何も変わらないんですが?
ネビロスこと根津姫様との戦いのあったその日の晩、俺は昼間に寝たせいで俺はなかなか寝付けないでいた。
「・・・・・・寝れん。」
寝返りうったりうつ伏せになったり・・・それでも全く眠くならない。
ふと隣の菊理を見るとぐっすりと眠っている。本来なら女神や妖怪達は夜寝る必要は無いそうでこうして眠っているのは、菊理が半分人間だから必要なんだそうだ。
ついでに言えばそう言った存在が眠る時は何百年単位だし、起きる時も儀式やら生け贄やらが必要なんだそうだ・・・起きるのも一苦労だなぁ。
俺は寝るのを諦めて起き上がり、土間の水瓶から一口水を飲み外へ出る。
夏の晩だと言うのに吹く風が心地よく昼間の日差しの暑さが嘘の様だ。
「浅兄?眠れないの?」
掛けられた声に振り向くと菊理が起きてきた。
「起こしたか?」
「いいえ。本来なら寝なくても良いので問題は無いんです。それに何かあれば直ぐに目を覚ませるので。」
何とも都合の良い事だ。
「心地良い風ですね・・・」
「・・・そうだな。」
夏の夜は昼間と違いとても穏やかで、涼しくて心地良い・・・二人自然と寄り添いながら満点の星空を眺めていられるのは、とても幸せな事で・・・
「いちゃついてる所すまないが話がある。」
「「わあぁぁぁ!」」
いつの間にか俺達の間に金色の髪の少女が鎮座していた。
「姉さん、人の子を驚かす物ではありませんよ・・・はぁ。」
驚く俺達の前に空から降り立ったのは赤い髪と6枚の翼を広げた女性・・・確か・・・
「貴方様は・・・天使長ミカエル様!それに大魔王ルシファー様!」
「久しぶりだね青年。」
そう言えば数日後に又来ると言っていたなと思い出す。
「見てたよー。急拵えなのに邪神を退かすなんてやるじゃないかー・・・押し倒していたけど。」
「押し倒したんじゃ・・・え?邪神?堕天使じゃなく?」
「うむ。ネビロスは堕天使であると同時に邪神としての側面も持ち合わせておる。故に信仰を集められると手がつけられん。」
あの時ビフロンスが「ヤバい奴」と言っていたのはそう言う事だったのか。
ともあれ今はこうしてゆっくりと月を眺めて居られるんだ。
「それはさておき、決心はついたかな?」
「決心」か・・・それならば問題無い。既に俺の心は決まっている。
「はい。「護る者」として生きる事を決めます。」
「では、これを。」
ミカエル様が差し出した手には淡く光る玉みたいな物があった。
「これは我等の力で産み出した結界。これを使い貴方の魂を永久不滅の存在へと昇華します。これによりこの先老いる事も死ぬ事も無く、そして無限に成長する事ができる様になります。」
改めて聞かされると受け取る手が震える。しかし自分で決めた事。意を決して受け取るとその手に暖かな、それでいて何処か恐怖を感じる。ルシファー様が胸に押し当てる様な身振りをするのを真似て自信の胸に押し当てる・・・光の玉は俺の中に吸い込まれてそして・・・・・・そして?
「あの・・・何も変わらないんですが?」
「そりゃそうだろ。魂をいきなり昇華したり急に強くなったら狂っちまうからな。これから時間をかけて自分で昇華するんだ。あ、でも、既に不老不死にはなったからな?喜べ?」
素直に喜んで良いものか?疑問に思いながらも自分で決めた事。受け入れるしかない。
「また微妙な顔を・・・本来なら誰もが欲しがるもんだぞ?事実その力を受け取った人間はお前を入れて3人しかいない貴重な物なんだから・・・」
3人、と言う事は俺の前に2人も不老不死が居るのか。
「3人ですか。その方々は今は?」
「初代は今、世界中を飛び回って溢れ出ようとしている悪魔共を駆逐している。その内この国にも来るかもしれない。あと一人、二代目は・・・その・・・」
初代の方は世界中を飛び回っておられるのか・・・できれば御会いして色々と御教授願いたいものだ。しかしルシファー様が二代目の事で言葉を濁されるのはどういう事だ?
「二代目がどうかされましたか?」
「どうって言うか・・・二代目はな?行方不明なんだ。」
行方不明?死ぬ事は無いだろうから何かしらあったのか?
俺が疑問に思っているとミカエル様が溜め息混じりに告げた。
「姉上、はっきりと言えば良いではないですか。奴は職務を放棄し我等に「反逆」したと。」
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