大体分かった
「長屋の契り」(春部さん命名)から数日が経ち、根津さんも目を覚まし、情報を集めながら人目の付かない森の中で俺達はそれぞれの欠点を補う為、3人で修行を行っていた。
「こう!」
「うわっと!・・・なるほど、あそこでの選択肢は下からだけじゃないんだな・・・」
俺と春部さんはレベル差を生かしての実践経験を積む(俺自身は戦闘における駆け引きの修得とあわよくば1レベでも上がれば良いなって感じ)事を。根津さんはとにかく魔力操作の特訓をそれぞれで行い、地力をしっかりと固める様に行う。
そしてその日の晩にそれぞれの進捗度合いを報告しあって方向性を決めていく、と言うのをこの数日行っていた。
その中で俺達はこっちに来る前の事を話し合い、理解し合って来た為、2人は俺の事を名前で(春部さんだけアッキー師匠)呼ぶ様になり、俺もなるべく気楽に呼ぶ様になっていた。
「く・・・中々当たんない・・・」
「いや、でもかなり危なかったよ。ベースが高いから俺が避けれてるだけやし。それにな?徐々にだけど律っさんのレベルが上がってきとる。」
「ほんまに!い、い、今何れくらい!?何レベル上がったの!」
本気で強くなりたいのだろう、律っさんがかなり喰い気味に聞いてくるが・・・
「おおぅ!焦るな焦るな!まだ上がり始めた所だから2レベしか上がってないって!」
数日の修行だけでそんだけ上がる事自体、凄い事なのだが焦った所で良い結果が出ないと思・・・
「うっそ!もう2レベル上がったの!やったー!!」
思った以上に喜ばれた。
「あー・・・とは言え、まだ40だからな?根津さんにも届いてないからな?」
「鏡、鏡っと。えーと、新しいスキルとか覚えとらんかなー?ステの何処が上がったんかな?あ、このスキルもしかして出来たら良いなって思ってた奴かなー?あ、新しくスキルが覚えられる!・・・何れか選択できるんか・・・迷うなー・・・ん?何?」
聞いちゃいねぇ・・・
「いや、何もない。今まで修得出来てなかった物と合わせてじっくり選んで・・・」
「はいはーい!」
律っさんは鏡アナライズステータスシステム(通称
所謂、ステ振り・スキル取りって奴なんだが、これはその人の個性なんかの性格が良く現れる。
俺もそうだが、律っさんはスキル取りなんかに凄い拘るタイプでアナライズを修得してから毎晩の様に鏡越しに自分のステータスとにらめっこしている。
若干、和マンチ(和製マンチキン。TRPGのプレイスタイルの1つで物語を楽しむことよりも、自分のキャラクターのルール上での強さを追求する、ルール至上主義者なプレイヤー。元々のマンチ、マンチキン又は洋マンチは我が儘仕放題のクソガキ)な気がしないでもないが、俺も和マンチとルーニー(受け狙いばかりやるプレイヤー)を足して割ったらえらい事に(主に笑いの方に)なるプレイヤーな為、強く言えないんだがな。
一方、根津さんはと言うと・・・
「こうで・・・こう!う~ん・・・これはこうで・・・こう!」
「・・・精が出るのう・・・」
「ええ!上手く出来る様になってきたからね!」
顔のペイントが無ければアイドルか何かかって感じの良い笑顔で振り向く。
「うん。確かに出来も持続時間も上がっては来とるね。でもさ?」
目の前には彼女の魔力で作成された衣類が山の様に積み上げられていた(下着含む)
「ちょーっと作りすぎなんやないかな?」
「え?そう?いやー、向こうじゃお金かかるじゃない?それが魔力で作れるんだよ?無料だよ、無料!!コツも掴めてきたし作る時間もほら!」
嬉々とした笑顔でくるんとその場で回転すると一瞬で白いフリルがふんだんにあしらわれたドレス、所謂「白ゴス」に身を包む。
「こんなのも一瞬で作れちゃう様になったんだよ!」
「お、おう・・・」
褒めて!って感じでどや顔しとるが、一言言いたい。
めっちゃ言いたい。
スカルペイントの身長170超えの女性が白ゴス着てどや顔してるのは、おじさん的にきついもんがあるって言いたい。
でも言えんよなぁ・・・
こんなキラッキラッの笑顔だと言えんよなぁ・・・
「よ、良ぉ、頑張ったね・・・せやけど後々の事を考えて服装を絞って・・・な?」
「もっちろん!」と笑顔で答えるも、ありゃあ理解しとらんな。
ともかく、2人が自身の欠点を補っている間、自分だけ何もしていないのもどうかと思うので、座れそうな岩に腰掛け、瞑想を始める。
やる事は1つ。
さっきまで肌で感じていた律っさんの槍の動きを脳内再生し細かい動きをトレースする。
成る程。
扱う得物がランスな為に動きが突きに特化しているから突く場所さえ分かれば軌道が読み易いのか・・・それにランスは払いによる打撃(縦横のX・Y軸の直線)と多角からの突き(Z軸の直線)を多用する為にパターンが限られてくる・・・
「・・・よし、やるべき事は決まった。」
俺は瞑想を止め、自身の魔力で武器を生み出す。
「こんな所か・・・な?」
はっきり言って俺にはこの高レベル・高ステータスを活かせられるだけの技や技術とかは知識としても持ち合わせていない。
それでいて、斬る・突く・叩く・引っ掻ける・受ける・流すが出来てかつ初心者でも使える武器はこれぐらいしか知らない。
「少し使ってみっか?何時でも使える様に瞬間装備の練習もしとこう。」
瞬間で装備出来れば相手にとって不意討ち以上の効果を期待できるはず。
「・・・ついでに足も使える様に具足も作っておこう。」
魔力を脚に集め、何か・・・鳥の足の様な物が自身の脚を覆うイメージをする。
脚が頭に想い描いた形に変化した。
「あ、しまった・・・これじゃ、変身じゃん・・・」
1度解除してもう1度イメージしても具足にならず脚が鳥の化け物の様な形になる。
「1度定着したイメージは払拭しにくいな・・・んー・・・ん?・・・う~ん。」
どうにか払拭しようと他の物をイメージしようとして、一瞬何かが過るもそれで良いのかと頭を捻る。
「大体分かった・・・やってみるか・・・」
意を決してどうせならと全身を覆う様にイメージする。
その時辺りが吹き飛んだ。
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