第274話 神々の質問②
鼻息荒く清宏を見つめていた素戔嗚は、何処からともなく数枚の写真を取り出してテーブルに並べると、腕を組んで椅子に座りなおす。
清宏は並べられた写真に目を通し終えると、目の前の大男を見て首を傾げた。
「鉄道写真ですか・・・」
「うむ!貴様も日本男児であるならば当然好きであろう!左から順に答えてみよ!!」
「別に鉄道に興味無いんで知りませんて・・・てか、誰も彼も鉄道好きって訳じゃないでしょ」
「・・・そうか」
清宏の歯に衣着せぬ物言いを聞いた素戔嗚は、項垂れてみるみる小さくなってしまう。
あまりにも居た堪れない空気になってしまい、見かねた清宏は真ん中の写真を素戔嗚に差し出した。
「名前は知りませんが、これなら何度か乗りましたし、好きな形です・・・」
「むっ?おお『新800系つばめ』だな!貴様、なかなか良いチョイスをするではないか!!」
「そうですか・・・では次の方」
「えっ、我の番はもう終わりか!?」
「さっきから暇じゃ無えって言ってんでしょ?そもそも、興味も無い他人の趣味の話聞かされなきゃならんとか勘弁して欲しいんですよ・・・OK?」
「はい・・・」
清宏から滲み出る『面倒臭え』と言いたげな雰囲気を感じ取った素戔嗚はそのまま大人しくなり、隣に座っていた月読がそれを見て苦笑を漏らす。
「清宏君、君は何と言うか凄いね・・・まさか、たった一言二言の会話で彼をここまでヘコませるなんて、神界でもそうはいないよ?」
「自分が心底ハマってる趣味を興味無いって言われたらこんなもんでしょ?」
「神に対しても解っていてそれをするところが肝が据わってると言うか何と言うか・・・。
さてと、君の言う通りあまり時間を掛けても悪いし、私も質問して良いかな?」
「はあ・・・では手短にお願いします」
月読は渋々頷いた清宏に笑顔を見せると、暇を持て余し無心でルマンドを食べていたメジェドを振り向いて肩に手を置いた。
「君はこのメジェド神の姿を見事言い当てたね?では、私からの質問はこれにしよう・・・ズバリ、君の好きなMSは?」
「ワクワク」
メジェドは自分が関係する話題にソワソワとしだし、清宏に熱い視線を送る。
だが、清宏はそれを無視して考え込み、しばらくして顔を上げた。
「正直好きなのが多過ぎてどれが一番か迷うんですが・・・」
「ならランキング形式でも構わないよ?その方が私も判断しやすいからね」
「そうですか?なら、僅差のやつでいくつか言いますね・・・まず5位がTHE-Oですね。
次に4位はヴァイエイトとメリクリウスですが、こいつらはセットです」
「ふむふむ、なかなか個性的なMSを選んだね?では、TOP3を頼むよ」
「ワクワク!」
相変わらず期待の眼差しを向けるメジェドだが、清宏はまったく目を合わそうとしない。
月読はその理由に気付いているのか、苦笑している。
「では第3位・・・トムリアットです」
「これはまた意外なMSが出て来たね・・・」
「飛行機タイプじゃなく、ヘリに変形とかヤバくないですか?それに『トータル・リコール』のクアトーみたいな顔もインパクトがあって良いですね!」
「そこかぁ・・・」
予想だにしていなかった答えに天井を見上げた月読は、肩を揺らしながら笑いを堪え、清宏に向き直る。
月読と目が合った清宏は不敵に笑い、人差し指と中指を立てて突き出した。
「次に第2位はグフ・カスタムです!ザクとは違うのだよザクとは!!」
「それは私も解るよ!カッコいいよね!!
こうなると、俄然1位が気になる・・・!!」
「ソロソロ?ソロソロ我ガ来チャウ?」
月読とメジェドの期待に満ちた視線を受けた清宏は、目一杯勿体ぶるように溜めに溜め、カッと目を見開いて椅子から立ち上がる。
「皆さんお待ちかね、栄えある第1位は・・・ケンプファーです!!」
「キターーーッ!素晴らしい!素晴らしいよ清宏君!!」
「世間じゃ紙装甲だの何だのと言われているが、90mmのガトリングを至近距離から食らって無事なMSがいるのかと問いたい!俺が思うに、ケンプファーがアレックスに負けた理由はただ一つ・・・飲酒運転ダメ絶対!!」
「その通り!あれはケンプファーは悪くない!ミーシャが悪いんだよ!清宏君、君とは仲良くなれそうだ!!」
「ア・・・アレ?ワ、我ハ?」
固い握手を交わす清宏と月読の横で、メジェドが全身を震わせながら弱々しく問い掛ける。
すると、振り返った清宏は申し訳なさそうに首を振った。
「すみません・・・俺、見た目が整いすぎてるロボットに興味湧かないんです・・・もうね、ボトムズとか最高♡」
「神ハ死ンダ・・・」
ランキング発表中に清宏が一切目を合わさなかった理由を知り、メジェドは塗装でもされたかのように真っ白くなり、直立不動のまま動かなくなってしまった。
「おお、スノーホワイトプレリュードまで再現とかやりますね!」
「いや、そんな機能は無かったはずだよ?だが、これはこれでアリだね!!」
「・・・絶望のあまり気絶しただけではありませんか?」
清宏と月読の的外れな発言に、それまで黙って話を聞いていた天鈿女が呆れながら諫言し、気絶したメジェドを見つめながら『お可哀想に・・・』と小さく呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます