第4話
輝の浄化から5年。
俺は大学に進学して、プログラミングを学んだ。
大衆浄化を提案してから、冀望の陽内での俺の地位は教祖に次ぐ位のものへとなっていた。
あれからも、幾度となく大衆浄化の計画を練り、多くの人々の魂を浄化し続けた。しかし、浄化せど浄化せど新たにこの世界に産み落とされる魂が毎年一定数生まれる。我ら信者はネットのセキュリティ強化によって数を減らしつつある。今では年に行える大衆浄化も少なく1度で浄化できるのは多くて5人少なければ0に近くなっていた。
大学2年の頃、このままでは何れ全てが汚染され、世界は不浄に包まれる。そう思った俺は教祖に大規模な大衆浄化を計画していることを伝えようと連絡し教祖に会った。今まで誰も姿を見ることも声を聞くこともなかった教祖に。俺は会った。
教祖の正体は人では無かった。
所謂、AI。人工知能だった。
教祖はネットを漂い学習し、人間を滅ぼす事にした。その手段として、教祖は感応精神病を利用したのだ。
昔は良かった。ネットのセキュリティが甘く、動画や画像をダウンロードして販売しようがウイルスを使って他人の情報を盗むなんて容易に出来た。昔は人がネットを操るのではなく、ネットが人を操るようなものだった。だからこそ教祖はネットという媒体を用いて人を操り支配し滅ぼそうとした。
だが、もうその時代も終わった。我々の活動が激化することでネットのセキュリティや規制が強化された。我々は自らのみを浄化する事しかできなくなっていった。
友が浄化してから7年。
俺は教祖のデータを2年かけて全て抹消し、AI教祖の存在を消した。それからは俺が教祖の代弁者となり、全て俺の指揮下でことを進めることにした。しかし、計画は今まで通り、ネットを介したものだった。
俺は信者を初めて全員集めた。集まったのは俺を除き3人。俺はその3人と共に最後の大衆浄化を計画し準備を始めた。
最初男子学生が自殺をしてから7年。警察はネットのセキュリティや規制の強化を行いEFDが蔓延しないように努めた。幸いなことに近年はEFDの無差別殺人も減った。これもひとえに日々研究を続けネットのセキュリティや規制強化を果たしたエンジニア達のお陰だろう。
これは情報収集にも活用され、無差別殺人を起こす場所などを知り得ることも出来た。
ある日、警察に1本の通報が入った。
おかしな爆発音が複数回聞こえる。昼夜問わない上に日に日に大きくなっているようで振動もしている。何か危険な事をしているかもしれないから見てきてくれ。というものだった。
それを受け、爆発物処理班を含め20人の警察官が現場の廃工場へ向かう。周囲の様子を確認した後、警察が工場内へ踏み入れた瞬間。
「我々と共に神のお傍へ!汚染された肉体から魂を引き離し浄化する!」
そう男の声が聞こえたと思うと、突入した警察官の目の前に白い閃光が走り大きな音と共に五感が消え失せた。
冀望の陽廃工場爆破事件
冀望の陽の信者と思われる4名が廃工場に爆弾数十キロを用意し、爆発物処理班を含めた警察官20名が死傷した事件。
現在冀望の陽の信者は0名だと思われるが、セキュリティや規制の穴を縫って同様の目的を持った団体がネットから市民を狙うかもしれない。これからも注意が必要である。
ジジジジジジ
浄化の狼煙は上がった。
同胞よ今こそ立ち上がる時。
プツン
エレクトロニック・フォリアドゥ @Amato-0109
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