二日目
光と闇 1
翌日。
昨日は、自転車を忘れて徒歩で帰る、というヘマをしてしまった為、俺は歩いて駅に向かっていた。バスを使ってもよかったが、今は歩きたい気分だった。
昨晩もナツメさんとやり取りをして、今日は朝から映画を見る予定になっている。昨日に引き続き、今日も楽しい一日になるに違いない。
違いない……のだが、
「……、……」
今朝、ジーンズの尻ポケットに突っ込んだ財布には、少女からもらった名刺が入っている
ぼんやり歩いて家に帰り、夕飯を食べて風呂に入って、ナツメさんとやり取りを始めた頃にはすっかり頭から抜けていたのだが、寝て起きてから確認してみると、名刺は確かに存在していた。
昨日のアレは、現実だったのだ。
俺が今まで見てきた幽霊が温厚だっただけで、夜の闇の中には、ああした恐ろしい化物が混ざっていたのかもしれない。それを知らずに生きてこられたのは、昨日の少女達が何か対処をしていたから、なのだろうか? 土地の管理者、なんて肩書きを持っているのだし。
気になるが、知らずに生きていくのが一番なのだろう。そう思いながら、大通りから一本入って、人気のない道を進む。自転車で通り抜ける時は気にならなかったが、この時間はビルの陰になっていて、若干肌寒さを感じた。
すると前方に、ドラム型の大きなショルダーバッグを提げた男が歩いているのが見えた。
ニット坊を深く被った、長身の男だ。音楽を聴いているのか、密閉型のヘッドホンをしている。手に持ったペットボトルを振っていて――って、違う。
「……スプレーか、あれ」
小さく、カランカランと音が聞こえてきた。それに驚いたところで、先を行く男が無雑作にスプレーを吹いた。が、空気が抜ける音はするが、ビルの外壁に変化はない。
「なんだ……?」
何をしているのか、何が目的なのか解らない。
昨日のキマイラも怖かったが、ああいう意味不明な行動をしている人間も恐ろしい。
絡まれたくないし、俺は路地を更に右へ抜け、別の道で駅の南口へと向かった。
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