速さが足りない!

 開けた場所を探す為2人が離れたのを確認すると俺は他の木の伐採をしながら後ろに居る人物に声をかける。


 「なあ?居るん分かっとるから、出てきたらどないや?敵や無いんやろ?」


 「・・・やはり気付かれていたか。」


 木の影から音も無く現れたのは薬売りの姿をした10代後半から20代位の兄さん。

 身のこなしや気配の断ち方が格好とマッチしていないから恐らく「草」とか言われる忍者だろうな。


 「気付いたのはさっきやけどな。何時からつけてたんな?」


 「答える必要があるか?」


 「無いな。せやけど何の用かは聞かせてもらわなな?」


 「・・・貴公が信に足る者かを見極める為に。」


 信に足るねぇ・・・

 て事は誰かの命令で俺等を監視していた訳だ・・・誰が?


 「誰が俺等を見張れと言った?」


 「知る必要は無い。」


 そらそうやろな。


 「そっちはそれでええかもしれんがな?こっちはそうはいかん。急にどっかのお偉いさんが「報告は聞いた。儂に仕えろ。」とかいいながら出てきても仕える義理はないし、仮にそうでなくても俺等は簡単には制御できんぞ?」


 とかさらっと脅しかけてみた。


 「ついでに言わせてもらえば、だ。今ここであんたを消してもこっちはなーんも困らんし、代わりが来ても消すだけや。さ、どうする?味方に引き込むんやったら今やで?正直に話してみんか?」


 「・・・分かった。こっちの負けだ。話そう。」


 うっし、脅しが効いたな。

 だが、この手は今回だけやなー。話す余地が有ったから良いようなもんの、問答無用で襲撃してきていたら尻尾切りで面倒な事になってたろうし。


 「で?トップの事は言えんやろうが目的ぐらいは言えるやろ?言ってみ?」


 「と・・・?何の事か分からんが我等の御館様はとある男の悪しき企みを防ぐ為、力ある者を集めておいででな。」


 悪しき企み?


 もしかして根津さんや律っさんさんから聞いた黒岩案件か?ってんな訳無いな。

 何だかんだ言っても日本はそれなりに広い。そりゃ世界と比べたら小さな島国だが、そこに住んでいる俺等からすれば十分な広さだ。それが向こうから接触してきたとは言えこっちがその内向き合わなければいけない問題と競合するとは考えにくい。


 「・・・その「悪しき企み」ってのが分からんが力ある者を探していた所に俺等が居たから、そんで俺等に目をつけたと?」


 「いいや、目をつけたのは貴殿のみだ。」


 俺だけとはどういう事だ?自惚れでは無いが、この過去の時代において俺はかなり異質な上にそこそこ強いと思っている。

 だから俺に目をつけるのは分かるが近くに根津さんや律っさんも居る。

 その2人を・・・女性と言う事で贔屓目に見ても、俺等を監視していたのなら強いのはわかるはず・・・スカウトしない手は無い。


 「あー・・・一応聞くがあの2人は誘わないんか?めっさ強いで?」


 「それには及ばん。」


 「やっぱ女性だからか?」


 「そうではない。2人に会わせてくれ。さすれば全て得心できる。」


 と、言われてもな。そうホイホイ信用できないんだが。


 「うーん・・・」


 まあ、そう簡単にはやられはしない・・・と思うから、大丈夫かな?


 「分かった。ただ、用心だけはさしてくれ。」


 「当然だな。了解した。」


 俺は念の為に男の手を魔力で縛り2人を探す。縛った時に男が驚いていたが無視した。


 「さってと。2人はどこにアナライズ?」


 ・・・言ってはみたが半径50m程度しか解析できないから流石に見つからない。


 「・・・あかん。なぁ兄さんや。2人が何処まで行ったか分からんから、しばらく待っててくれんか?」


 「了解だ。ただ、放置して行くのだけは止めてもらいたい・・・その手があったかみたいな顔も止めていただきたい・・・」


 冗談やがな。




1時間後




 「お待たせー!良い場所無かったよ!」


 木々の間から声が聞こえ、そっちを向くと2人が帰ってきた。


 「あ、2人ともお帰り。そっか無かったか。うーん木材は揃ったからここを地ならしして建てるかな・・・」


 自分が伐採・加工した木材を見ながら取るべき行動を考える。

 伐採自体は直ぐに終わり、直ぐにでも小屋を作れる様に同じ長さにカットして積んどいたのだが、それも風の刃で直ぐにできたからすんごく暇だった。


 「・・・えっとそちらの方は?」


 根津さんが聞くと同時に律っさんが空かさず前へ出て護ろうとする・・・のは良いけど目視した段階で護りに入らなあかんと思うのだが。

 ここしばらく俺が周囲の警戒してたからか少し気が抜けているのか、動きが遅い・・・と言うか何よりも・・・


 「速さが足りない!」


 俺のその言葉に根津さんは頭に?を浮かべたが、律っさんは苦い顔をし、兄さんは何故かうんうんと頷いている。


 「全くですな。この者の様な強者の側で安心感があるのは分かるが、側近としては失格でござるな。気構えがなっとらん。美津様に何かあったら打ち首どころではすまんぞ。市中引き回しの上、打ち首、獄門の刑に処されても文句は言えんぞ?」


 い、いや、そうなんだけどね?

 後で軽く注意するつもりだったのになんもそこまで言わんでもええやん?

 律っさん、泣きそうになってるし根津さんはおろおろしだすし・・・何この兄さん、何なん?ドSかな?


「さて、そんな事より・・・美津様、御久しゅう御座います。」


 兄さんは根津さんの前で平伏する。

 てか、切り替え速っ!


 「そ、その物言いといい切り替えの早さといい・・・もしや。」


 「知り合い?」


 「ええ・・・彼、十郎さんは子供の時に私と律っちゃんの世話役をしてくれてた人で元服を迎えた後、義父の命で下屋敷勤めになったはず・・・」


 「いかにも。然れどそれは殿から某に命ぜられた御役の為の方便で御座います。」


 兄さんは平伏したままだが、ちょっと重要な話をしたな。なる、兄さんが得心すると言ったのが分かってきた。


 「義父上から?」


 「はっ。某は元服以前より殿の命で「草」としての修練を密かに積み、元服の後に殿の命で各地へと赴く「草」として過ごしておりました。」


 「それでその様な姿をしておられるのですね。」


 「はっ。美津様におかれましては遂に悲願であられた秘術を修得成された様で、この十郎、元世話役として感服いたしております。」


 ん?悲願の秘術?


 「ええ・・・とても辛く、長い道のりでした・・・」


 何遠い目をしとるんじゃ・・・服着れる様になっただけじゃないか・・・

 魔力の使い方を教えてなかった律っさん当の本人は明後日の方を見てるし・・・


 「秘術でも何でもねーよ!」


 って、叫びたい。




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2000PV突破しました!


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未だ未熟な文章・語力ですが、どうか今後ともよろしくお願いいたします!

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