第151話 清宏の脱童貞疑惑①
城内の一室・・・そこは、部屋の主が寝る時に灯りを嫌うため魔石灯すら無く、夜は深い闇に閉ざされる。
明け方になり太陽が昇り始めると、障子を介して優しい光が室内を照らし出し、徐々に部屋の様子が浮き上がっていく。
その部屋は、西洋風の城の中とは思えぬ純和風で統一されており、ベッドは無く、畳に布団が敷かれている。
その布団の上で寝ているのは清宏・・・何故か全裸である。
そして、清宏の陰に隠れるように、もう1人何者かが全裸で寝ている・・・その人物は、豊かな肢体を持っている女性のようだ。
朝日に照らされた清宏が寝返りをうつと、手が女性の胸に触れた。
「・・・ん?何だこれ?」
「あんっ・・・!もう、清ちゃんは朝から大胆ねぇ・・・昨夜はあんなに愛し合ったのに、もう回復したのかしらぁ?」
女性は清宏の頭を抱きしめ、豊満な胸に押し付ける・・・寝ぼけていた清宏は、薄っすらと視界に入った人物を見て、顔面蒼白になり震えだした。
「もう、ダメよぉ・・・そんなにしたら、我慢出来なくなっちゃうじゃなぁい?私は別に今から続きをしても構わないんだけどねぇ」
「アアア・・・アルコー様・・・一体、俺の部屋で何をしてらっしゃるので?」
「何をしてって言うかぁ、ナニをしたって言うのが正しいわねぇ・・・」
アルコーは震えている清宏に笑いかけると、拳を握り、親指を人差し指と中指の間に差し込んで前後に出し入れしている・・・要するに、事後ということだ。
清宏はアルコーを振り払うと、急いで周囲の確認を始めた・・・まずやる事と言えば、ティッシュとゴミ箱の確認だ。
だが、アルコーはそんな清宏の背中に優しく抱き着くと、儚げな表情で耳に息を吹きかけ、右手で自身の下腹部を撫でた。
「清ちゃん、ごちそうさまぁ・・・昨夜は楽しかったわよぉ?」
「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!だって、俺は魔道具で性欲が・・・っ!?」
清宏は信じられずに叫んでいたが、ある事を思い出してアルコーを見た・・・清宏は、完全に絶望した表情をしている。
そんな清宏を見て、アルコーは妖しく微笑んだ。
「私に解除出来ない魔道具があると思っていたのかしらぁ?魔道具で性欲を抑えてるなんて聞いたら、私がその気にならない訳がないじゃなぁい?私はねぇ、気に入った子は絶対に手に入れたいってタチなのよぉ・・・」
「あんたって人は、なんちゅう事を仕出かしてくれたんだ・・・こりゃあ揉めるぞマジで!!」
「あははははっ!今から楽しみよねぇ?」
「笑い事じゃねーわ!ただでさえうちの奴には手を出さないって言ってたのに、客に・・・ましてや魔王に手を出したなんて知れたら、あいつ等の士気に関わるんだよ!!」
清宏は頭を掻き毟りながら怒鳴ったが、アルコーはまったく反省していないらしく、あくびをして微笑んだ。
「あいつ等の士気ねぇ・・・そんな事より、自分の評判とかは気にならないのかしらぁ?」
「誰に何と思われようが関係無え!俺は、俺自身が自分を見失わなければ、他の奴にどんな評価されようが知ったこっちゃねーんだよ!!あーくそっ!どうすりゃ良い!?」
清宏が怒鳴って頭を抱えると、アルコーは意外そうな表情で清宏を見つめた。
清宏の怒鳴り声が聞こえたからか、部屋の外が騒がしくなり、足音が近づいてくる・・・清宏は冷や汗を流すと、近くにあった服をアルコーに投げつけ、自分も急いで服を着るため立ち上がった。
だが、残念ながらそれは間に合うはずもなく、残酷にも襖は開け放たれた・・・そして清宏は、真っ先に部屋に入って来たアンネと目が合ってしまった。
「き、清宏様・・・これは一体・・・」
「神は死んだ・・・」
「やあねぇ、死んでないわよぉ・・・ただ、現世に存在出来なくなっただけよぉ?」
清宏とアンネには、アルコーの的外れな発言など聞こえていない。
アンネは、ただでさえ色白な肌をさらに蒼白にし、涙を流しながら清宏を睨む。
「清宏様の馬鹿!不潔です!!」
アンネは泣きながら走り去ると、自室に籠って鍵をかけてしまった。
アルコーは、そんなアンネを見て申し訳なさそうに苦笑した。
「あらぁ・・・もしかして、アンネちゃんって清ちゃんの事が好きだったのかしらぁ?何だか悪い事しちゃったわねぇ」
「何じゃ何じゃ!朝っぱらから騒々しいぞ清宏・・・って何と!?な、何をやっとるんじゃお主達は・・・」
走り去ったアンネに続き、リリスやペイン、アルトリウス達まで集まり、状況を把握した彼等は清宏とアルコーに呆れ、2人を軽蔑するような目で見た。
清宏は絶望と諦めにより「俺は無実だ・・・」と壊れた機械人形のように呟き続けていた。
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