良く分からない軌道で跳び蹴りをするヒーローが居たなぁ・・・

 ちまちまと衣服を作り続けてどれ程たったのだろうか。

 私は、より速く、より緻密に色々なデザインで作成出来る様になってきた。

 そして作成した物をより長時間維持できる様にもなってきた。

 今なら自分の衣服くらいなら消滅する事無く、ずっと着ていられると思う。



 「それにしても・・・」




 うん。




 作りすぎた。




 見上げる程の小高い山になった大量の衣類を私は呆然と見上げる。

 調子に乗ってひたすら作成した結果がこれだよ・・・



 「はぁ・・・どうしよう・・・」



 う~んと唸りながらあれこれ考えて捻り出した結論は・・・



 「良し!これ等を使って新しいのを作ろう!そうだ、それが良い!そうしよう!」



 衣類の山に手をかざし、元の魔力へと戻していくとあれだけあった衣類が直径15cm程の魔力の球になる。


 「成る程「息をするような物」って意味が良くわかる・・・あれだけ作ってこの程度の魔力しか使ってなかったんだ・・・」


 最初の方の魔力も混ざっているから、実際にはもっと少なくなるはず。

 後はデザインどうしよう?やっぱり可愛いのが良いかな?それとも格好いい鎧とか?でも私ファンタジー系はあんまり詳しくないしなー・・・とか考えていたら脳裏に1つのシルエットが浮かんできてその姿が離れなくなった。


 「・・・しっくりくるけど・・・今迄と大して変わんない様な気がする・・・」


 あ、今は彰さんが作ってくれたTシャツ・ジーパン姿に戻してますよ?全裸じゃ無いですよ?


 ともかく、集まった魔力でその姿になろうとイメージした瞬間、突然物凄い突風・・・いや、衝撃波が襲いかかってきた。


 「え?ちょっ!・・・きゃ!!」


 何が起こったのか分からないまま、衝撃波に耐えきれず尻餅をついてしまった。


 「何!今の!ミッチー大丈夫!?」


 衝撃波に気づいた律っちゃんが駆け寄ってくる。


 「大丈夫!・・・でも今のは一体・・・あ、彰さんは?」


 「アッキー師匠?見とらんなぁ・・・」


 「そっか・・・仕方ない。2人で見に行ってみようか。」


 「せやな。」


 意を決して私達は衝撃波が来た方向へと向かって行った。








 「ちょっ・・・何じゃこりゃ!!」


 「うわ、すご・・・」


 私達が見たものは薙ぎ倒された木々と恐らく中心部から根こそぎ飛ばされたであろう木々の無惨な光景。


 「隕石・・・にしてはクレーターが殆ど無いし・・・」


 「竜巻・・・やったら渦ぅ巻いとるはずやしなぁ・・・まるで何かが爆発した見たいになっとんのぅ・・・なっ!ミッチー!あそこ!中心部に何か居る!」


 律っちゃんが指差す方向、50m程距離があるのだろうか、爆発?の中心部を見るとそこにどす黒い人影が立っていた。

 その姿は、まるで猛禽類かふくろうを思わす顔に猛獣の様な三本爪が生えた腕、太もも辺りは辛うじて人の様だけど足から生えたその爪は、やはり、猛禽類の持つ鋭く巨大な鉤爪で、これではまるで・・・


 「・・・ふくろうの悪魔・・・」


 その悪魔が片手をこちらに挙げた瞬間、三本の風の刃が地面を抉りながら迫ってきた。


 「危ない!!」


 私は咄嗟に律っちゃんを突飛ばし、その反動を使って反対側に飛び退く。

 ぎりぎりで風の刃を避けたけど、その刃は後ろの木々を簡単に引き裂いていく。


 「な、何!今の!」


 「ご、ごめん!助かった!」


 風の刃が通った後の3本の抉れた地面がその威力を物語る。


 「な、何なん!?あいつは!?」


 「追手・・・にしては滅茶苦茶すぎない?もしかして黒岩の言ってた・・・」


 「そんな!じゃあ、ついに溢れだしたん!?」


 あり得ない・・・あんなのが出てこない様に今まで儀式を頑張ってたのに・・・

 積み重ねてきた努力が無駄となった事実に打ちひしがれ、全身の力が抜けていき私はその場にへたりこみ項垂れてしまった。


  「あかん!!」


 律っちゃんが叫ぶ声が聞こえると同時にドンッと音が響き律っちゃんが後ろの方へ飛ばされていく。

 恐る恐る顔を挙げてみると、そこには「梟の悪魔」が左手を突き出して立っていた。




 「・・・あ・・・あぁ・・・」




 声がでない。




 この梟の悪魔はあの距離を一瞬で詰めてきたんだ。




 今更どうこうできない。




 脳裏に今まで生きてきた思い出が走馬燈の様に甦り、最後に浮かんだのは・・・




 「・・・あき・・・ら・・・さん・・・」




 自分でも不思議だったのだが、最後に彰さんがあれこれ考えながらも私達にできる事を教えてくれた時に見た彼の笑顔だった。



 そう言えば彼は何処に居るのだろう?



 彼の事だ、こんな時は直ぐに駆けつけてくるはず・・・それとも私達が知らないだけで別の場所で同じ様に何かと戦っているのだろうか?

 そんな事を考えながら梟の悪魔を見上げているとそいつは突然遥か上空へと飛び上がって行く。

 こっちの時代に来る前にああやって飛び上がって行って、良く分からない軌道で跳び蹴りをするヒーローが居たなぁ・・・とか考えながら見ていると梟の悪魔は両腕を振り下ろしながら落下してきた。

 凄まじい音と衝撃が響き、私は飛ばされそうになったが何とか耐える。

 巻き上がった土煙が晴れていく中、私が見たのは・・・










 「すみませんでしたー!!!」









 土下座だった。

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