「Get Ride! 」「アムド・・・言わすなや」

 秋津さん達と別れ俺は単身、着流しを着た素浪人の格好で秋津さんの部下達が面接している砦へと乗り込む。


 「頼もー!!」


 俺の声を聞きつけ押っ取り刀で役人の人がやってくる。


 「此方で強者を募っていると聞いたんやが合っとるか?」


 「おお!良く来てくださいました!どうぞ此方に!」


 俺は案内されるまま簡易に建てられた小屋へと入っていく。小屋の中には4.5畳の広さで中央に囲炉裏しかない。


 「此方でお待ちください。手筈が整い次第御呼び致しますので。」


 「ほいほい。で、1つお聞きしたいんやが。」


 「はい何で御座いましょうか。」


 「・・・手筈も何も疾うの昔に整っているんやろ?とっとと始めてくれんか?」


 俺の言葉に一瞬驚くも役人は直ぐに落ち着き冷静に返してくる。


 「何の事でしょうか。此方の準備はまだできて・・・」


 「しらばっくれんなや!」


 俺はわざと声を張り上げると同時に小屋の中の畳の1つに掌底を叩き込む。


 「ぐはっ!!」


 砕け散る畳の下で1人の侍が延びる。


 「他の奴等も出てこいや。小屋の下敷きになりとうなかったらな・・・」


 俺の脅しに怯んだか他の畳から3人が飛び出してきた。3人共恐怖に駆られたか全員が大上段。


 「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 俺はその3人を1人づつ伸していく。


 「まず右!」


 俺の右側の侍の腹に右肘を叩き込む。そのまま体を回転させ後ろから襲ってきた侍の更に後ろに回り込みがら空きの背に右手を伸ばし手刀に変えて叩き込む。


 「中央!そして!」


 「こ、この!」


 危うく倒れる中央の侍を斬りかけた最後の1人が無理矢理軌道を変え、突きを入れてくる。その突きを右に体を捻り回転によって遠心力を加えた左手の掌底を突き出された刀に当てそのまま体を回転させる。


 「うわっ!」


 軌道を変えられた事でバランスを崩した侍の背に更に遠心力を乗せた右足の踵を落とす。


 「これぞ天羽流梟技きょうぎ円鴟梟えんしきょうの型・右旋うせん」・・・何てな。」


 いかん。言ってて恥ずかしい。


 「・・・・・・・・・お、お見事・・・天羽流・・・流れる様な体捌き・・・まるで猛禽の鳥が獲物を捕らえるかの如き荒々しさと優雅さを兼ね備えた技!」


 目の前で行われた早業に驚いたのか唖然としながら解説してくれる役人さん。止めて!恥ずかしいから!


 「・・・お見事で御座いますな。」


 解説に内心悶えていると何時から居たのか1人の僧が役人さんを押し退けて近付いて来る。


 「あんたがここの頭か?」


 「いえ。拙僧は叡漠と申す者。この地にて集う強者の適正を見ております。まぁ、合否もしておりますがな。」


 まぁ、知ってるけどな。


 「で、俺は合格かい?」


 「そうで御座いますな・・・確かに今の戦い振りからして強さは申し分無い・・・ですが心の方はどうですかな?カーッ!!」


 突然眼を見開き叫ぶ僧侶。しかし・・・


 「で?」


 今間違い無く幻術を掛けたのだろうが悪いな。精神に作用する術は分かっていれば対処出来るんや。

 ・・・ちょっと危なかったのは内緒だ。


 「むむむ・・・」


 何が「むむむ・・・」だ!お前は馬超か。


 「どうやら今回は合格の様ですな叡漠殿?」


 叡漠の後ろから1人の役人が叡漠の首筋に刀をあてる。


 「・・・何のおつもりか。九郎殿。」


 「そろそろ茶番劇は終いですよ?叡漠殿?」


 叡漠は振り向こうとするも九郎と呼ばれた役人にあてられた刀によって振り向けない。

 そこに新たに人の気配を叡漠は感じ取る。


 「・・・御主等は先程の・・・確か武野吉忠とか言う童・・・それに安藤殿もか。」


 「先程は失礼したな。叡漠殿、いや悪しき者よ!」


 武野と呼ばれ侍が目の前の僧を悪しき者と呼んでいるって事は、俺等以外にも気付いている者が居たんだなと感心していると叡漠が刀に自ら刺さりながら武野達の方を振り向く。


 「な!」


 予想外の事に驚きを隠せず刀を引く武野。しかし当の本人は流れる血を気にも止めずにやりと笑う。

 

 「クカカカカ・・・もう少しだけ時を稼ぎたかったがバレているなら仕方無し。」


 叡漠が不敵に笑いながら地面をタンッと鳴らすとゴゴゴ・・・と地響きが鳴り響く。


 「いかん!離れろ!!」


 武野が叫ぶと同時に俺は目の前の役人の首根っこを掴んで小屋の奥まで飛び退き、九郎達もまた飛び退く。


 「愚かな人間共を喰らい尽くせ!」


 叡漠が叫ぶと大地が隆起し爆発する。

 小屋が吹き飛び土煙が立ち込める中現れたのは50mは有ろうかと思われる大百足。


 「お、お、大百足だ!!」


 「おーほっほっほっ!喰われて死ぬが良いわ!」


 大百足の頭に乗っかった叡漠が、何か急に気持ち悪い感じの笑い方をする。こいつはもしかして・・・?

 一瞬脳裏に疑問が浮かんだが直ぐにそれを無視し俺は周りを見る・・・どうやらこのデカブツを何とか出来るのは俺とあいつしか居ない。

 勿論、根津さんや律っさんを呼んでも良いが来るまでの間、武野や九郎達では少し荷が重い。

 此処はあいつと一緒に叩き潰す事にする。


 「・・・こいつはあれだ。トラップカード発動!Get Ride! 」


 大百足に向かいながら安藤にしか、いや俺達だから分かるネタをぶっ込む。


 「アムド・・・言わすなや。」


 そう言いながら安藤は俺と並び大百足と叡漠を睨み付ける。


 「詳しくは後で。行けるな?」


 「ランページで行く?」


 「・・・俺が白い方で。」


 「飛べんのか?」


 「あぁ・・・じゃ、おっ先ー!」


 良いながら俺は梟の悪魔へと変身し一気に大百足へと飛ぶ。あ、此処に来るまでに変身時の魔力放出を押さえる練習しながら来たから周りに被害は無いですよ?多分。


 「変身できんのんかい!」


 突っ込みながら安藤も大百足の下まで一気に肉薄する。


 「何!き、貴様!!何も・・・ぐおっ!」


 叡漠が俺の変身に動揺するが足元の大百足がぐらつきバランスを崩す。安藤が大百足にアッパーを叩き込んだからだ。


 「ぅおらっ!」


 安藤が大百足に入れたアッパーそのままに大百足ごと上空へと跳び上がる。50mは有ろうかと言う巨体が中を舞うと言う常識では有り得ない光景にその場に居た誰もが唖然となる。


 「堕ちろ!」


 先行して上空へ飛んでいた俺は上がってきた大百足を俺は地面へと蹴り返す。あ、急な方向転換に耐えられずに叡漠が空中に放り出された。


 「パス!」


 安藤が大百足をもう一度上空へと上げる。

 あ、放り出された叡漠が地面に墜落した。


 「トス!」


 再び上がってきた大百足を俺は安藤の元へと蹴り返す。


 「アタァァァァァクッ!」


 叫びながら安藤が大百足を地面に向けて叩きつける。

 凄まじい爆音と共に砂埃の中に大百足が消えていく。

 俺は安藤の横に降り立ち変身を解く。


 「やったぜ。」


 「だな。」

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