考えるな!感じるんや!
あの後、どういう風に組織的に活動していくか、どういう役割分担をしていくかの協議をし一旦解散となった。
「悪ぃ、浅太さん。ちょいええか?」
天羽から声をかけられ後についていく。着いた先は小さな掘っ建て小屋だった。
「さて、何かな?」
「・・・見た所、格闘戦特化やな・・・なぁもっと強く成りたくないか?」
「そりゃね。農民やりながら悪鬼退治をやろうとしてるんだ。出来る事を増やさないと不可能だと思っている。」
俺のその言葉を聞いた天羽は軽く頷く。
「なら、あんたには色々教えとかないといけんな。まず、大前提何だが「調停者」の役割は知っとるか?」
「天界と魔界、人間界の均衡を保つ・・・だったよな。」
「そや。けどな、実際には少しちゃう。」
違うのか?魔王からそう聞いているんだが・・・
「・・・やっぱな。だから俺達転生者が居るんだがな。じゃあ、分かりやすく解説するな。」
「・・・頼む。」
その後色々と教えてもらった。
その内容を纏めるとこうだ。
天使と魔王からは世界の均衡をと聞かされていたが、実際には天界に復讐する機会を狙っている魔界側が下っ端を使って人間界を掌握するのを防ぎ、天界側が動かない様にする事が「調停者」の役割なんだとか。
「均衡を保つのとどう違うんだ?あまり差異は無い様だけど・・・」
「そやな・・・悪魔がいらん事すると人間にとって実害が有るが天界が動くと・・・どうなると思う?」
どうとは?
天界が動くと悪魔が倒される・・・んじゃ無いのか?
「そやなぁ・・・分かりやすく言うと、都市がってこの言い方だと浅太さんは分からんな。例えば江戸の町が悪魔に支配されたとしても天界はあまり動かない。動いたとしても天使2体程来るぐらいだ。悪魔が何れだけ大量に居てもな。で、その規模や出てくる悪魔の質が高くなると今度は20体程の軍団がやって来る。それでもダメなら100体規模かもしくは逆に撤退する。」
「撤退?と言うか基準が分かりにくいな。」
「しょうがないさ。悪魔以上に不介入・不可侵の規律を守っているから融通が利かない頭でっかちの集団だからな。そうやなぁ・・・浅太さんにも分かりやすく言うと、此処に畑の害虫を一掃できる薬が有るとする。で、それを使えば害虫は駆除できるが益虫も一掃してしまう。どうする?」
何その良いのか悪いのか分からない薬は。確かに害虫が居なくなるのは有難いが益虫が居なくなるのは本末転倒な気もする。
「・・・俺は使わないかな。それで収穫した物が旨いかどうかも分からないし。」
「普通はそう考えるけどな。天界側は躊躇わずに使うぞ。悪しき者を一掃する事こそ正義!ってな感じでな。」
凄く極端な気もするがそれが本当なら看過できない。
「・・・成る程、得心がいった。つまりならず者を退治していかないと関係の無い、それこそ全人類が滅亡しかねない、と言う事か。」
「理解が早くて助かるわ。ま、それが調停者のお仕事って訳。で、そんな戦いをするに当たって調停者は何よりも強くなくっちゃいけないんよ。それこそ神よりもだ。」
「随分と苦労しそうな事だ・・・それに女神には勝てそうにない。特に菊理にはな。」
「違いない。さて、冗談は置いといて、こっからが本番。まずは初歩的な事からやっていこか。魔法の使い方は知っとるか?」
魔法か・・・確か菊理がたまに使っている傷を癒したり周りを凍らせたりする「あれ」の事かな?
「いや、全く知らない。魔法ってあれだろ、傷を癒したり周りを凍らせたりする奴の事だろ?」
「そうそれそれ。そっか知らんか・・・んじゃ先ず魔力の感じ方からやるかな・・・」
そこから俺の魔法修行が始まった。
先ず魔力その物を感じる事から開始したがこれは上手くいった。天使からの支援や菊理の支援が過去にあった為、それを思い出すだけで感じる事はできた。
「・・・っくはー!難しいな!」
「拳に魔力を集める・・・コツが分かりゃなー・・・律っさん、何か良い説明あるかな?」
途中から補助役として春部さんが参加して指導してくれてはいるが俺に才が無いのか上手くいかない。
「せやなー・・・拳に思いを乗せる位しか浮かばんわ。・・・確か感じる事は出来るんやな?」
「せやで。」
「だったら・・・考えるな!感じるんや!」
んな無茶苦茶な・・・しかしそれしかないのも事実。もう一度あの時手に宿った光と炎を思い出す・・・
「・・・くっ・・・ダメか!」
「・・・なぁ。外から魔力の流れを見てて思ったんやけど、もしかして2属性を出そうとしてんないか?」
「うちもそう思ったわ。うちも炎魔法使うからわかるんやけど、もう一つちゃうのが混ざっとる。何を思い浮かべたんや?」
「えっと・・・光と炎です。」
「「それや!」」
「律っさん、炎の魔力を彼に流して。俺が得意なのが風だからな。」
「ええよー。」
俺は春部さんから炎の魔力を受け取る・・・体に流れるこの魔力はとても熱い。それこそ触れる全てを灰にする程に・・・
「ほな、もう一度その魔力を拳に集めてみて?」
俺は言われるまま、拳に魔力を集める・・・体にある魔力を炎の熱として拳に集める。
「集中したまま目を開けてみ?」
手に魔力を集める意識を保ったままゆっくりと目を開けると俺の拳は燃えていた。
熱くは無い、がその炎が触れる全てを燃やす物だと直感的に理解できた。
「・・・できた・・・」
「おめでとう。後はそれが自然に、息する様に出来るまで練習やな。」
・・・・・・先は長そうだ。
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