第3話

輝が自殺してから3ヶ月経った。

マスコミの押し掛けもだいぶ減った。

でも、輝は2度と帰って来ない。それが俺の心を蝕む。俺が何か聞いていれば。本当はあぁいう扱いは嫌いだったんじゃないか。何か例の記事に原因が有るとしても俺が話を聞いているだけで何か変わったんじゃないか。そう思えば思うほど、俺は飯も飲み物も何も喉を通らなくなった。


ある日、1つの俺は動画を見つけた。

黒いスクリーンに白い文字で淡々と綴られる文章。その後に見た信者を名乗る人々の議論、魂の浄化の仕方……

俺は気付いた。

……輝は汚染されたこの世界から自らの魂を守り浄化するために肉体から引き離したんだと。

俺は考えた。どうすればこの汚染された世界から世界中の人々の魂を救うことが出来るのか。そうして、1つの結果に辿り着いた。何も言わずに浄化するのは申し訳ないが、人々の魂を守るためには多くの人の行き交う道で信者である我々が浄化の手伝いをして差し上げるべきである。名付けるなら大衆浄化と言ったところだろうか。画期的かもしれん、そう思い俺は「冀望の陽 信者の四阿」通称信者板に大衆浄化について提案した。




……


………


12:神崎

皆さん少しよろしいでしょうか?


13:中森

なんだ?新入り。何かあったのか?


14:神崎

提案がございまして……


15:田中

提案?なんだ?


16:佐藤

俺、本日浄化します。


17:畑中

佐藤さん、私も明日浄化致します。


18:神崎

佐藤さん、畑中さん少し待ってもらって良いですか?


19:田中

なんだ?新入り。神聖な浄化を邪魔するのか?それは罰則事項だぞ。


20:中森

許されざる


21:大島

新入り、許されないぞ。


22:鹿島

神崎、お前いくら何でも神聖な浄化を邪魔してはいかんだろ


24:伊澤

俺も本日浄化致します


25:神崎

提案します。何も言わずに浄化するのは申し訳ないのですが、人々の魂を守るためには多くの人の行き交う道で信者である我々が浄化の手伝いをして差し上げるべきではないでしょうか ?言うなれば大衆浄化。その後に自らもその場で浄化なさればこの世界により長く居てしまうことになってしまいますが、より多くの人々を救済することが出来るのではないでしょうか。長文失礼しました。


26:畑中

なるほど


27:中森

ふむ


28:鹿島

それは……!?


29:佐藤

俺、大衆浄化やってくるよ。多くの人々を救わなければ……


30:大島

佐藤さん、貴方って人は……


31:佐藤

教祖様も許してくださるだろう……


32:畑中

私は明日大衆浄化して参ります。神崎さん、素晴らしい提案に感謝します。


33:鹿島

神崎さん、済まなかった


………


……






最初の男子学生の自殺から3ヶ月。毎日のように浄化するとの一言を遺して亡くなる人が後を絶たない。最初期より明らかに増えている。

加えて、最近自殺テロ紛いの無差別殺人事件が起きている。

「我々が皆を救済する!」と叫びながら刃物や鈍器果ては銃を使って無差別殺人を行い、警察が到着する頃には凶器で自殺する。

浄化というキーワードも出ているため犯人は信者で間違いないだろうというのが警察の見解だ。

そして、医師やカウンセラー、警察の調査の結果、自殺者や信者達は一種の洗脳状態、精神病に罹っている事がわかった。その病名を感応精神病。フォリアドゥというらしい。それは通常精神異常者と共に締め切られた空間の中に入れられ数日も暮らしていればそれが精神異常が感染してしまうというものである。これはネット上で行われたものであるため、さしずめ電子感応精神病、エレクトロニック・フォリアドゥ。EFDそう名づけられた。

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