俺が!俺達が!
あの後、監視している事がバレた部屋は危険と判断し今だ寝続ける根津さんを背負い、敢えて大名屋敷に近い空き家(長屋だった)に3人で隠れている。
「六畳一間とは良く言ったもんだな・・・めっさ狭いわ・・・」
「嫌ならどうぞ、何処へとなりと行って野垂れ死んでください。遠慮為さらずに。」
「だから酷無い!?」
春部さんはまだ出会ったばかりだから警戒している・・・のは分かるけど、棘が強い。
「警戒するのは分かるけどな、そこまで言わんでも良くないか?」
「五月蝿いです。そんな事よりさっさとスキルを教えやがれです。」
「何かキャラ違くないか?それに俺の召喚主は彼女だ。根津さんの許可無しには離れる事も出来ん。スキルはほれ。」
俺は1枚の名刺サイズのカードを差し出す。春部さんはそれを受け取りマジマジと見つめる。
「これは?」
「俺の使ってる「アナライズ」のスキルカード。使えば覚えられるぞ。」
「それってチートじゃない?カードがあれば誰でもどんなスキルも覚え放題、使いたい放題じゃない。」
彼女の言う事はもっともなのだが、ポイッと渡したのはちょっとした理由がある。
「そう思うやん?でもそのカードはその1枚しかないんや。」
「これだけ?・・・そんな貴重な物を私に渡して何企んでやがりますか?」
「何もないて!それに渡す事に関しては一向に構わん。朝から感じていた事だけど、春部さん、根津さんの周りに対してかなり警戒しとるよね?
根津さんも昨日話している間、かなりの頻度で春部さんの事を話しているから、お互いが大切に思ってんやなって。」
「お互いが大切に」の辺りで春部さんの顔が真っ赤になっていく。
え?2人できてんの?百合の花でも咲いてんの?
「その反応・・・ま、まさか!」
「ち、ちちちちゃうて!!何考えとんや!そもそも彼女は妹と言うか姉と言うか・・・とにかく家族なんやから心配すんのは当然やろうが!!」
「いや!ちょっ!あぶな!悪かった!俺が悪かったから!」
狭い室内でランスで突きまくるのは止めて貰いたい。
「ぜーはーぜーはー・・・あっぶな・・・殺す気かい・・・」
「はーはーはー・・・いらん事いうたんお前やろうが・・・」
「・・・す、素は関西弁なのな・・・」
「ほ、ほっとけや・・・!」
お互いに1度落ち着いてから改めてスキルカードを使用する。
カードが微かに光り、掻き消える。
俺は春部さんが習得出来たかどうかを確認する為に彼女に「アナライズ」を使用するとステータスのスキル欄に「アナライズ」が追加されているのが確認できた。
「うん。きちんと習得できたようやな。使ってみ?」
若干戸惑いながらも彼女はスキルを使用する。
「・・・「アナライズ」・・・うわ!すっご・・・なぁ、この部屋、なんや結界が張られているって出とんやけど・・・」
「気ぃ付いた?じゃ、周り見てみ?四方にお札が張られとるやろ?」
春部さんは言われて周囲を見回すと「うん」と頷く。
「隠匿の結界・・・?内部の気配や音を外に漏らさない?・・・何やこれ?なしてこんなもんが張られとんのや?」
「分からんがよっぽど隠したいもんがあんのか、隠れる為にあんのか・・・どっちにせい、今の俺等にはありがたい事だから、暫く使わしてもろとこ。」
「せやな・・・と言うかあんたの事は見えんのか・・・ミッチーも名前位しか分からんし・・・」
「ミッチーって根津さんの事か?
まぁ、それはレベルが足りとらんからな。
自身が強くなれば見えるようになるし、逆に得体の知れないもんが居るって分かるから使い方次第やね。
ただ、欠点もあってずっと使ってはいられないのと、使っていない時にはステータス表示で不意討ち丸わかり、とかは無理。」
「成る程・・・本当に「鑑定」でしかないんやな・・・」
「そうそう。後は・・・春部さん、自分の「ステータス」って確認出来る?」
「いや、でけん。」
「なら・・・お、丁度良い所に。」
人の住んでる感の無いこの長屋に有るとは思わなかったが、女性が住んでいたのか偶々常備していただけか分からんが鏡が置いてあったので手に取って春部さんに手渡す。
「ほい。これ使って自分に「アナライズ」掛けてみ?」
春部さんは鏡を受け取り自分に向けてスキルを使用する。
「・・・1つ聞きたいんやけど・・・」
「何?」
「レベル38って高いの・・・?」
「う~ん・・・」
何て答えたらええんや・・・確かに普通の人間としたら強い。
しかし、俺は自分と根津さんのレベルしか見た事が無い為、この世界における一般的な平均値を知らない。
正直に話してみるか?
「どうだろう?高いとは思うんだが俺は一般的なレベルを知らんし・・・」
「さよか・・・あんたはどうなん?私からじゃあんたのレベル分からんし。」
「それは・・・」
俺は思わず言い澱む。
正直に言って良い物か・・・言った事でへこまれても困るし、ふざけんなとキレられても困るし・・・
「正直に言ってええで。
あんたに不意討ち避けられた段階で実力不足は理解しとる。」
自身との実力差を受け止める覚悟を持った真っ直ぐな目を見て俺は正直に言う事にした。
「・・・ほな、正直に言わしてもらうけどな・・・俺のレベルは55だ。」
「ぐっ、17の差か・・・なら私がやるべき事は1つやな・・・」
春部さんは顔を歪めながらもレベル差を受け止め、姿勢を正す。
「どうか私を強くしてください。お願いします。」
彼女なりの覚悟の現れだろう、出会ったばかりの俺に対し頭を下げる。
その想いの強さは並の物じゃないはずだ。
「・・・やっぱ春部さんは強いな。土下座なんてそうそう出来る事やない。
・・・分かった。俺自身もレベル以外に必要と思う物が欲しかった所だ。
共に強くなろうやないか。」
「・・・はい!」
顔を挙げた春部さんの表情には強い決意と意思が宿っていた。
俺も見習わなあかんな・・・
「あ、レベルは分かったけどあんた・・・いや、師匠の悪魔としての種族何なん?」
「師匠は止めてーや。せやな、種族は春部さんと同じ「堕天使」やな。」
「ふーん。じゃさ、ミッチーは何なん?」
「同じく「堕天使」やね。」
「と言う事は・・・俺が!俺達が!」
「堕天使だ!!って何処のロボット乗りテロリストやねん!」
お後がよろしいようで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます