第35話ローションな魔物
午前中にやって来た侵入者達の排除もあらかた落ち着き、清宏はリリスとアルトリウス、アンネ、シス、ウィル、の6人で昼食を摂りつつ昼からについて話し合いをしている。
リリとローエン達は後程交代で昼食を摂る事になっている。
「して、午前中はどうじゃった?
魔石の抽出量も多いようじゃし、忙しかったのではないか?」
リリスは用意されているパンと白身魚のムニエルを食べつつ清宏に尋ねた。
「あぁ、今までで一番忙しいかもな・・・まぁ、罠自体は足りてるし、リリの報告ではビッチーズ達も順調みたいだ。
アイテムも持ち帰らせているから、明日以降も継続してやって来てくれるだろう。
俺は昼からも1時間ほど侵入者の排除をするつもりだ。
まぁ、やるにしても小細工程度だけどな・・・あまりやり過ぎたら逆効果になっちまう」
「それは重畳じゃな!この調子で行ってくれれば、かなりの量の魔石が手に入るじゃろう」
リリスは満足気に頷いている。
「そこで、リリスに頼みがある。
今日手に入った魔石で、何体か下位の魔物の召喚を頼みたい」
「ふむ・・・それは構わんが、何か狙っておる者でもおるのか?」
リリスはパンを齧りつつ清宏に尋ねる。
アルトリウス達も興味があるらしく、清宏を見た。
ただ、理由を知っているアンネだけは複雑そうな表情だ。
「あぁ、男の侵入者はビッチーズ達に任せておけば良いが、それじゃあ女が溢れちまうだろ?だから、女用として仲間にしたい奴がいる・・・」
「ふむ・・・して、何を狙っておるんじゃ?」
「スライムだよ」
「ほほう、スライムか・・・ん?何じゃと!お主今スライムと言ったか!?」
リリスは席を立って清宏に怒鳴り、アルトリウス達も清宏の事を畏怖の目で見ている。
その状況を見て、アンネはそれ見たことかとため息をついた。
「あぁ、確かに言ったが?」
「お主、スライムの事は知っておるんじゃろうな・・・あやつらは低級ではあるがとにかく貪欲で、自我を持たぬから扱いが難しいんじゃ。
お主の事じゃから何か考えがあるんじゃろうが、正直お勧めはせんぞ・・・とりあえず理由を聞かせてくれんか?」
リリスはあっけらかんとしている清宏を見てため息をついて尋ねた。
「そうだな・・・スライムって何でも食うし、食った物の特性を得る事が出来るんだろ?
だから、俺の作ったボディーソープとか美容成分のある物を食わせて、身動きを封じた女の身体を這わせるんだよ・・・そうすれば、女は身体を綺麗に出来て、なおかつ美容効果も得られる。
自我に関してはまだ確証はないが、レイスの例もあるし試してみる価値はあると思う」
「お主のそう言った発想はどこから来とるんじゃ・・・誰も考えつかんぞそんな下種な考えは」
「清宏様はブレませんな・・・流石と言っておきましょう」
「正直引いてしまいます・・・」
説明を聞き、皆は呆れた目で清宏を見ている。
しかし、清宏は挫けずに拳を握って高らかに掲げた。
「甘いぞお前達!良いか、想像するんだ・・・身動きが取れず、身体中をスライムに這われて恥辱に歪む女達の表情!
喰われると死を覚悟していながら、終わったらお肌がしっとりツルツルになっている事に気付いた時の驚きと喜びの表情を!!
これは、女性にも男の股間にも優しいローションプレイだ!!」
「それは・・・正直アリですね!」
ウィルが立ち上がり握手を求めると、清宏はそれに応じて硬く握手を交わした。
「ふ・・・お前なら、きっと解ってくれると思っていたぞ!」
笑い合う2人に、他の者達の冷たい視線が刺さっているが、2人は気付いていない。
「はぁ・・・お主はやると言ったらやるじゃろうし止めはせんわい。
じゃが、ダメそうな時は諦めよ・・・良いな?」
「あぁ、もしダメだった時には残飯処理をさせるさ」
清宏はリリスに約束し、昼食を済ませて席を立つと、水晶盤の前に移動した。
他の皆も昼食を終えるとそれぞれの持ち場に戻って行く。
「はぁ・・・走り回って腹減った」
皆が仕事に戻ると、入れ替わりでグレンが広間に戻って来た。
水晶盤を見ていた清宏はグレンに手を上げる。
「おう、お疲れさん!お前達が囮をしてくれたおかげで侵入者の誘導が捗ってるよ」
「おうダンナ!あんたのあの小細工面白いな!?突然現れた棒で股間や脛を強打した時の侵入者達の顔は最高だったぜ!!」
グレンはテーブルに用意された食事を立ったまま摘み、清宏に笑いかける。
「あぁ言った小細工が一番頭にくるんだよな・・・正直、俺だったらブチ切れてるよ」
「ははは、俺もだ!!」
グレンは水晶盤を覗き、笑いながらパンを齧っている。
水晶盤には、新たにやって来た侵入者達が清宏の仕掛けで股間を強打して悶え、そのままレイスの仕掛けた落とし穴にはまる姿が映し出されている。
「さて、こいつはどうするかな・・・」
「改めて見ると、本当にダンナの罠は卑怯だよな・・・雇われてなかったら、今頃俺がああなってたと思うと股間が縮み上がるわ」
「ははは・・・まぁ、股間の痛みは想像を絶するからな」
清宏は苦笑しながらも、容赦なく侵入者達の股間を執拗に狙っている。
グレンはそれを見て呆れているが、何も言わずに昼食を摘んでいる。
「で、どうなんだ?稼げそうなのか?」
「あぁ、全員は排除せずに必ず1人は宝を持ち帰らせているからな・・・噂が広がればさらに増えるだろう。
まぁ、それに加えて小馬鹿にしたような罠で挑発してるから、また来るだろう・・・お前達みたいにな」
「それを言わないでくれよ・・・」
肩を竦めるグレンを見て清宏は小さく笑った。
「さて、俺はそろそろローエンと代わるよ・・・ダンナもやり過ぎんなよ?」
「わーかってるよ!心配せんでも加減してるよ!!」
清宏はグレンにジェスチャーで早く行く様に促すと、再び侵入者の監視に戻った。
「また色々と罠を造らないとな・・・簡単な物も良いけど、ちゃんとしたのも用意しておかないとマンネリ化するしな」
清宏は水晶盤の前にアイテムボックスから机と紙の束を取り出し、新しい罠の設計を始める。
すると、グレンと入れ替わりでローエンとリリが広間に戻って来た。
ローエンは元気そうだが、リリはウンザリした表情を浮かべている。
「何か食欲湧かないわ・・・」
「そう言わずに食っとけよ。
あんたは他のサキュバスと違って食わなきゃダメなんだろ?」
「あのねローエン、私は見たくもない他人の情事をずっと監視しなきゃならないのよ?
そんな事が続けば、食欲が湧かなくなるのも当然でしょ?」
リリの言葉に、ローエンは苦笑している。
「おう、お疲れだなリリ?ローエンもご苦労だったな」
「そりゃあ疲れもするわよ・・・」
「俺はまだまだイケるぜ?」
リリとローエンは、椅子に座って昼食を摂りながら清宏に答える。
「リリ、身体の調子はどうだ・・・胸に違和感とかは無いか?」
「何よ、心配してくれるの?」
質問に笑って答えたリリに対して、清宏は真面目な表情で向き直った。
「茶化すんじゃない・・・これは真面目に聞いてるんだ。
お前は昨日湖で溺れただろ?その時、お前は水を吸入していた・・・それは人間なら非常に危ない状態だ。
溺れて水を吸入した時、その時は助かったとしても、二次溺水で死に至る事がある・・・それは肺の中に水が入り、内膜を刺激し、合併症を引き起こすのが原因だ。
溺れてすぐは元気でも、合併症の影響で体液が肺に貯まれば、肺水腫を起こして陸の上で溺死する事があるんだよ・・・。
すぐに処置はしたし、ポーションも飲ませたから心配はないと思うが、身体に異変を感じたらすぐに教えてくれ」
「わかったわ・・・ありがと・・・」
リリは顔を赤らめて俯いた。
ローエンはそれを見てニヤケている。
「あんたもつくづく罪作りな男だよな・・・色んな意味で」
「なんだよ・・・家族の心配をするのは当然だろ?俺は、例えお前だろうと溺れたら助けるし心配するぞ。
まぁ、人工呼吸は遠慮したいけどな・・・救命活動とは言え、男と口を重ねるのは勘弁願いたい」
「それは俺も遠慮するわ・・・想像しただけで食欲が失せるな。
やって貰うならやっぱり女が良い」
「なら、お前の時にはビッチーズを呼んでやろう」
「勘弁してくれ!意識が無い状態で、余計なもんを搾り取られたらどうすんだ!?」
本気で焦っているローエンを見て、清宏は笑っている。
「肺の中の水まで抜けて丁度良いんじゃないか?」
「肺の中だけならともかく、全身が干からびるだろ・・・」
「じゃあリリスはどうだ?あいつはちんちくりんだが、見た目だけは整ってるぞ?」
「清宏・・・リリス様にそんな事させたら、ローエンは殺されるかもしれないわよ?」
清宏とローエンの会話を笑いながら聞いていたリリが忠告する。
清宏とローエンは首を傾げている。
「リリス様にそんな事させたら、絶対にシスが嫉妬するって事よ」
「あぁ・・・そりゃダメだわ。
たぶん、その後に自分もわざと溺れてリリスに人工呼吸をさせようとするだろうな」
3人はその様子を想像して笑った。
「さてと、私はそろそろ戻るわね・・・身体の異変に気付いたら必ず言うからそんな顔しないでよ」
リリは何か言いたげな清宏に苦笑し、ウインクをして広間を出て行った。
「リリはあれだな・・・ビッチーズとは比べ物にならない位普通の良い女だな。
あんたはアンネとリリならどっちが好みなんだよ?」
ローエンがニヤケて清宏を見ると、清宏は照れ隠しにローエンの尻を蹴り上げた。
「お前も食い終わったならさっさと行け馬鹿野郎!!」
「おー怖い怖い!サキュバスにあんな顔させる様な男は、世界広しと言えどもあんたぐらいのもんだろうぜ。
んじゃまぁ、俺も行ってくるわ・・・昼からもサポート頼んだぜ!」
ローエンはそう言うと、逃げる様に広間を後にした。
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