まぁまぁ、いいじゃないかミカ!

 「えっと・・・女神様?」



 目の前には綺麗な羽根を持つ2人の女性が夜のとばりがどっぷり降りてる闇夜の中、自らを主張するように光を放っていた。


 「いえ、私達は女神じゃないわ。」


 先程聞こえた声の主、赤い髪の女神様が答える。


 「いやいやいやいや!!美しい御髪おぐしに慈愛の眼差し!この世の者とは思えぬ可愛らしい御尊顔に全てを照す後光!!・・・何か変な輪っかついてっけどきっと俺が無学なだけできっと名のある女神様なのだろう・・・ありがたや~ありがたや~」


 「ちょっ!!な、なに言って!お、拝まないでくd「ありがたやありがたやありがたやありがたや」姉上!!一緒になって拝むな!!」

 

 この世の者とは思えぬ光輝く女性。これを女神と呼ばずなんと呼ぶ!


 「あっはっははは!!まぁまぁ、いいじゃないかミカ!私は彼を気に入ったよ!!」


「ハッ!有り難き幸せ。・・・で、貴女あなた様は?」


 「ん?あぁ、私は大魔王ルシファー。あんたの所で言うと地獄の閻魔よりももっと上の存在さね。んでこっちは天使長ミカエル。私の可愛い妹さ。」


 「ぇ?」


 今さらりとトンデモナイコトヲオッシャリマセンデシタデショウカ?

 赤い髪の女神様と同じく光を放つ金髪碧眼の見た目幼子が閻魔様よりも上の存在?

 そして赤い髪の女神様が天使長?ってなんだ?それよりも妹って・・・


 「えぇ・・・?」


 正直意味が解らない。


 「そんなに怖がんなって!私は気に入った相手にはそれなりに手を貸すし助けも・・・たまにするって!」



 なんスか?今の間は。



 恐怖と混乱で固まる俺の背をペチペチ叩きながらあははと笑う。


「はぁ・・・もう女神でも何でもいいです・・・実は貴方を助けたのには理由がありましてね。それは――――――」



 項垂れながらミカエルと呼ばれた女神様は語りだした。



 「この世界は「ことわり」と呼ばれる概念で成り立っており、それにより世界は均衡を保っています。しかし、この均衡は崩れやすく、傾きが酷くなると世界が崩壊します。」


 「崩壊ですか・・・」


 「はい。なので1000年に一度、密かに天界、魔界、人間界の代表者達が集まり「理」を保つ為の契約を交わす事で世界を維持していきます。」


 1000年とはまた恐れ入った。途方も無い時間だな・・・


 「しかし、人間側の契約者を操ったり殺害する事で「理」を改竄かいざんし世界を支配、又は消滅させようと企む輩が残念ながら存在します。」

 

 「操られたりするのは人間だけなので?」


 「はい。我等と違い人間はとても脆いのです。同じ様な強さの者を相手にするよりも、弱い者の方が楽ですので。」


 成る程。道理だな。


 「なので、そういった者達から契約者を護る者を人間達から選別する為に私達はこの地に降臨してきたのです。

 そして偶然にも貴方の生きようとした魂の叫びが私達に届きました。

 ・・・危ない所でしたが姉の助力もあって貴方に私の加護を一時的に授ける事かできました。」



 「―――――なるほど。つまり俺がこうして助かったのは御二人様の御加護と運が良かったからに過ぎないと。」



 「えぇ、確かに。しかし、我々にその声を届かしたのは間違いなく貴方の魂の力です。」


 「魂の力ですか・・・」


 「えぇ。生きたいと願うその意思が「私達」と言う奇跡を引き寄せたのです。」



 確かに時期的に絶妙だったな。

 そして何個か疑問が浮かんでくる。



 「ふむ・・・幾つか御聞きしても?」


 「構わないわ。」



 どうぞ。と俺に質問を促す。


 「その存在になる利点とか不利益は?それと、実はあの妖怪、あれを殴った辺りから学者先生宜しく頭の回転が速く、そして妖怪とかの存在を認識できる。これは一体何故なんでしょうか?」



 ルシファー様は「ふむ」と俺の姿をじっと見る。


「まず、頭の回転の早さだけれども・・・それは恐らく人としてのランクが1階悌かいてい上がった事の影響だろう。」


 「らんく?それは一体?」


 「そうね・・・。力量が上がるレベルアップのとは違い、人としてより上位の存在になった・・・とでも言うのか凡人が秀才に、秀才が天才になる・・・といった方が分かりやすいか?」


 「なるほど。何と無くではあるが掴めてきたな。それで「れべるあっぷ」とは?」


 「これはそのままだな。この国の言葉では「力量」とでも言うのか?腕を鍛えたら力が強くなるだろう?狩りとかでもずぶの素人でも何度も狩りをすれば上手くなるだろう?レベルアップとは経験を積んで強くなる事とでも覚えておくと良い。」



 ルシファー様の説明で何と無く解ってきた。



 「つまり俺は御二人の強化を受け、本来ならば死ぬ所を乗り越えた事で一段階上に昇ったと。」


 「正確には貴方が生きようとしたときね。でなければ只の人間が悪魔と戦う事は簡単には出来ないもの。・・・貴方がなにか武術でもしていたなら別だけど。」


 「俺等見たいな百姓が剣術とかは学べませんからルシファー様のおっしゃる通り生きようとした時でしょうね・・・」


 「それと、「護る者」になる利点だけどもそれは―――――――――――」



 

 天地がひっくり返る程の事柄は、夜風に揺れる木々のざわめきに掻き消された。

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