色々教えちゃくんねぇかい?
この回の途中から連続して解説回になっております。
多分にネタバレ要素が含まれていきますので御注意を。
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表通りに向かった俺は多分こっちだろうと思い、爆発音で叩き起こされ、何事かと見に来た野次馬達と逆方向へと向かう。
「浅兄ちゃん!!」
声をかけられた方を見るとボロボロではあるが姫?菊?が駆け寄ってくる。
「あ、無事だったぶはぁっ!」
駆け寄ると同時に放たれた平手打ちをかわせずにビターン!と頬を叩かれる。
「あれほど無茶な事はしないでって言ったのに何でいきなり飛び出してるんですかこのアホー!!」
突然の事で驚き固まる俺の胸をポカポカ叩きながら詰め寄る彼女に「すまない」と言いたい。
何故希望かって?
それはね?
「あー嬢ちゃん、気持ちは分からんではねぇんだがよ?もうちぃとだけ手加減してやっちゃあくれねぇか?そろそろ地面に埋まりそうだ。」
「見た目に反してドコドコとしたありえん音が聞こえとったしの。」
「ふぇっ?・・・きゃー!!浅兄ー!!」
はい、死にそうです。
その後、回復してもらった俺は泣きじゃくる菊なのか姫なのか不明の彼女をあやしながら長谷川様と瀧、ビフロンスとその奥に居る人物に声をかける。
「は、はは・・・ご心配をおかけしました。それと・・・皆を助けてくれてありがとう。」
「言ったであろう?今夜は満月。ついうっかり力を貸す者達も居ると。」
そう言った朧車さんの側に1匹の犬?の様な猫?の様な影が鎮座している。
「あの朧車さん。」
「朧で良い。」
「では朧さん・・・その子は?」
「ん?何の事じゃ?」
朧が首を傾げながら俺が指した方を見るとその影は突如俺に向かって飛んできた。
「うわぁっ!」
「きゃぁ!」
菊?姫?が未だに泣きながら抱きついていた為、避ける事ができずに2人してその影に倒される。
「痛っつ・・・何なんだ・・・うわっ!」
「え・・・え?」
ペロペロとその影に顔を舐められ皆がキョトンとする。長谷川様に至っては刀を大上段に構えたまま固まっている。
「ちょっ!おまっ!うぷっ」
「えっと・・・何この子・・・」
「やっとあえたー!あーるーじー!」
え?
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儀式中断後 午前1時頃
所変わって長谷川様の隠れ家。
その場所はこの時代にはよく在る長屋の一画で広さ的に8畳位しかない。しかし、結界が張られてるらしく長谷川様曰く、どんだけ叫んでも外に声どころか気配すら表に漏れないんだそうだ。
あの後「立ち話ってぇのもなんだ」と長谷川様に連れられ此処に来たのだけれど・・・とても狭い。
それもそのはず、8畳1間に俺、長谷川様、姫?、瀧、人間形態の朧さん、人の大きさに戻ったビフロンスに俺を「主」と呼ぶ犬だか猫だか分からない妖怪の6人と1匹いや5人と2匹が
瀧が気を効かせて黒猫姿になってくれて助かった・・・
「あのー・・・お二方いや1人と1匹?そろそろ離れてくれると会話しやすいんだけど・・・」
「嫌です。」
「いやだー」
「・・・んまぁ、狭ぇ場所だからよ。諦めな?んな事よりも、だ。
今回の事、色々教えちゃくんねぇかい?上に報告しねぇといけねぇからな。
まず、浅太に引っ付いてるその犬だか猫だか分からんお前さんからだ。」
「ぼくはタマだよ!」
元気に「タマ」と名乗ったその妖怪は大きさ的には確かに犬だ。しかし元気に振っている尻尾は猫の様に細長いし、顔も中間って感じで余計に分からない。
「タマ・・・か?・・・あ。」
その名前を聞いて、ふと、昔の事を思い出した。
「何か思い当たる節があるのかえ?」
「あー・・・思い出したと言うか何と言うか・・・」
朧さんに聞かれた俺は思わず長谷川様の方を見る。
「あ?なんでい、浅太。何で俺・・・を?を、ををおおお!」
どうやら長谷川様も思い出した様で。
「何じゃ何じゃ?儂等にも分かる様に説明せい!」
「あ、うん。この子はね、数年前に俺と長谷川様が拾った犬の「タマ」だ。だよな?」
「うん!」
思い出して貰えたのが余程嬉しいのか、長い尻尾が凄い勢いで振られている。
「タ、タマ?のう、何故「タマ」何じゃ?」
瀧の疑問も最もだ。
「それはね?偶々拾った時に長谷川様がさ・・・」
言いながら長谷川様を見る。長谷川様はばつが悪そうにしながらも話す。
「・・・あーまぁ、何だ。あれだあれ。そのー・・・な?」
「もしかしてさぁ、その方が面白いとか思ったからかい?」
「ぐ・・・」
ビフロンスの言葉に図星を刺され苦虫を噛み潰した顔で長谷川様は黙り混む。
「うわひどい。」
「中々に酷いのう。」
「粋でもないのう。」
「う、うるせぇ・・・若気の至りって奴なんだよ!」
「は、ははは・・・でもタマはどうして此処に?数年前に暴れ馬に轢かれて死んだ筈じゃ?」
「・・・確かにそうだ。あん時俺と浅太で埋めてやった筈だ。」
「うん。でもぼく、ひろってくれたあるじたちにごおんがえし?したくてしたくて、きがついたら「ようかい」になってたの!」
気が付いたらってそんな事あるのか?
「瀧?こんな事あるのか?」
瀧なら分かるかもと聞いてみると瀧は黒猫姿のまま難しい顔を(多分)していた。
「うーむ・・・恐らくじゃが・・・他の妖怪と違い自力に近い稀有な産まれ方を死んだ後にしたのではないかと思うのじゃ。」
「と言うと?」
「それはじゃな・・・」
瀧の話では人間達の
「そこは俺達悪魔の発生とほぼ同じだねーあ、俺は違うけど。」
「違うとは?」
「俺、いや天使や堕天使はちょっと特殊でねー。話すと長いからそんな物と思ってもらってたら良いよ。」
「・・・色々あるんじゃな。兎も角、珍しくはあるが稀に居るんじゃ、他者の畏れでは無く自力で妖怪化する者は。」
「んでよ?結局の所、何の妖怪だ?」
「・・・恐らく備前の国(現岡山県)に伝わる妖怪の一種「すねこすり」じゃと思う。まぁ、足が
妖怪も色々居るんだな、と
「なぁ、タマ。1つ聞きたいのだが俺と長谷川様の居場所が良く分かったな?」
「んとね!ずっとねてたらね、ちかづくのがこわいくらいのにおいとかけはいがね、したの!そしたらね!ボカーン!ってなってしばらくしたらね!そこからあるじのにおいがね、したの!だからぼく、おきてあるじのところへはしったの!!」
その匂いを追ってきたのかと得心するが新たな事実に戦慄が走り確認の為にタマに聞いてみた。
「成る程。じゃあさ、タマは何時から妖怪なんだ?」
「うんとねー・・・わかんないけど、たぶんね、きのう!!」
「そ、そうなんだ・・・」
昨日・・・そう聞いた全員が苦い顔をする。タマが妖怪として目覚めたのはどう聞いてもあの爆発の直後にしか思えない。
これはかなり危ない状況なのじゃと思い長谷川様の方を見ると「・・・まぁ、仕方ねぇな」と長谷川様が次の疑問へと話を促した。
「そいつのこたぁ分かった。別件って形で触りだけ報告しとく。悪い様にはならねぇし出来ねぇからな。
次は・・・嬢ちゃんについてだ。」
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