もう独りは嫌なんです!!
利点についての話があまりにもぶっ飛んでいた為、軽く思考が停止する。
「疑問は解決したかしら?では、話を戻すわね?・・・我々に協力して貰えるかしら?」
思考が停止している俺を他所にルシファー様は俺に返答を促す。
止まった思考を戻し改めて考える。
只の百姓でしかない人間がこうして力を得て世界の一大事に関わる・・・それがどう言った事か。
見方によっては不利益でしかない利点を普通の人間が手にする危険性。
できるのか?只の百姓に?多少強くなっただけの存在に?
「あ、あの・・・貴方が迷う気持ちもわかります。人一人の人生に関わる重要な事ですので・・・数日ほど時間を置きますのでその間に決めてください。あ、勿論断っていただいてもデメリット・・・不利益は御座いませんので。」
「ミカ、良いの?時間は限られているわよ?」
「はい、姉上。これは彼が決める事。我々が強制する事ではありません。」
確かに今決めたとしても、後々自分にとっては悪い事である事もあるだろう。
簡単には決めれない・・・か。
「では、数日後の満月の夜に返答をお聞きしますので、その時にまたお会いしましょう。」
「あ、ちょ、ミカ!待ちなさいよ!あーもー・・・またね?人間君?」
まだ訊きたい事はあったのだが、2人は掻き消えるかの様に光の粒となって消えていった。
虫達の合唱の中、後に残された俺は只々天を見上げて
漆黒の闇夜に月が優しく大地を照す中、俺はこのまま家に帰るのは危険な上、自信が何処に居るのかも判らない為、寂れ壊れた社の側の茂みに身を潜め、今日おきた事を整理しつつ、朝日が出るのを待っていた。
思考力が上がったからだろうか?乱雑に浮かんでは消える記憶の断片に
どれ程たったか・・・ふと、声が聞こえた気がして身を強張らせる。思い出されるは襲われた時の恐怖。
確かに人としての格は上がったのだろうが、現状わかるのは「頭が良くなった」ぐらいで根本的には只の百姓なのは変わらない。
恐怖で飛び出したい衝動を必死に抑えながら耳を澄まし辺りを見回す。
・・・し・・・
やはり聞こえる微かな声。
離れた場所から聞こえる様な耳元で
・・・もし・・・
今度ははっきりと聞こえた。
それも耳元で。
「うわぁぁぁ!!」
思わず潜んでいた茂みから飛び出して声の聞こえた方を見る。
そこには壊れた社の側に十二単を纏った手の平大の女性が
「あ・・・あの・・・怖がらせてすみません・・・」
申し訳なさそうにしながら此方を
驚きながらもしっかりと観察してみると敵意は感じずむしろ
やや警戒しながらも怖がらせない様に近付き衣帯を正し、
「し、
良し!礼を失する事の無いであろう喋り方ができた!
以前、行倒れになってた御侍様を名折れ(恥とかの事)にならないようにお助けした時に御礼代りにと礼儀作法等を簡単に教えて頂いたのが役に立った。
「・・・まるで御侍の様な喋り方をなさるのですね・・・失礼。妾はこの壊れた社に
俺が礼を持って声を発した事に驚きながらもこの社の神と名乗ってくださった・・・が、最後の間は何だ?
「おぉ!この社の女神様でしたか。・・・で、どの様な神様で?」
「・・・貴方様に御声を掛けさせていただいたのはその事に関わる事なのです。」
「と言うと?」
「はい・・・妾は遥か古来よりこの地に祀られ、守護を担っておりました。しかし、時の流れとは無情なもの。人々に忘れ去られ誰も来なくなった社は朽ち、妾は己が名すらも忘れしまいました。」
どれ程の年月をこの御方はこの場所で過ごされてこられたのか。それもたった御一人で。
「本来ならば只観ている事しか出来なかった妾でしたが、先程の天使と大魔王の神気に触れ、少しだけ力を取り戻す事が出来ました。そこで貴方様にお願いが・・・」
「後日会う拙者に御二人と引き逢わせよ、と?」
俺がこうしたいのだろうと思い口にするとかよわき女神は
「いえ、例え他の神の神気を浴びたとしてもそれは有限の物。何れは磨り減り消えて逝きまする。」
思っていたのと違う答えに「では何を
「そなたと契約を交わし共に道を歩みとう御座いますれば。」
「け、契約とは?
「御知りにならないのもせん無き事。では、契約についてご教授致しましょう。」
彼女の話ではこの「契約」(契約の日と契約者とは別の意)とは何か願い事を叶える為に呼び出した側と呼ばれた側、双方に利益をもたらす「約束事」であり、人間に神々や悪魔等の手を貸す為の「決まり事」だそうで、呼ばれた側はそれ相応の「対価」を求めるのだそうだ(これを悪魔召喚の儀と言う)
ただ、その対価が契約者の「魂」であったり、契約からの「解放」であったりで醜悪な者は契約を
今回は本来ならば呼ばれる側からの契約の提示の為、対価はほぼ無いに等しいらしい。・・・聞いてみないと分からんが。
あと、妖怪達の事を他国では「悪魔」と呼ぶらしい。
まだこの女神様に信仰心が集まっていた頃、他国から渡来してきた宣教師が妖怪達の事をそう読んでいたらしく、戯れ半分で信徒を操って
御戯れが過ぎませぬか?
「そして、貴方様にと決めたのは貴方様が「護る者」となれば妾の望みが叶いやすくなるとの打算に御座いますれば。」
「失礼ながら・・・打算とは
これが解らないと契約しにくいし、気軽に契約して後で痛い目を見たくはない。
「妾の望みはこの地を護る神としての力を取り戻す事に御座りますれば・・・」
「・・・ですが某が「護る者」にならなかったら、その目的は達せられないのでは?」
そこが引っ掛かる。
既になっているのなら兎も角、今は他の人よりも強いと言うだけなのだから。
「貴方様は人としての階梯を1つ昇られました。確かにそれだけですが妾は貴方様の魂の強さに賭けてみる事にしたのです・・・それに・・・」
「それに?」
彼女は両の手をぎゅっと握りしめ肩を震わせながら
「もう独りは嫌なんです!!」
大粒の涙をこぼしながら叫んだ。
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