燃える城下その2

 何が起きた・・・全くもって状況が飲み込め無いでいると遅れて体から痛覚を通して把握できてきた。

 腹部と背中に痛みが走っているから恐らく腹に一発、その後叩きつけられたのだろう。


 (あの一瞬で二発喰らったのか・・・俺は・・・それよりも・・・)


 俺を踏みつけているこの男・・・2代目だと?


 「ぐっ・・・あんたが、くだんの、2代目、様か・・・!」


 「へぇ、知ってんのか。ま、だから何だ?俺を倒すか?はっ!辞めとけ辞めとけ。お前じゃ相手になんねぇよ!」


 テリーと名乗った男は俺を踏みつけてながら高らかに嗤う。菊理と長谷川様、朧達は動かない・・・否、動けないでいる。


 「・・・・・・動いちゃ、だめ?」


 「きゃ!」


 「嬢ちゃん!・・・糞餓鬼が・・・!」


 菊理が動こうとした瞬間、雷光が走り菊理を足止めする。黒髪の幼子は只々無表情に両手を翳し、皆を威嚇する。


 「おいリン。それぐらいにしとけ。俺等の目的はこいつ等じゃねーんだからな。」


 「・・・わかった。」


 リンと呼ばれた幼子は両手を下ろす。テリーはそれを確認すると踏みつけたまま俺に質問をしてきた。


 「さーて・・・どうしようかね?お前はどうしたい?後輩君?」


 「・・・俺達は、被害にあっ・・・た、人達、を・・・助けに・・・き、来た、だけだ・・・!」


 「Amazing!何だよ!張り合いねぇーな!どうすっか・・・なぁ!」


 大袈裟に驚く素振りをしながら俺を軽く蹴り飛ばす。その動きとは裏腹に俺は5間(約10m)程跳ばされ消し炭になった家屋へと埋もれる。


 「あなた!」


 「浅の字!」


 吹き飛ばされた俺は瓦礫の中で意識を失った。

 次に俺が目を覚ました時、俺に必死にしがみつき俺を止めようとしている菊理と猫又の瀧、そして俺の拳を全力で受け止めている梟の悪魔・・・天羽がいた。


 「・・・な、何が・・・」


 「よ、よう・・・やっと目ぇ覚ましたみたいやな・・・」



――――――――――――――――――――


 砦に戻った俺達はある程度の手当てを受けた後、吉忠様へ報告を兼ねて広間に集まっていた。


 「何があったのか報告を。」


 その声を受け菊理が手を挙げる。


 「では、夫に代わり私から。まず、火災現場ですが、到着時点で既に我々では手の着けようのない程に広がっており、救助も儘ならない状況でした。そして妖怪の類いは見当たらなかったのですが・・・謎の二人組と出会い、夫が・・・浅太が倒されました。その二人組が今回の火災に関与している可能性が示唆されます。」


 「ふむ・・・皆が急に戻ったのはその者達に手痛い反撃による物か。」


 「あ、いえ・・・切っ掛けは確かにそうなのですが・・・」


 「・・・事はそう単純や無いんや。」


 「と言うと?」


 天羽は俺と菊理に目配せをする。俺と菊理はお互いに頷く。


 「帰還途中で何があったか聞いたんやけどな、浅太が倒された後・・・暴走しよったんや・・・」


 朧に乗ってここに帰還する間、俺と瀧、天羽は俺が吹き飛ばされた後、何が起きたのかを菊理と長谷川様から教えてもらった。

 あの後、瓦礫の中から俺が立ち上がり、魔力で象られた、何か得たいの知れない物を身に纏いテリーに突撃し、テリー達は逃走。

 俺は辺り構わず暴れまくり、瀧を連れて全速力で駆けつけた天羽と共に何とか止めた、と聞かされた。


 「浅太殿。覚えてはおらぬやも知れぬが聴かせてくれぬか?その力は一体何か。」


 「吉忠様、申し訳ありません・・・俺も全く・・・」


 「・・・切っ掛けはわからんけどあの状態は恐らく俺の・・・いや俺達悪魔組が使う「変身」と同じやと思う。」


 「変身」?俺はそんな事出来やしないんだが・・・


 「ここ最近、浅太に魔力の使い方を俺と律っさんが教えとったのは皆知っとるな?」


 「せやな。俺も付き合っていたからよう分かる。」


 そういえば安藤さんも一緒に修行していたな・・・元々使える技だから直ぐに覚えていたけど。


 「もしかして無意識で?」


 「根津さん正解。恐らく俺達の変身を「魔力」を使いこなせれば出来るんやないか?と無意識にでも思っとったんとちゃうか?」


 「成る程な。浅坊は負けず嫌いな所があるからよ。負けたくない一心でよ、使った事のねぇもん使って、あーなった。ふむ、それなら得心できるわな。」


 長谷川様はそうおっしゃったが俺自身は得心が行っていない・・・俺ってそんなに負けず嫌いだったのか?


 「成る程。余としてはその力は後々我等の切り札となると思う。浅太殿にはその力、使いこなせる様、修練を重ねて貰いたい。」


 「・・・心得ました。」


 「後は、先の二人組についてぞ。」


 あの二人組か・・・その事については俺しか知らない事なのだが皆に知っておいてもらった方が良いな。


 「天羽、確か悪魔?だったか従えていたよね?」


 「?居るけどどしたん?」


 「これから話す事柄は俺以外は妖怪や悪魔や女神も無関係じゃ居られないんだ。」


 「わかった。巻き込むんやな。ドゥルジ来いや。」


 天羽に喚ばれ蝿の様な女性が何も無い空間からポンッと現れるとそのまま地面に正座した。


 「聞いとったな?」


 「はい!聞いてましたのでここで清聴させて頂きます!」


 ・・・見てて辛いから立って貰いたい。そう思い天羽に目配せをする。


 「・・・そこに座るな。椅子出して座れや。」


 言われてドゥルジはいそいそと椅子を出して座る。心なしか嬉しそうだ・・・ともかく、これで面子が揃った。


 「それでは俺が「護る者」と正式になった経緯から話します。本来ならこの事は俺だけが知っていれば良い事なのですが・・・」

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