第4話 理不尽なスキル
「さてと、お前を守るのは良いとして、俺はどうするかね?
いくら魔王であるお前にダメージを与えられる程力が強くても、撃退するには生身じゃ厳しいと思うんだよな」
清宏は唸りながら頭を掻いている。
「ふむ、ならまずはお主のスキルから確認しよう。
自身の持つスキルを知っておれば、今後の方針も立てやすかろう?」
「え、スキルとかあんの!?」
清宏は目を輝かせると、リリスの両肩を掴んで揺さぶる。
リリスは首が吹き飛びそうな勢いだ。
「待て!待たぬか!!首が捥げる!!」
「お、おう!すまんな、スキルと聞いて心が踊った・・・」
我に返った清宏は、慌ててリリスの肩を離し距離を置いた。
「持っておるのは確実じゃろうな。
スキルは、魔力と同じくこの世界の者であれば誰にでもあるし、出現し得るからの。
お主は異世界から来たとは言え、妾と契約したし、何より異常な程に力が強い・・・以上を踏まえれば、発現しておってもおかしくはない。
本来なら、普通の人間では妾にダメージは与えられん・・・そもそも、スペックが違いすぎるからの。
人間は、妾を含む闇の眷属と戦うにはあまりに脆弱じゃ・・・故に徒党を組み、装備を整え、策を用いて我等に挑む。
魔素を持つのと持たないのでは、それ程までに違うのじゃ。
じゃが、そんな人間が我等に対抗する手段こそスキルなんじゃよ・・・ここまでで何か質問はあるかの?」
リリスは一度説明を区切り、清宏に問いかけたが、清宏は首を傾げている。
「スキルは、この世界の奴なら皆んな持ってるんだよな?なら、お前達も持ってるって事だろ?
それだと差が縮まらないじゃないか?」
清宏の質問を聞き、リリスは笑顔で頷く。
「その通り、確かにそれだけでは縮まらん・・・じゃが、そこで所持しておるスキルの違いや、新たなスキルの習得が役に立つんじゃ!
我等闇の眷属は、闇に耐性はあるが光には弱いのが一般的じゃ。
ならば、光属性に特化したスキルや魔法、闇属性に対する耐性を内包したスキルを身につければ良いのじゃ!」
「ふむふむ、その辺は俺の世界にあったゲームとかと変わらないんだな。
なら、闇耐性スキルを持ってない場合の習得方法は、耐性のある防具やアイテムで補ったり、一定回数闇属性の魔法や技を喰らえば習得出来るのか?」
「おぉ、その通りじゃ!話が早くて助かるわい!!」
リリスは清宏の答えを聞き、満足そうに頷いた。
「ん?あのさ、今何気なく聞いたけど、属性の付与されたアイテムとかってどうやって手に入れるんだ?
魔族や魔物を討伐すれば手に入るのか?」
「あぁ、その事も教えておかんとならんかったな・・・すっかり忘れておったわ。
防具や武器、装飾品への属性付与じゃが、これにも魔石が関係しておる。
魔石その物は、魔素や魔力の結晶と言う話はしたが、魔石その物には何の属性も無いのじゃ。
じゃから、魔石に各属性を付与し、作成時に他の素材と共に使用すれば、属性付与のされた武具が造れるんじゃよ。
妾や他の魔王にとっては魔召石作成のため、その他の魔族や魔物にとっては食料の代わりとなり、人間にとっては外敵に対抗する為の武具の素材と言う訳じゃな!」
説明を聞いていた清宏は、リリスをジト目で睨んでいる。
それに気付いたリリスは、冷や汗を流した。
「な、なんじゃ?何か機嫌を損ねるような事を言ったかの・・・?」
「結構大事な内容じゃねーか、忘れんなよ!次は教育的指導だからな!!」
「はい、すみませんでした!!」
リリスは慌てて正座をし、清宏に平謝りをした。
清宏は頷き、腕を組んで胡座をかく。
「うぅ・・・いくら弱小とは言え、妾は魔王じゃと言うのに」
リリスは俯き涙を流している。
「おい、泣いてる暇があったらスキルの話をしてくれ」
「解ったのじゃ・・・では、お主のスキルを見てみようかの?
お主のスキルがどう言う物なのかの説明もしてやろう・・・どれどれ?」
リリスは清宏の目を見据え、黙り込む。
「なんだ?今俺のスキルを見てるのか?」
「・・・」
清宏は黙り込んだリリスが気になり問い掛けたが、反応が無い。
「ふむ、お主のスキルが解ったぞ・・・」
5分程沈黙が続き、リリスが清宏のスキルの解読を終えた。
「どんなんだった?」
清宏が恐る恐る聞いたが、リリスは渋い顔をしている。
「悪くはない・・・じゃが、直接の戦闘向きの物は一つだけじゃ。
まずその戦闘向きのスキルじゃが、スキル名が理不尽となっておった・・・名は体を表すとはよく言ったものじゃな」
「あ゛?」
清宏はこめかみに青筋を立ててリリスを睨む。
凄まじい殺気だ・・・。
「それじゃ!そのお主の性格がそのままスキルになっておるんじゃ!!
このスキルはお主の感情に左右され、お主喜怒哀楽の度合いで力が強化されるんじゃ!!
しかも、そのスキルが発動した際の攻撃は、耐性無効の効果まである!スキルそのものが理不尽なんじゃ!!
このスキルが発現しとるのは妾の所為ではない、じゃから怒りを鎮めてくれ!?」
リリスはガクガクと震えている。
可哀想ではあるが、言わなくていい事まで言ってしまうリリスも救いようが無い。
「まぁ良い・・・他には?」
「おほん!そうじゃな、いくつか役に立つスキルもあるぞ?」
リリスは咳払いをし、気持ちを切り替えて笑顔を浮かべた。
「まず、トラップメーカーじゃな!
このスキルは、罠系等のスキルでは上位に位置しておる!
通常の罠スキルは、罠の作成や設置などの手間がかかるものじゃが、このスキルは任意の罠をその場で意識した罠を、即座に作り出して設置出来るものじゃ!
作成出来る罠の種類も豊富じゃし、侵入者排除にはかなり役に立つスキルじゃよ!!」
リリスは無い胸を張って嬉しそうに語っているが、清宏の反応は薄い。
「罠スキルかぁ・・・発現した理由はわかるけど、実際に使ってみないと良し悪しは判断出来ないな」
「もっと喜んでくれたら嬉しかったのじゃが・・・まぁ、お主はトラップなんかは得意そうじゃし、性格的にも向いとると思うぞ!」
「ほほう、その心は?」
清宏は笑顔でリリスに問いかけるが、明らかに目が怒っている。
だが、リリスはそれに全く気付かずに笑っている。
「お主は陰湿なトラップを駆使し、嬉々として侵入者を排除しそうじゃからな!」
そう言った途端、リリスの身体が宙に浮いた。
清宏が全力で彼女を投げたのだ。
「ぎゃーーーーー!?なんでじゃーーーー!!?」
放り投げられたリリスは、叫び声をあげながら扉を突き破り、部屋の外へと消えて行った。
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