どう言う事だってばよ?

 「そうそう、さっき他にもそう言った組織が有るかもって言ったけど、秋津さんは知っとる?」


 「他の組織で御座るか。ふむ・・・何れ接触も有ると思われる故、幾つか御教え致しましょうぞ。」


 やはり有ったか。それも複数。

 全国全てをカバーしている訳では無いからそんなに数は無いだろうけど。


 「まず、一番大きくこの日の本を守護しているのは、朝廷直下の陰陽師集団「葛(くず)」で御座りますな。そしてそれらを補佐する「九鬼(くき)」の名を持つ忍び集団。朝廷とは別に将軍家が創設したとされる将軍家直下の「 焔王光」にその下部組織「蛟(みずち)」がありますな。」


 上の方だけでもそれなりに組織有るのな。史実や良く聞く「狐」と「烏」の名前がでないのはやっぱ実際の過去とは違うからか、もしくは違う次元だからなんだろうか。


 「・・・「葛」?「葛の葉」ではなく?「八咫烏」も居ないな。」


 「・・・・・・貴方様は何処でその名をお知りになった・・・」


 秋津さんの顔が驚愕を通り越して呆れた顔になる。

 知ってるっちゃ知ってる・・・ゲームでだけど。しかし、たかがゲームと侮るなかれ。ゲームのシナリオを考えるデザイナー達は設定1つ考える為に膨大な量の資料を漁り、矛盾が無い様に組み立て、クライアントが食い付き、納得し、売れると思わせる為により細かく作り込む為、実在する人物・組織・歴史等を参考にしたり作品に取り込んだりする。

 故にユーザーは興味抱き、同じ様に調べ、感化されたりされなかったりしてユーザー側も知識を深める。

 とは言え正直に話しても全く通じない為、さらっと誤魔化しておこう。


 「・・・秘密だ。なぁ、律っさん?」


 「ちょっ!うちまで巻き込まんといてぇな!」


 ついでにさらっと律っさんを巻き込んでみた。


 「・・・その様子だと律も知っておるのか・・・」


 秋津さんの肩がガックリ落ちる。


 「とは言え某も名前しか知らぬで御座るが、その2つの名は本能寺の後、我等草の間でも聞かなくなり申した。その後関ヶ原の合戦に於いて「葛」の名が挙がる様になり申した。」


 成る程・・・本能寺となれば織田信長公。かの第六天魔王を名乗って天下統一を目指した武将。そしてこの世界が似て非なる別次元で史実通りでは無いとなるとその時に本物の魔王となって総力戦でもしたと考えられる。

 その後、壊滅しかかった組織を再編し、関ヶ原の時に漸く機能しだした・・・と考えられるよな。

 発想としてはぶっ飛んじゃいるが、俺等の様な悪魔が普通に居るは、結界みたいな物が普通にお札で機能している現状、有り得る事ではある。


 異論は認めるが。


 「九鬼」については九鬼水軍しか知らんな。それも名前だけだ。そこら辺は律っさんの方が知ってそうだ。


 「なぁ、「焔王光」と「蛟」についてはうちは聞いた事無いんやけど・・・師匠は?」


 「うーん、「蛟」は水を司る龍ってぐらいしか・・・もう1個は知らん。」


 「何でもお上の信仰している宗教かららしいので御座るが・・・我等が殿は「吉川神道」で御座るからな。分からぬで御座る。」


 分かんないのはしゃーない。

 てか、その「吉川神道」も分からん。


 「あー・・・その「吉川神道」っての?俺は知らんのやけど・・・」


 「ふむ。「吉川神道」とはかの神道家、吉川惟足(よしかわこれたり)氏によって唱えられた道徳的側面の強い神道の説で御座る。神道と一言で申しても、それぞれの解釈の違い等によっていくつかの流派に別れており申してな、「吉川神道」はその内の1つでござる。」


 解説どうも、っても専門家じゃないから細かい事は分からん。


 「まぁ、「神道」である事には変わらんからそこは触れる程度でええか。それよりも近い内接触してくる、又は接触しやすい組織は有るんか?」


 「近い内には御座いませぬが、江戸近郊に1つ。立場的には「焔王光」の下部の下部で御座るが。」


 それって何て言うかヤーさん子飼いのチンピラレベルなんじゃ・・・


 「大丈夫か?それ。「焔王光」の下部なら「蛟」・・・その下って事はそこらのゴロツキと変わらんのや無いか?」


 「そこは御安心を。調査の結果、最近出来た集団では御座るが「蛟」の幹部を含めた者達で、構成員は人間が2人、妖の者が5匹で人間の内1人が「蛟」の幹部で御座りますな。」


 なんじゃそりゃ。


 「・・・リーダー、あー・・・頭領はその幹部か?だとしたら悪魔・・・妖の者を5匹も従える程の猛者って事やな・・・」


 秋津さんにも意味が分かる様に日本語に戻しつつ、その集団?を想像してみる。

 数は少ないが構成員の大半が悪魔であるならばそこらのゴロツキ何かとは根本的に違ってくる。

 弱い悪魔も確かに存在する。下手すれば子供に負ける悪魔だって居るはずだ。

 しかし「悪魔である」と言うのは重要で、存在するだけで戦う事のできない者達からすれば驚異でしかない。

 そう考えればその集団の名が挙がるのも納得できる。


 「否、違いますれば・・・」


 「へ?」


 「幹部は「蛟」上層部との繋ぎ役らしいと伝え聞いておりまする。」


 秋津さんの一言で俺の予想は物の見事に外された。


 「は?じゃあ、妖の者の1体が・・・」


 「それも違いますな。頭領は人間で御座りますな。」


 うっそーん。


 「某の部下が調べた?所、その物は最近まで百姓をしておったとの事。」


 うん、その百姓さん何があったんや。偶々悪魔と遭遇して覚醒でもしたんか?


 「・・・信じられんな・・・てか、調査の所が何で疑問なんや?」


 「いや、それが・・・」


 なんや言い難そうやな。


 「十郎?どないしたん?」


 「その・・・途中迄は良かったので御座るが・・・某の部下はあっさり捕らえられてその・・・」


 消された・・・と言うならその覚悟が最初っからあるだろうから、濁したりはしないはず。


 「身内の恥を晒す様でお恥ずかしい限りなので御座いますが・・・その、接待されてお土産にと、取れ立ての野菜を貰って帰ってきたので御座います・・・」


 「律っさんや・・・どう言う事だってばよ?」


 「・・・知らん。」

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