エピローグ

体が痛い・・・しかし肌に感じるその暖かさは陽の光の様だ。

暫くすると何処かで小鳥が鳴いている声が聞こえてくる。

眩しい・・・陽の光に意識が急速に戻っていく。


「・・・・・・こ、ここは?ぐっ!」


全身に激痛が走り、手も足も動かせない。

辛うじて動く目を使い辺りを見る。


(・・・森・・・だよな・・・)


聞こえてくる音と視界に写る光景、土や木々の匂いでそう判断し、次いで自身の体を調べてみる。


(・・・全く動かない・・・)


余程の負荷が掛かったのだろう。

指一本も動かせそうにない。

手足がもげてはいないのは幸いだった。


(どうして此処で・・・そうだ・・・菊理が斬られて・・・)


それ以上はもやが掛かったみたいに断片的にしか思い出せない。


(・・・また暴走したのか・・・だが・・・)


うっすらとだが、あの悪魔にこの拳を叩き込んだのは覚えている。

倒せはした・・・のだろう。

だが、その後、どうなった?どうして此処で倒れている?

ぐるぐると思考を回すも極度の疲労からか全く考えが纏まらない。


(駄目だ・・・逆に疲れた・・・)


考えるのを止めた時、ふと今の自分の状況に気がついた。


(ま、まずい・・・このままだと熊や狼の餌になってしまう・・・!)


慌てて起きようとするも再び激痛が走り、疲労も相まって意識が薄れていく。


(あ・・・これ死んだかも・・・)


その時だった。

木の影から人が現れた。


「ん?おや?ねえ!誰かがこんなとこでお昼寝してるよ~?」


「は?そんな訳無かろう?・・・・・・こりゃ!これは昼寝では無い!行き倒れと言うんじゃ!」


「あ、そうなんだ。」


「全く・・・おい、お主。生きとるか?おい?」


軽く顔を叩かれ、朦朧とした意識の中で辛うじてそちらに目を向けると年の頃なら15・6か?見慣れない深い緑と黒の服装の男性とお侍のまげの様に長い赤茶の髪を後ろで括った、これまた見た事の無い土色の服装に赤い胸鎧をつけた背の高そうな18位の女性が此方を見ていた。


「ふむ、生きてはおる様じゃのう。・・・仕方ない。一度戻るとするか。」


「あ、じゃあ私が乗せていくよ。」


「ふむ。頼めるかのう。」


俺は男性の肩に背負われ(担がれ?)ると何時の間に現れたのか、熊が待機していた。


「では戻るとするか。」


「ガゥ。」


「いや、その状態でも・・・れ・・・・・」


熊の背に乗せられた俺はその背の暖かさと歩く揺れに三度意識を失うのだった。




第一章


                   完

――――――――――――――――――――

これにて第一章江戸時代編は終了となります。

第二章の投稿は別に投稿している作品の中で浅太が帰る術を見つけた後と成りますので、かなり遅くなると思いますので、楽しみに待ってくださっている方々には、大変申し訳無く思いますが、もう1つの世界はかなり好き勝手にやってますので、そんな中に放り込まれた浅太がどう変わっていくのかお楽しみにしてください。

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