第52話下着チェック

 ルミネとラフタリアが、ツクダによって全身をくまなくマッサージされている間、清宏はリンクスと軽い雑談をしていた。


 「男は、ああいう反応の方が好きなんだろ?」


 「概ねそうだな・・・まぁ俺としては、あんたみたいな気の強そうな女性が恥辱に耐えている姿も乙なもんだと思うけどな」


 「期待に応えられなくてすまんな・・・」


 「いやいや、協力してもらえるだけでも有難いよ」


 清宏とリンクスが雑談をしていると、革の手袋が飛んできた。

 清宏が飛んできた方を見ると、ラフタリアが涙目で睨んでいた。


 「ちょっと!何のんびりと話してんのよ!?」


 「私は済んだからな・・・お前の貧相な胸でも、揉んでもらえば少しでも大きくなるんじゃないか?」


 リンクスの言葉に反応し、ツクダはラフタリアの胸を這い回る。


 「ちょっ!?何で言葉を理解してんのよ!!

 あっ・・・先っぽばっかり攻めないでっ!!」


 「おー・・・なかなかエロいな!

 素晴らしい提案ですぞリンクス殿!!」


 「まぁ、こいつには良い薬だよ・・・毎回毎回私のことを筋肉バカだの言いやがるからな!」


 「あんた達、覚えてなさいよ!?終わったらただじゃおかないから!!・・・んっ!ダメ・・・私、乳首弱いの・・・!!」


 ラフタリアは清宏とリンクスを恨めしそうに睨みながら悶えている。

 実年齢は解らないが、見た目が14〜15歳に見えるラフタリアが悶えている姿は、なかなかに背徳的だ。

 一方、ルミネはラフタリアと違い全く動いていない・・・。

 清宏は心配になり、ルミネに近づいて様子を伺った。


 「ルミネさーん・・・生きてる?」


 声を掛けても、ルミネの反応はない。


 「気絶しているな・・・」


 リンクスがルミネの頬を軽く叩いて確認し、ため息をついた。


 「マジか・・・これは好機!!

 ツクダ、ルミネお姉たまの服の裾を持ち上げてくれ・・・」


 「おい、何をする気だ?」


 清宏がツクダに指示を出すと、リンクスが不安気な表情で尋ねた。

 清宏はいやらしい笑みを浮かべている。


 「弱みを握るのは常套手段・・・今から、ルミネお姉たまの下着チェックを行う!!」


 「どうなっても知らんぞ私は・・・」


 清宏が高らかに宣言すると、リンクスは諦めて首を振った。


 「ふひひ・・・視聴者の期待に応えるのは大事だろう?」


 「視聴者・・・私達以外に誰か見てるのか?」


 リンクスに尋ねられて清宏は頷き、マップを開いて指差した。

 そこには、広間の中央・・・水晶盤のあたりに、6人分の人物を表すマークが表示されていた。


 「たぶん、これはローエン、グレン、ウィル、オーリック、カリス、ジルだよ。

 人数もぴったりだし、流石に同性が悶えている姿を女は見ないだろ?」


 『酷いぜダンナ!何でばらすんだよ!?』


 清宏がリンクスに説明すると、清宏の通信機からグレンの怒鳴り声が聞こえてきた。

 結構な声量だったらしく、リンクスにも聞こえたようだ。


 「酷いもクソもあるか!俺ばっかり責められるのは納得いかねーんだよ!!

 お前達だけが得をするのは許せん!!

 死なばもろとも・・・皆んなで怒られたら怖くない!!

 お前達はそこに居るだけで、ルミネお姉たまの下着を鑑賞出来るんだぞ?怒られるなんて安いもんだろう!!?」


 清宏はグレン達に怒鳴り、裾の捲れたルミネを見る。


 「流石はルミネお姉たま・・・素晴らしい!」


 『ちょっとどいてくれよダンナ!俺達にも見せてくれ!!』


 清宏がルミネの下着を見て関心していると、グレンが急かしてきた。

 清宏はニヤケながら横に移動した。


 『良し、賭けは俺の勝ちだな!やっぱり白のレースだったじゃねーか!!誰だよ意外と黒とか言ってた奴は!?』


 通信機からジルの歓喜の声が聞こえてくる。

 他の者達は残念そうに舌打ちをしている。


 「本当に男って生き物は・・・」


 リンクスは呆れてため息をついている。


 「お前等賭けんなよ・・・どうする、ラフタリアも確認するか?」


 『確認するかなんて野暮な事聞くのはよそうぜダンナ!

 ここまで来たら、エルフ娘のも見たいだろ!?』


 「俺、お前のそういったノリ好きだわ・・・。

 ツクダ、ラフタリアのズボンを脱がしてくれ」


 清宏に命令され、ツクダは手際良くベルトを外すと、太腿の付け根で切り揃えられたホットパンツを剥ぎ取った。

 力尽きたラフタリアは、ピクピクと痙攣したまま無抵抗で脱がされている。


 「マジか、こっちにも縞パンてあるんだな・・・」


 「へ・・・ちょっと、何で私のズボンが無くなってるの!?見ないでよスケベ!!」


 清宏が、ラフタリアの露わになった下着をマジマジと確認していると、ラフタリアが気付き、慌てて下着を隠す。


 『何だよ、子供パンツかよ・・・』


 通信機から、ジルの残念そうな声が聞こえる。


 「その声はジルね!?人の下着見といて馬鹿にしてんじゃないわよ!!

 私だって、本当は大人っぽいのが欲しいのよ!・・・でも、私にはサイズが合わないんだから仕方ないじゃない!!」


 『やっべ、聞かれてた・・・』


 ジルはラフタリアにバレてしまい、慌てて黙ったが既に遅かった。

 ラフタリアは恥ずかしそうに涙を流している。

 すると、清宏がラフタリアの肩を軽く叩いた。


 「お前達は解ってないな・・・子供パンツだから何だって言うんだ?

 ラフタリアには、これだから良いんじゃないか!!

 見た目14〜15の女の子が、背伸びをして色っぽい下着を履いてるのを見て、お前達はどう思う・・・どう考えても似合わないだろう!?

 ラフタリアはエルフだから、実年齢はまだ上だろう・・・だが人間であれば、こういった下着を履ける時期ってのは、人生のほんの少ししかない。

 ラフタリアみたいな見た目の女の子は、下手に色っぽい下着より、こういった下着の方がしっくりくるし、何よりそれを見る背徳感はヤバイだろう!!?」


 清宏に諭され、ジル達は押し黙る。

 ラフタリアは、嬉しそうに清宏を見つめた。


 「ラフタリア、気にする事はないさ!

 君は、下手に大人ぶるよりも今のままが魅力的だ!!

 胸だって、別に大きくなくて良いんだ・・・君の見た目で胸ばかり大きくなっても、バランスが崩れて魅力が減ってしまうからな!」


 清宏の言葉を聞いたラフタリアは、徐々に表情が曇っていく。


 「清宏・・・あんた、それは格好付けて言う台詞じゃないわよ?

 それよりも、さっさと私を解放しなさいよ!!」


 「おっと危ない・・・女の子が足癖悪いのは感心しないぞ?

 ツクダ、しばらくラフタリアをM字固めにしてやれ・・・羞恥心を覚えて貰おう」


 「ぎゃーっ!?待って!恥ずかしいからやめて下さい!!」


 ラフタリアの懇願を無視し、清宏はルミネに向き直る。


 「鬼だなあんた・・・」


 リンクスに呆れられ、清宏は笑う。


 「ははは、お褒めの言葉をありがとう・・・ところで、リンクスはどんなの履いてんの?」


 「あんたは、私みたいなのが履いているのを知って嬉しいのか?

 はぁ・・・私が履いているのはふんどしだ。

 東端の国の下着らしいが、なかなか使い勝手が良いからな・・・これで満足か?」


 リンクスは、若干恥ずかしそうに答えた。


 「おー・・・なかなかのチョイスだな。

 爺ちゃんが使ってたけど、確かに楽みたいだな?

 たまに女性でも使う人がいるとは聞いてたが、会ったのはあんたが初めてだよ」


 「そうか・・・」


 清宏に普通に返され、リンクスはそっぽを向いた。


 「あれ・・・私は一体何を・・・えっ?」


 ルミネが意識を取り戻し、自分の姿を見て止まる。

 徐々に顔が赤くなり、涙を浮かべて清宏を見た。


 「酷いです・・・私が気を失っている間に、手篭めにするなんて、人のする事じゃありません!!」


 「待って!まだ下着チェックしかしてないから!!」


 清宏の言葉を聞き、ルミネの顔が更に赤くなっていく・・・。


 「清宏さん・・・最低です!!!」


 ルミネが叫んだ瞬間、彼女を中心に、室内で爆発が起きた。

 近くにいた清宏とラフタリアは吹き飛ばされ、床を転がっていく。


 「ヤベェ、マジ切れだ!!ツクダ、無事か!?」


 立ち上がった清宏はツクダの姿を探すが、どこにも見当たらない。

 ツクダに絡まれていたルミネは、床に座ったまま泣いている。


 「まさか・・・今の爆発で死んだのか!?

 俺が手塩にかけて育てたって言うのに・・・」


 清宏が部屋の中を見渡すと、部屋中の壁に張り付いていたツクダの一部が、ゆっくりと集まっていく。


 「良かった、無事だったか・・・え、何で?ツクダが増えた!?」


 驚くのも無理はない・・・元に戻ったはずのツクダは、2体に増殖していたのだ。


 「どっちがツクダオリジナルなんだ?」


 清宏が首を傾げていると、その背後に凄まじい殺気を放つルミネとラフタリアが立っていた。

 それに気付いた清宏は、慌てて距離を取る。


 「ツクダ、お前は壁の中に逃げろ!俺は何とかして逃げ切る!!」


 「逃しませんよ!責任を取っていただきますから!!」


 清宏はルミネの魔法を回避しながらツクダに指示を出し、部屋の中を逃げ回る。


 「減るもんじゃねーし良いだろ!?

 それに、男はアルトリウス以外皆んな見てたから同罪だ!!」


 「口答えすんな変態!まずはあんたを殺して、その後あいつ等よ!!」


 ラフタリアも清宏目掛けて矢を放つ。


 「くそっ・・・2対1じゃ逃げ切れないか!?」


 清宏は壁に追い詰められ、舌打ちをした。

 ルミネとラフタリアは、ジリジリと距離を詰めてくる。


 「神に祈る時間だけはあげましょう・・・」


 「どの道殺すんだし、そんなものは必要ないわよ・・・」


 ルミネとラフタリアは、完全に目が座っている・・・。


 「仕方ない、これだけは使いたくなかったが・・・」


 清宏が不敵な笑みを浮かべると、2人は警戒してその場で止まる。

 

 「・・・何をする気ですか?」


 「見せてやろう・・・俺の編み出した必殺技を!」


 清宏は2人に向かって手を伸ばした。

 ルミネは予知を発動させたが、時すでに遅く、清宏は吸い込まれるように床に開いた穴の中に消えて行った。


 「これが俺の逃走術・・・ボッシュートだ!!」


 穴の中から清宏の勝ち誇った声が聞こえてくる。


 「ルミネ、早くあいつを追わないと!!」


 提案したラフタリアに対し、ルミネは不敵な笑みを浮かべて首を振る。


 「いえ、その必要はありません・・・先に他の者達を処理しましょう。

 メインディッシュは我慢しておいた方が、より美味しくいただけますから・・・」


 ラフタリアはルミネの言葉を聞いて頷くと、魔法で壁を破壊して部屋を出る。


 「待ってなさいよクソ野朗共・・・」


 「久しぶりに腕が鳴りますわね・・・」


 2人はゆっくりと廊下を歩き、広間を目指す。


 「だから言ったのに・・・」


 2人が見えなくなるのを待ち、部屋からリンクスが出てくる。

 リンクスがため息をついて歩き出すと、奥から男達の悲痛な叫びが聞こえ、リンクスは苦笑した。


 


 



 


 


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