の一口を飲み干す。

「そろそろ帰らないと。新幹線乗り遅れる。明日も仕事忙しいんだ。」


秋の東京駅の宇都宮行きホームは人もまばらで自由席は半分くらい空いているはずだ、そんなことを考えながら、

でも、もっと人生楽しいはずだと思う。だけど自分は十分に幸せだとも思う。

季節の変わり目になると、東京に行って安全安心な学生時代の男友達を誘っては少し名の知れたビストロの類で

食事をして、ホテルのバーで飲んで新幹線で帰る。


でも、その日は違った。

新幹線が雪の影響で動かないと言うアナウンスが新橋駅のJRホームで

流れている。


困ったような、でも、嬉しいような。

帰れない理由が出来た。


今までは必ず帰っていたのだが、帰れない。

さとみは今まで飲んでいた相手に電話をしてみる。






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