第112話 電流走る・・・!

 「おっ・・・2人が帰ってきたようだな。

 おーい、肉が来たら適当に何か作るからテーブルやら準備しててくれ!」


 清宏は、マップでシスとアッシュが帰って来たことに気付き、広間に居た者達に指示を出す。

 皆思い思いに過ごしていたが、指示に従ってすぐに行動を起こした。

 慣れたもので、シス達が広間に戻る前にはテーブルや椅子の準備は済んだ。


 「皆んなただいまー!アッシュ君めちゃくちゃ速かったよ!!」


 「別にあのくらいどうでもねーって・・・」


 準備が整うのを見計らったかのように、勢いよく扉が開いてシスとアッシュが入ってくる。

 シスは満面の笑顔でアッシュを褒めているが、アッシュはそっぽを向いている。


 「2人共お疲れさん、ペインにはキツく言っといたから許してやってくれ・・・ほれ、謝れ」


 清宏は2人を労い、ペインを呼んだ。

 申し訳なさそうに肩を竦めながら2人に近寄ると、頭を下げた。


 「我輩のせいで迷惑をかけてすまなかったのである・・・」


 「良いですよ!私は、アッシュ君が速くて楽しかったですしね!

 でも、次からは気をつけてくださいね!」


 シスは笑いながら答え、アッシュを見た。

 アッシュはため息をつきつつ頷く。


 「まぁ、俺も久しぶりに全力で走れたから別に構わねーよ・・・ただ、出来るなら1人で気兼ねなく走りたかったな」


 アッシュの言葉を聞いた清宏は腕を組んでしばらく考え込んだが、苦笑してアッシュを見た。


 「わかった、夜で良ければ気が済むまで外を走って来て良いぞ・・・その方が、何か来た時にいち早く対応出来るだろうからな。

 だが、その代わり俺が確認出来る範囲にしてくれ・・・それを越えちまうと俺もフォロー出来なくなるからな」


 「俺が逃げるとは思わないのか?」


 「さっきも、お前はそう言う事をする奴じゃないって言っただろ?

 まぁ、どの道リリスを守らなきゃいけないからな、お前だって逃げた先で知らない内にリリスが死んで、いきなり自分も死ぬなんてゴメンだろ?」


 アッシュは舌打ちをしたが、満更でもない表情だ。

 範囲が限定されているとは言え、外を自由に走れる事は素直に嬉しいようだ。


 「さてと、んじゃまぁ今から使う分以外の肉を食料庫に持って行こう」


 清宏はシス達を連れて厨房に向かおうとしたが、シスはその場に立ったまま不敵に笑いだした。


 「ふふふ・・・それには及びませんよ清宏さん!

 すぐに食べられるようにと、屋台の料理を買い占めて来ましたから!!

 褒めて良いんですよ?私とアッシュ君を崇め奉っちゃっても良いんですよ!?」


 「ワースゴイナーアリガタイナー・・・これで良いか?」


 「心がこもってない!?しかも棒読みじゃないですか!ぶっちゃけ、何かご褒美ください!!

 アッシュ君は外出許可貰えたのに、私だけ無いのは不公平です!!」


 清宏は深くため息をつくと、アリーに髪を引っ張られているリリスを見てニヤリと笑った。


 「良し・・・ならば、今夜はリリス&アリーと一緒に寝る事を許可しよう!!」


 それを聞いたシスに電流走る・・・!

 シスは涙を浮かべ、清宏の前に跪いた。


 「あぁ!神よ!!」


 「崇め奉ってんのお前じゃねーか・・・まぁ、程々にな」


 「程々になじゃないわバカチン!妾の意見を聞いてから決めんか!!」


 2人の会話を聞きつけたリリスが、アリーを引きずりながら走って来た。

 リリスはたいそうご立腹だ・・・。


 「良いじゃねーか別に、今日シスが肉を買って来てくれたのは事実だろ?

 お前だって助かったんだから、少しは褒美を与えてやれよ」


 「むぅ・・・それはそうじゃが、もっと他に無いのか!?」


 「無い」


 清宏はキッパリと答えると、リリスとアリーを掴んでシスに向かって放り投げた。

 シスは素早くキャッチすると、2人に頬ずりをし始める・・・シスは目がイッているようだ。


 「ぎゃーっ!!きしゃま、覚えておれよ!!

 ちょっ、ヨダレが汚いのじゃ!離れんか!!」


 「んーっ!」


 悶えるリリスとは違い、アリーはシスの胸に抱かれて嬉しそうに笑っている。


 「自分の主でさえ利用するとかパネエな・・・」


 「利用出来るもんは利用しなきゃダメだろ?

 あれでシスが満足するなら安いもんだ」


 豹変したシスを見て顔をしかめたアッシュは、買って来た出来合いの料理を清宏と共に運ぶ。

 清宏はさも当然と言うように答え、皆を集めた。


 「よし、遅くなったが飯にしよう!

 明日からは城を解放するが、その時にならないと分からない不具合もあるかもしれん。

 今日はゆっくりと休み、明日に備えるように!

 おいペイン、何してんだ?お前もさっさと座って飯食え!今飯を抜いて、後から腹が減ってまた盗み食いされても困るだろうが!」


 「・・・我輩も食べて良いのであるか?」


 清宏に呼ばれ、ペインは遠慮がちに聞き返した。

 すると、清宏は小さく笑って隣の椅子を引いた。


 「盗み食いに関してはさっき罰を与えただろ?

 お前がまた同じことをしない限り、飯はちゃんと食わせる。

 お前に何が出来るかの話も途中だったし、飯を食いながらでも決めておこう」


 清宏はペインとの約束通り、他の者達の倍の量の料理を皿によそって再度手招きした。

 ペインは嬉しそうに笑いながら席に着くと、味わいながら料理を食べ始める。


 「やはり、生の肉より調理された物の方が美味なのである!!」


 「貴様等・・・妾にも!妾にも食わせんか!!」


 ペインが満足そうに頷いていると、リリスの泣き叫ぶ声がそれをかき消すように響き渡った。

 


 

 


 

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