ホムンクルス
「100年程前、私が二代目にある依頼を出したのがきっかけだった。当時、魔族側の一部の者達の策略で、
「すみません。「ほむんくるす」って何ですか?」
「この国にはまだ無い言葉だったな。ホムンクルスとは錬金術師が生命を造り出す禁忌の術によって造られた人間、人造人間の事。」
成る程・・・生命を人工的に・・・それってつまり・・・
「あなた。その術は自然の摂理に反する命の冒涜です。決して許される物ではありません。」
「その通り、人が触れてはならない神の御業だ・・・未来じゃ普通にやってるけど。」
何それ怖い。
未来の人間は怖い物知らずなのかな?
今度、天羽達に聞いてみよう。
「えーと、それで・・・確かに計画した者達の殲滅は確認したのだが、当の本人が姿を消した。何が起きたのか分からなかった私は必死になって探したよ。そして何年後かにようやく見つけた時には彼は一人の幼子を連れていたんだ。」
「その幼子って・・・まさか!」
あの時、二代目と出会った時に一緒にいた女の子・・・彼女が「ほむんくるす」って奴か。
「君達も出会ったよな。そう、テリーと一緒にいた女の子だ。始めは子供でもできたのかと思ったんだ。でも違った。その女の子は邪神と魔王の力を融合させ造り出されたホムンクルスだったんだよ。何が起きたのかテリーに聞いてみると計画その物は潰せたんだけど、母体となるホムンクルスの方は完成していたらしい。彼は悪ぶってるけど子供には優しいからね。消滅出来なかったんだよ。」
消滅出来なかった。
その気持ち、分からなくもない。
恐らく自分も同じ状況だったら、出来ないだろう。
しかし、何故?
「あの娘が・・・では何故彼が反逆者になったんですか?」
「そうだね・・・そこが重要でね。ちょっとした行き違い、とでも言うのかな?計画を潰した後、それで全て終わるはずだったんだけど、天使側の一部勢力がそのホムンクルスも消えるべき、と判断したみたいでね。私に依頼完了の一報が入るまで、彼は天使達に襲撃され続けたみたいなんだ。」
天使の襲撃?
「・・・何で天使が襲撃してきたか分かんないって顔だね・・・それはね、天使側は世界を崩壊しかねない存在を許せないからなんだよ。何せ「邪神」と「魔王」の力を受け継いだ存在だからね。何時暴走するか分からないから危険物に違いないよ。」
それは確かに危険だけど・・・それだけなら保護すれば良いんじゃないか?
「お話は分かりますけど、それだったら保護なりなんなり手はあったのでは?少なくとも彼はそのつもりで行動していると・・・」
「そうなんだけど・・・事はそう単純じゃないんだ。そんなのが存在している、生きていると分かったら利用しようとする者達が出てくる。それ故に保護よりもいっそ無くなってしまった方が天使側にとって都合が良いのさ。そのせいで彼は襲撃を受け続けたんだけどね・・・あ、勿論、直ぐに撤収させたよ!けど、それでも彼は止まらない。天使達と彼の間に何があったかは分からない。でも彼は確かにこう言ったんだ。」
彼の、二代目調停者の出した決断。
それは誰もが思い、誰もが受け入れられない決断。
「『俺はこの娘の為、この娘が安心して過ごせる場所を作る為、この世界を粉砕する!!』・・・と。」
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