Food recycling plant
光合成。それは植物が光エネルギーを利用して空気中の二酸化炭素を炭水化物へ変換する化学反応だ。では現在外に植物は存在するだろうか。もちろん否である。
現在、地上に生物はほとんど存在していない。皮肉な事に生息しているのは極地環境やシベリア、砂漠等の極わずかな範囲に留まり、それ以外全て、人間の居住していた場所は深刻な汚染により生物は存在していない。
さて話を戻そう。私達人間は従属栄養生物と呼ばれ、自分自身で栄養、つまり有機物の合成を行う事が出来ない生物だ。そして地上の植物はほぼ絶滅している。そう、この地下シェルターにおいて食糧を得る手段は皆無なのだ。食糧が無ければ当然私達は死ぬ。そうなれば自ずと僅かな食糧の奪い合いが起き、どのみち死ぬ。
そのため食糧は配給制が基本なのだ。もちろんこの制度で争いが無くなる訳では無いが、強欲な人間が居て食糧を強奪した所で何も無い世界だ。その食糧を得て、生きる意味を得る事が出来るかというとそうではない。故に強奪事件が起こることはあまり多くない。
ここまでは制度の話だったが、いよいよ肝心の食糧自体についてだ。といっても食糧を得る方法など限られている。育てるか、探すか、造るか、だ。
一番容易なのは育てる事だ。安定した収量を得る事が出来るからだ。屋外は光が雲で遮られており、そもそも汚染の影響があるため栽培出来ないが、人工の光を用いれば生産は可能である。
しかしこの方法で作るには種子、広大な敷地、電気、時間といった手間が非常にかかる。つまり一定の規模のシェルターで無ければ実用的な量の生産は難しい。
次は探す、という行為だが、これは場所に左右される。極地周辺であれば汚染の進行が遅く防護服が無くても屋外に出る事が可能であるとされている。ただし極地の環境で普通の植物は生育しない。また厳しい自然環境という事は屋外に出る事が危険でもあり、推奨はされない。
そして環境に恵まれない地域の人々に取って外出は自殺行為であるため行われない。仮に食料を見つけていてもそれは汚染されているからだ。
そこで現在主流なのが食料再構成装置を利用して造ることだ。これは有機物をアミノ酸や糖まで分解して再構成するという優れた装置であり、ほとんどのシェルターに備え付けられている(正確に言えばこの装置を持たないシェルターは既に存在していないということになる)。
この装置があればタンパク質タブレットとグルコースタブレットの合成が可能であり、最低限度の食料が確保出来る。
このように快適とは程遠いが、それでも人々は地下で生きているのだ。
それと大事なことが一つ。この装置に入れる有機物はなんでもいい。シェルター内部に生えたコケ、カビ。あるいはネズミやゴキブリ、排泄物やゴミなどなんでもいい。
再利用したければすべてダストシュートに放り込むだけなのだから。
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