燃える城下その1
「吉忠様、御報告します!」
「よし、申せ。」
それは9月(旧暦)になったばかりの時だった。
俺は天羽達から色々教えて貰いながら自身を鍛え上げつつ各地の妖怪や悪しき者達の同行を探り、定期的に陣に集い協議するのを繰り返していた。
そして持ち回り(天羽達曰くろーてーしょん?とか言っていた)で今週は俺と菊理、朧に長谷川様が安藤さんと九郎さん達防衛組と一緒に待機中である。
協議の最中に九郎さんの部下の人達(春部さん曰く忍び衆)から報告が有った。
「京橋南鍋町より火の手が上がりました!」
「付け火か?それなら火消し達に任せれば・・・」
「そ、それが・・・昼間にも関わらず火の妖怪共が暴れております!その為、更に火の勢いは止まる事無く燃え広がっております!」
協議中の全員に動揺が走る。基本、妖怪達は夜に活動する。これは夜中の方が暗さも相まって人々から畏れを集めやすいからだ。そんな妖怪達が真っ昼間から暴れまわる事はまず無い。稀に昼間でも出てくる妖怪は存在するが、そう言った奴等は人里離れた場所でひっそりと活動する。
「皆すまぬが力を貸しては貰えぬか?只の火事ならまだしも、暴れておる妖怪達相手では火消し達では対処できぬ。」
「俺は何時でも行けます!菊理!支度を頼む!朧は何時でも出れる様にしておいてくれ!」
「俺ぁ南鍋の
「存分に使ってくれ、長谷川殿。よし、皆直ぐにでも出立してくれ!」
それぞれが急ぎ身支度し俺と菊理、長谷川様が朧の牛車に乗り込む。
「朧、頼む!」
「何時でもよろしおす。」
「長谷川様。偵察に出ている瀧達にはどう連絡します?」
「確か西の方に出てるんだったな。早馬ぁ飛ばしても間に合わねぇわな・・・」
「そこは俺に任せてくれ。」
ひょっこり顔を出したのは安藤だった。しかし安藤さんは防衛組だったのでは?
「西に居る彰達へは俺一人の方が速い。直ぐにでも追い付けるよ。それにここの護りは・・・」
「たまがまもるー」
「まもるー」
安藤さんの後ろから現れたのはうちのたまと直姫様だった。
「たまに直姫様じゃないですか。護るって言っても・・・」
「ああ見えてもたま君は割りと強いですよ。この間鬼ごっこで捕まえれる気せんかった。」
「安藤さんが捕まえられないって・・・」
そう言えばこの間、天羽が気配感知の練習の時に言ってたっけ。妙に強いって。
「・・・ならたま、任せていいね。」
「たまにまかせるー」
「まかせるー」
最近俺達が忙しくしている間、直姫様の護衛役をたまに任せていたけど、吉忠様が「直がたまとばかり遊んで余に構ってくれない」と嘆いておられたな。
毅然とした態度で俺達と接してくれては居るが吉忠様は未だ
「じゃあ、たま。吉忠様と直姫様をお願いするね?吉忠様もたまや直姫様と一緒に居たいだろうしさ。」
「わかったー」
「よしただあそんでくれるかな?」
「直姫様。吉忠様は本当は直姫様と一緒に居られたいのです。しかし我等の手前、上に立つ者として気を張っておいでなのです。どうか直姫様、吉忠様を御支え下さいませ。」
「・・・わかったー」
これで吉忠様も多少は気が楽になるだろう。
俺達は安藤さんに瀧達の事を頼み京橋南鍋町へと向かうのだった。
――――――――――――――――――――
京橋南鍋町
「遠目から見えていたが・・・」
「・・・酷い・・・」
到着した俺達が見た物は辺り一面火の海と化した町並みだった。
この時代、長屋は全て木造で一度火の手が上がると次々と燃え移る。その為、次に燃え移りそうな家屋を潰す事で延焼を防ぐ手段を取っているのだが、この日は南から吹いた風に煽られ火の手は留まる事が無かった。
「と、とにかく逃げ遅れた人達の救助と報告にあった妖怪を見つけないと!」
燃え盛る業火の中、俺達は捜索を開始する。
「彼処に人が!菊理!」
「凍れ!!」
菊理が氷の魔法で周囲の瓦礫を凍らすと俺と朧が生き埋めの人を運び出すが・・・
「しっかり!・・・くそっ!」
「遺体だけでも運び出しまひょ。行き方知れずよりかはよっぽどマシおす・・・」
手遅れなのは分かっているが何もしないよりかはマシだと救助を続けていく。
どれ程の時が過ぎたか分からないが粗方救助した時長谷川様が早馬で駆けつけてきた。
「浅の字!北の方に火の手が広がっている!そっちの方も頼む!」
「長谷川様!分かりました!皆、北へ向かう・・・」
業火の中、突然轟音と共に家屋の一部が爆ぜる。そして現れたのは金に輝く頭髪の20代の男性と黒髪を両端で括った10歳位の異国の服を着た少女だった。
「・・・ったく、黒岩の野郎、何が風を吹かすだけの簡単なお仕事だ。Inferno並みじゃねぇかよ。」
「・・・予想できた。」
「けどよぅ。ここまでひでぇのは・・・あ?逃げ遅れ・・・じゃねぇな。」
何者かは分からないが今、黒岩の名が出てきた・・・と言う事は。
「・・・長谷川様。」
「あぁ・・・よぅ兄ぃちゃん達、黒岩の関係者かい?だったら、ちぃとばかり話を聞かせちゃあくんねぇか?」
長谷川様が腰の得物を見せて睨む。しかし二人は平然と俺達を見ている。
「どうやらこの国のGuardianって奴だな。はっ、それも女神まで居やがる。」
「・・・面倒。」
「さっきから聞き慣れん言葉ぁ使ってる所を見ると、おめぇさん等、この国の人間じゃあねぇな?何者だ?」
「誰だって良いだろ・・・いや、そこの兄さんは・・・成る程、あんたがそうか。だったら話は別だ。俺の名は・・・」
突如、俺の視界が暗くなる。何が起きたのか気付いた時、俺は地面に叩き付けられていた。
「・・・遅ぇな。俺の名はテリー。テリー・マイヤード。てめえの先輩、2代目
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