なるほどなー

 光の輪の中へ飛び込んだ俺が召喚されたその場所は、切り開かれてはいるが恐らく森の中なんだろう。

 本来なら月明かりしか無い為、辺りを見ても真っ暗な筈だが、俺を助けた(魂だけだが)悪魔の力をほぼ受け継いだ為、昼の様にはっきりと見える。

 俺は目の前で頭を抱えている、恐らく俺を喚び出したであろう相手に失礼と知りながらここら辺は欲しいと頼んで手に入れたスキルをこっそり発動させる。


 (ステータス、そして目の前の奴にアナライズ・・・)


 俺の視界にのみ自信の状態や目の前の奴のステータスが浮かび上がる。




 なるほどなー。




 俺を転生させてくれたあの悪魔、かなりの実力者だったみたいだな。何せ目の前の奴よりも此方のレベルが上である。

 ただ、よくある転生・転移物のチートみたいな物や考え方次第で無双出来るってのとは違って本当に人間や悪魔が普通に出来る範囲でレベルが高いだけなのね。

 とは言うものの今使ったスキル自体、出来ない方からすれば十分チートなのだが。



 「あー・・・失敗したー・・・どーしよー・・・」


 目の前で落ち込んでいる悪魔にちょっとイラってきた。


 「おいこら。喚び出しといて失敗したは無いだろ。出てきたのがスライムなら分かるが、名乗りまで挙げたんだ。せめて「ライダーかよ!」ぐらいの突っ込み位入れーや。」


 俺は相手に文句を言いつつその姿に出来る限りのbe coolを心の中で唱える。


 (堕天使ネビロス・・・確かにパッと見た感じもステータスもそうだったがなんで全裸なんだ・・・もしかしてペイントで分からないと思ってんのか?だとしたら間抜けにも程があるぞ?胸はともかくは全く隠れられて無いんだぞ?は誤魔化しようが無いんだぞ?分かってんのか?何なの?バカなの?死ぬの?)


 「あ、ああ、そうだな、名乗りを挙げたんだったな・・・それは失礼を・・・」


 「ちょいまち。1つだけ確認させてくれ。・・・お前、それはわざとか?誘ってんのか?欲求不満か?それとも見せたい欲求でもあんのか?」


 「は?何の事だ?」


 「いや、だから・・・」


 とぼけているのか分からんが、俺は自分が羽織っているジャケット(あの悪魔に服とかを再構築する方法を教えてもらっていた)を目の前の悪魔に押し付ける。


 「いくら悪魔でもな?淫魔でも無い限りはそんな格好すんなよ。」



 「・・・あぁ、そう言う事か。すまない、以前からどんな服を着ようとしても何故か弾け飛ぶんだ。それ以来この外套のみだからな・・・気を使わしてすまんな。」



 そう言ってジャケットを返してくる。うん、この娘はド天然決定だわ。

 このままでも本人は気にしていないし、俺も絵的に楽しいがずっとこのままって訳にも行かない。


 「あんな?よー考えてみ?あんたは何もんだ?」


 「?私は堕天使のネビロスだ。それが?」


 「つまり悪魔だよな?」


 「そうだな。」


 「で俺は?」


 「自分の事が分からんのか?私に喚び出された悪魔だろ?」


 「・・・俺がおかしい様になっとるがまぁええ。そう、悪魔だよな?」


 「そ、そうだな・・・」


 俺はさっきから自分の服を引っ張って自分の事を「さん付け」で主張する禿げた芸人みたいに引っ張って意識させようとしているのだが・・・


 「・・・まだ気付かんのかい!あんな?俺はさっきから何を主張しとる?何をあんたに押し付けた?ええ加減気付けや!」


 「ひっ!」


 そこで怯みなや・・・


 「・・・いや別に怒っとらんからな?ただの突っ込みやからな?ハイハイ、1回落ちつこー・・・ヒッヒッフー・・・」


 「それはラマーズ法・・・」


 「ん、正解。いや、ちゃうちゃう。そうやない。まだ気付かん?」


 「だから何・・・あ。」


 ネビロスちゃんは視線を俺の渡したジャケットに落とす。



 漸く気付いたか。



 「これ、一帳羅だよね?何時砕けちゃうか分かんないから返すね。」



 「うん。おいちゃん、あんたが詐欺にあってないか心配になってきた。

 1から説明するけどな?俺達悪魔はこの世界に来るのにエネルギー体で顕れるよな?」


 「いきなり何を・・・まあ、そうだな。」


 「悪魔は世界に顕れる時、ある種のエネルギー体として顕現する。そして。ここ迄はオーケー?」


 ネビロスは過去に何かあったのか、遠い目をしながら「そうだな」と頷く。


 「とは言え契約締結していなくても。」


 ネビロスが黄昏始めた。マジで何があったんだよ。


 「・・・その様子だとえらい目にあったっぽいな・・・その事は後で聞くとして「世界に影響する・出来る事」はどんな事があるか分かるか?」


 「・・・?」


 コテンと首を傾げる姿は妙な可愛らしさがあるけど・・・


 「おいおい頼むぜ・・・同じ悪魔のよしみで教えてやる。

 色々あるが最たるは「会話」だな。それができなければ契約出来ないし。

 そして自身の「姿」の変更やね。悪魔でも身だしなみっちゅうもんは大事だかんな。

 ・・・俺がさっきから言いたかった事、理解したか?」


 「姿の変更か?それは召喚された悪魔だからだろ?・・・私は少し違うんだ。」


 「違う?何言っとんねん。悪魔である以上は何も変わらんと思うが・・・あ、もしかして「異世界転生したら悪魔でした」みたいなネタだから出来ないって思っているんじゃ・・・」


 俺自身そうなのだが流石に無いだろうと思いつつ冗談半分のつもりだったんだが・・・ネビロスの目が大きく見開かれて驚愕の表情になっている。


 なっちゃっている。


 「顔に出とる出とる!!・・・マジかーマジで?」


 「・・・マジで・・・」


 「はぁ・・・本当は教えたく無かったんだが・・・教えた方が早いな・・・いいか?今回だけ特別に教えてやるからよく聴けよ?」


 「あ、ああ、分かった。」


 ネビロスは少し興味が出たのかなんとも言えない複雑な表情で聞く態勢になった。



 「ええか?俺の本当の名前は「天羽 彰あもうあきら」俺もあんたと同じ「異世界転生したら悪魔になりました」だ。元人間だ。」



 「・・・・・・」


 「・・・・・・」


 「・・・・・・マジで?」


 「おう。」



 何とも言えん空気が流れた。




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